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歌舞伎初心者アナウンサーのひとりごと。~サムライ魂ここにあり!2021年5月歌舞伎座・第3部『八陣守護城』~

こんにちは!
歌舞伎が大好きなフリーアナウンサーの渡邉唯です☆
今回は、2021年5月に歌舞伎座で行われた五月大歌舞伎から第三部「八陣守護本城(湖水御座船)」について綴ります。

サムライ魂を感じて。

歌舞伎には、謀反を題材にしたものや、反対に忠誠心あふれる古き良き日本のサムライ魂を描いた作品が数多くありますが、今回の八陣守護本城もそのひとつです。
このお話、実在した、豊臣秀吉の家臣・加藤清正の忠誠心をベースに描かれています。
この清正は二条城で敵に毒酒を飲まされ、熊本の本城に帰ったのち豊臣家を案じつつ亡くなったという毒殺説もある人物。
ただ、お話が作られた江戸時代は、歴史上の人物のお名前をそのまま役名として使い上演することは禁じられれていたので、作品の中では”佐藤正清”として登場します。(まったく隠せていないというか・・・こんなにバレバレなアレンジでよかったんですね笑)

今回の「湖水御座船の場」では、佐藤正清がすでに毒酒を飲まされたあと、息子嫁とともに琵琶湖の船旅を楽しむ場面が描かれています
え?!毒酒を飲まされているのに船旅を楽しむ・・・?????
どういうこと??スーパーマンか何かなの??って思いますよね。
そう。この毒を飲まされた様子を微塵も見せずに、凛と構える姿にまさにサムライ魂を感じる作品なんですっっっ!!!!!


舞台を彩る”歌舞伎発祥”のド迫力演出。

船旅の作品ですから、お話の舞台は船です。
その船が、なんとまぁ豪華なこと!しかもラストは船が回るんだから驚き!
どういうことかと言いますと・・・、
水色の布で表現されている湖面には、朱塗りの御座船が浮かんでいるのですが、この船が舞台を埋め尽くすほどの大きさでその迫力に思わず「おお!」と言ってしまうほど。

船は廻り舞台の上に乗っているのですが、歌舞伎座の公式HPによると廻り舞台の直径は60尺、つまり、18m18cmとのことなので、恐らく船の全長もそれぐらいなのかなと思います。
18mってどれ程大きいのか調べたところ、なんとマンション6階分
ちなみに、奈良県の東大寺の大仏もおよそ18mだそうです。
観劇中も船から迫力を感じていましたが、実際に街中のものと比べてみるとその大きさに驚いています。

さらに、物語の終盤は、この船がぐるっと回転するから驚きです。
(船が回転して、客席に船首が向くようになります)
大道具さんたちの見せ場といいますか、もう、舞台を支えるスタッフさんたちの汗と涙も感じる瞬間っっ!!!!!!!

ちなみに、今でこそ多くの舞台で使われているこの廻り舞台。なんと世界に先駆けて歌舞伎が開発した舞台装置だそうです!!
まさに、歌舞伎ならではの演出で、舞台に華をそえているんですね。






中村歌六さんの演技力に魅入るとき。

ここまで作品の見どころを書いてきましたが、最終的に作品をキメるのは、役者さんの演技に懸かっているといっても過言ではありません。
今回、主人公の佐藤正清を務められたのは、五代目中村歌六さん
しかし本来は、二代目中村吉右衛門さんがお務めになる予定でしたが、吉右衛門さんの体調不良により、急きょ、歌六さんが代役としてご出演されることになりました。

歌六さんの正清が、何とも言えぬ渋さと、貫禄を兼ね備えていて、作品の世界観に厚みをもたらしていたのが今回の一番の感動ポイントでした。

歌六さんといいますと、普段は、敵役や老け役を演じられることが多いイメージですが、今回は忠誠心あふれる侍のお役。しかも、毒がからだにまわりながらも泰然自若としているスーパー侍です。笑
おそらく初役だと思うのですが、”代役”ということばを使うのが失礼だと思うほど、堂々たる演技にひとり感動していました・・・・・。笑

何といってもラストシーン
毒が体中にまわり、さすがの正清もフラフラに・・・。息子嫁の雛衣に心配されながらヨロヨロと船首まで歩き(ここで先ほどの舞台ぐるっと回転演出があります!)何と吐血!!(汗)その血を懐紙で拭い、パラパラと海に懐紙が落ちていく様子で閉幕です。

この一連のシーンの壮絶な表情や動きが、それまで威厳たっぷりだった正清との対比を感じ、歌六さんの演技力に引き込まれます
パラパラと海に落ちていく懐紙のように、ポタポタと涙が落ちる幕切れ。
また、白い懐紙についた赤く丸い血痕が、私には日の丸のようにも見えて、日本のサムライ精神を感じるラストでした・・・・・( ;∀;)
(まだ国旗がない江戸時代の作品ですし、そのような意図はないのでしょうが、あくまでも私にはそうも見えた。というだけです(;^ω^) )

まさに、サムライ魂ここにあり!
お話では、このあと100日も生きたというのだから正清の強さには驚かされます。



最後になりますが、中村吉右衛門さんのご体調が一刻もはやく元通りになり、また舞台で元気なお姿を拝見できますことを心よりお祈り申し上げます。

長くなりましたが、最後までご覧くださりありがとうございました☆
渡邉唯でした!

Instagram:
https://www.instagram.com/watanabeyui.0108/

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