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千葉篤胤の転生記_07~治承・寿永の乱

胤盛と胤通は伊豆へ着いて日胤との合流する予定の場へと向かっていた。胤通の中にはもう一人篤胤のが意識下にいる。

篤胤は胤通に意識下で聞いた。
(日胤って幼少の頃からお坊さんしてるんでしょ?なんで)
(日胤には不思議な力があるんだ。それを知った八幡宮がまだ日胤が育てたいと小さいときに引き取っていったんだ)
(不思議な力ってどんなのよ)
(なんかうまく言えないんだけどやたらカンがいいというか、兎に角普通じゃないんだ)

胤盛一行は伊豆の頼朝がいる居へ辿りついた。すでに日胤が来て祈祷が始まっているらしい。すでに胤盛達が来ることは伝わっており、祈祷はじき終わるので側面の部屋にて待つよう指示があった。

今回の胤盛一行が頼朝との面会に関しては事前に日胤の縁者が会いたいという事で話は通してあるようだ。

しばらくすると一人すすっと入ってきた。

「胤盛、胤通、お久しぶりです」

歳は10代半ばくらいだろうか。この子が日胤だという。いままで遭った下総の面々は20歳前後が多かったので、末っ子だからか一際若い。不思議な力をもっているとは聞いていたが見た目ではそんな感じは特にしない。

胤盛と胤通は日胤に連れられ、奥へと進んだ。これから源頼朝に会えるそうだ。奥の部屋の真ん中に一人の男が座っている。源頼朝だった。頼朝は下総から訪ねて来たことへ胤盛一行へ労いの言葉をかけた。話は下総や伊豆のたわいもない話が続き一向に本題へと至らない。

篤胤としてはここは肝心の事を聞かなければと胤通にはやく本人の決意の有無を聞くように迫るも胤通は濁してばかりでなかなか頼朝に聞こうとしない。

埒があかないと篤胤は考え「切り替われよ」と強く願い、胤通の眼が片目だけ朱い状態から見る見るうちに両目とも朱い眼となっていった。完全篤胤状態へと変わる。そしてここは直球勝負と気合を入れて単刀直入に頼朝へ問いを投げかけた。

「頼朝様はこの平氏が横暴を振るう世に、かっての源氏の棟梁の血筋として期が満たせば東国の武士を従え、立ち向かおうとされるおつもりはございましょうや」

頼朝は唐突な問いに少し躊躇いつつも返した。

「平時の乱にて源氏が敗れてはや20年。私の元に時折、そのような願いをぶつけてくるものもいた。私は嘗て源氏の棟梁であった義朝の嫡男であれど、本当の嫡男は兄である義平だ。兄は凄まじいほどの気力と武名を轟かせていたが、父と共に亡くなった」

「今や伊豆へ幽閉され生き永らえている私にずっと慕ってくれている妻の政子や義父の北条時政に世話になっている身。今の私にはそのような事に答えれるだけの器量も想いも足りない」

「平氏の統べる世に私が拳を振り上げれる余地はない。もし仮に源氏の元に今の世で虐げられている者たちが集うことが必要であれば、他にも血筋のものはいる故、別の神輿を担がれよ」

篤胤としては鉄槌で殴られた様な感じがした。自分が知っている頼朝の挙兵の話とはいったい何だったのか。自分の父親がよく篤胤に話していた「常胤と息子6人は源頼朝と共に挙兵して」という話からは全く想像もしなかった返答である。

篤胤は聞き返そうとしたが胤盛が止めに入った。先ずは頼朝に無礼を詫びつつ篤胤の耳そばで「平氏側の誰か聞いているかもしれぬ。ああとしか頼朝様も答えれぬことも察しなさい」と怒気交じりで囁いた。

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