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千葉篤胤の転生記_08~治承・寿永の乱

ここは都の某所。ある部屋内で2人の男女が話をしていた。女性は八条院。後白河法皇の妹である。妹とはいえ八条院領といわれる所領を全国各地に200か所ほど持ち、朝廷内での勢力も尋常ではない。男性は源頼政。20年前の争乱で源氏が壊滅した中、辛うじて朝廷に残ってた数少ない源氏の一人である。

「頼政。先ほどの話ですと頼朝には闘う意思はまるでないという事でしょうか」

「八条院様、そのとおりでございます。先日、石清水八幡宮の者が頼朝を訪ねて参りましたが、本人の意思としてはそのまま伊豆で穏便に生涯を遂げていくつもりのようです」

八条院はやれやれという顔をしながら話を続けた。

「平清盛が朝廷へ介入してはや20年以上経ました。いまや帝自体が清盛の血縁という始末。さらに帝と清盛の娘の間の子が皇太子という有様。まだ幼子とはいえこのまま禅譲でもしたら完全に朝廷は平家の想いのままです。より清盛の血が濃くなってしまいますよ」

「せめて私の継子とはなっている平氏とは縁のない以仁王が一度即位して、いまの皇太子がそのままりっぱに成人になった折に禅譲するなりしないと。このまま朝廷はおろか全国各地で平氏への怨嗟が広まる一方となるでしょう」

頼政は仰せの通りと相槌をうつも八条院は続ける

「このまま平氏の力が強くなり続ける事は誰にとってもよろしくありません。兄である後白河もなにか仕掛けようとはしている様子ではありますが、清盛も黙ってはいないでしょう」

「八条院様。そのことですが平清盛は近々に福原より兵を率いて上京するとのこと。かなりの力の入れようのようです。これは大きく荒れますぞ」

八条院はそこまで清盛は踏み込むのかと息を落とした。

これより幾日か後、平清盛が三千もの兵を率いて上京してきた。清盛は太政大臣など主だった役職を解官して入れ替え、全国で66国あるうちの30程を平氏一門が治めることに配置換えもした。更に後白河法皇が政治に関わることを止めるために軟禁同然の状態へ追い込み、法皇の近臣・皇族の所領も一部没収とした。まさに平家の世が謳歌される時代へとより進んでいくこととなる。

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