[4]F1エンジニアになって何がしたいのですか? - 「F1が好きだから」のその先を知る

F1エンジニアに憧れる人へ。実際に目指してきた経験を元に、F1に憧れる人へ連載を始めました。筆者は:日本の高校→イギリスの大学→英F1チームインターン(2017-18)等してました。
・収録マガジン:「F1で働く
・前回記事「[3] 夢はあるけど、華やかな業務ばかりじゃないってこと - F1エンジニアについて
・毎週日曜更新予定!

こんにちは、わたぽんです。

ここまでF1エンジニアについて、おおまかな部分を書いてきました。このままさらに細かい部分に進んでいってもよかったのですが、その前にどうしても、読んでくださってる方に考えていただきたいことがあります。

あなたはなぜ、F1で働くことに憧れているのですか?


F1に憧れる日本人は、ちらほらいます。
意外かもしれませんが、毎年最低一人以上のペースで、F1目指してイギリスの大学にやって来る人がいます。社会人で転職等でF1を狙っている方も含めれば、もっといる。

しかし「なんでF1目指してるんですか?」って聞くと、ただ「F1が好きだから」とだけ答える人が多い。そこに落とし穴がある。みんなF1が好きだからF1を目指す。だからF1の世界が、遠い。

F1を夢見てイギリスまで来つつも、みんなやがていなくなる。なんでみんな、途中で追うのをやめてしまうのか?


F1への道を諦める人達に共通すること

F1を夢見て追っていたのに、今は追っていない。そういう人達に話を聞いてみると、共通することがありました。

「最近別のことに興味出てきてさ…」

F1とは違うことに興味を持つ。それ自体は悪いことではありません。生きているとどんどん新しいことに出会い、興味は移り変わっていってもなんら不思議ではない。

でも、どうもそんなポジティブな感じじゃない。むしろ話を聞いていると、「そりゃ興味が移ってもしょうがないやろなあ」と納得してしまう経緯があります。


例えばよくあるのは、「F1目指すのは想像以上に大変だった」というコメント。

F1で働くのは、多くの人にとってはそう簡単なことではありません。F1チームという専門家集団の中でやっていくために、自分も何かの専門家でなければいけない。

その道を志し、しかも海外でやっていく。そこには多数な苦難困難があってもおかしくない。F1にたどり着くには、そんな苦労をものともしない人か、あるいは僕が今言っている「苦労」ということ自体、特に「苦労」とも思っていない人しか、たどり着けないとも言えます。

だからこそ、自分がなんでF1に対してモチベーションがあるのかを考えるべきだと思います。もっともっと、深く考えるのです。「なんでF1を目指したいの?」と。

F1エンジニアのどこに興味を持っているのか?
F1エンジニアになって、何をしたいのか?
F1エンジニアになって、何が満たされるのか? 満たされないのか?


「F1が好き」のその先を知る

「F1が好き」というあなたは、F1の何が好きなのでしょうか?

高性能マシンが時速300kmで競い合う高揚感?
ドライバーの個性?
F1の舞台裏に潜むエンジニアリング?

人それぞれ、答えが違うでしょう。ちなみに以前、僕がF1に惚れる理由も、個人ブログの書いてみました。

でもそれだけじゃまだまだ甘い。てか、F1が好きな理由はなんだっていい。F1の中でも、特にエンジニアに興味がある人が、このnoteの読者の大半。そこで尋ねたい。なんでF1で働きたいの? なんでエンジニアなの? なんで?

例えば、レースエンジニアに憧れる人の割合は多いです。なぜか? 戦略をプレッシャーの中、短時間で考えるのが好きだからですか? ドライバーと直接やり取りできる仕事が好きなのですか? それともただ、テレビにも放映される姿に憧れ、自分もいつかテレビの前でかっこよくやるんだって思っていますか? なにかワクワクすることをやってみたいだけかもしれない。

「テレビに映ってる場面でかっこよく見せてやろう」という思いが強い人にとって、F1の裏にある専門性やプレッシャーは、ただただ辛いだけかもしれません。あるいは「レース中に計算して考える、その行動自体が大好き」という人にとっては、テレビに映る等どうでもいいことかもしれません。

同じ「レースエンジニアに憧れる」でも、大きな違いですよね。他人に言うとアホらしいような理由でも、自分には正直に言っておいた方がいい。


「そんなはずじゃなかった」が最も辛い

新しいことに実際に挑戦し始めてみると、見えていなかったことが見えてきても、不思議ではありません。「思ってた以上に辛い」というのもその結果出てくる感情。

しかし例えば、イギリスへ渡る前に分かりえることはできなかったのか?

僕のようにイギリスの大学へ行くという選択を取る場合、そこには時間と多額の資金がかかります。リスクは少なくないかもしれない。なのに、事前に自分の本意とF1を目指すことへの差を埋め切れていなければ、「あれ、そんなはずじゃなかったのに」となりがち。なんか違うなあ…と思っていると、自然とやる気も失ってしまう。もっと他に良いものがあるんじゃないかって、周りに目が移ってしまう。そんなもんです。

もちろん、分かりえないことだってたくさんあります。僕も事前に鬼の様な形相で調べまくったけど、イギリスに来てから初めて知ったこと、F1の中のことがたくさんありました。それはしょうがない。でも知りえたことを、自分がサボって知らないフリするのは、もったいないなと。

まあ、「何も知らずに飛び込んでしまい、訳も分からず荒波の中必死でもがいていたら、夢にたどり着いちゃった」みたいな生命力高い人も世の中にはいます。知らぬが仏ってやつか。でもほとんどの人にとっては事前に知っておく方が良いので、自分の生命力に0.01%でも疑いがあれば、ちゃんと自分の本心について考えておくことが吉でしょう。


F1を目指す人へのTips

今回は最初3回の情報重視の記事とは違い、「考えること」「自分を知ること」にフォーカスしました。これはいわば、今後の自分の指針となるものです。これからもF1で働くことに憧れる人にとって、知っておいてほしいことを書いていきます。それらを読みながら考えてほしい。

自分のしたいことと当てはまっているかな?と。

あるいは今ハッキリと分からなくても、是非自分の内心について思いを巡らせるきっかけにしてみてくれればなと思います。自分を知ってる人が、一番強い。もし目指し始めてから方向転換しても、それが悪いってことじゃない。F1を目指すことで、より自分を知ることだってあります。それで目指す答えがF1にないなら、しょうがないやん。

そしてもしあなたが「何も知らずに荒波でもがく方が成功確率が上がる」と思うなら、この連載は読まぬが仏です。まあ、そういう人はF1のエンジニアという選択肢を与えた瞬間に、イギリスへ飛んでってしまう人です。つまり、自分が何を求めているのかある意味ハッキリと知ってるんです。すぐ行動できてしまうほどに。もう僕が何言ったって関係ない。頑張れ。


次回は一度、今あるネットや雑誌上の情報を整理しましょう。自慢することではないですが、僕が高校生の時、ネットと当時入手できた日本語の本や雑誌の情報には、かなりの数に目を通しました。飽き足らず慣れない英語でも調べまくりました。もし調べきれていない人でも、これで今ある情報がどこでどうやって手に入るか、なんとなーく分かる。そんな感じのを目指します。

お楽しみに!


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