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ついさっきまで穴水町での滞在をどう締めくくろうかと思っていたのに、今届いた一枚のハガキに始まりを感じている(仮暮らし:能登半島穴水町周辺完結)

誰一人緊張させない能登ワインワイナリーと、朝のひと悶着

最終日の午前中は、
葡萄畑が広がる丘の上にある能登ワイン製造所を見学。

能登ワイン
気持ちがいい葡萄畑

さぁさ、と数種類のワインを試飲させていただくものの、私から出てくる感想は「美味しいです」「甘いですね」「さっきより甘くないですね」「おお、これはまた…(ここからは別に何も続かない)」というものばかり。

実は「美味しそうな匂い」ということ以外分からず

「これは…白い花のかおりがしますな」なんて言ってみたかった。

とにかく、ワインは全く詳しくないけれど、甘いのもそうでないのもただただ美味しいということは分かる。

そして「詳しくないんです」という私に「詳しくなくていいです。そんな風にカパカパ美味しそうに飲んでくれることが嬉しいです」と言って、
私を緊張させないように、私たち夫婦と子どもたちに合わせてワインやワインの製造過程について説明をしてくれるお店の人がいるこのワイナリーに、ファンが多い理由も分かる。

ギスギスした心が、能登ワインのおかげであっという間に爽やかになった。

というのも、朝起きた時に、昨晩冷蔵庫にしまい忘れられたのであろう卵がキッチンにちょこんと置かれていたことがきっかけで、朝から夫婦でチクチクやりあっていたのだ。

「スーパーで売られている卵は常温だから別になんてことはない」と冷蔵庫にしまわなかった自分の行動の正当性を主張する夫と、

「じゃあなぜ他の卵はしまわれていたのか」「そもそもスーパー自体けっこう冷えているのだから常温とは言わないのではないか」「ましてや夏場の屋内は別問題だろう」とたたみかける私。

「常温 卵 スーパー」で検索し、勝ち誇った顔を浮かべる夫に対し
「常温 卵 夏場」で検索し、自分の意に沿った検索結果が見つけられず唇を強く噛む私。

そんなくやしいひと悶着も、能登ワインがきれいさっぱり洗い流してくれた。(心底どうでもいいひと悶着だというのは理解している。)

ね、洗い流された顔をしているでしょう

牡蠣小屋に行ったり散歩したり仕事したり映えてみたり

その後、牡蠣小屋へ。最終日にして鼻炎も治り、体調が万全に整ったところで本格的に牡蠣と向き合うことにする。

リーズナブルだった。10個で1300円とか。でも13個くらいついてきた

子どもたちからも人気だった「かき菜揚げ」は牡蠣に菜の花をまぶして揚げたもの。初めて食べたけど、美味しかった。

かき菜揚げ。ポン酢マヨネーズか菜の花の塩で。いや、抹茶塩だったかも。それかただの緑の塩かも。

食べたら穴水町を散歩して、

もうこの道にも慣れてきた。そして子ども時代を思い出すなつかしい花。
こんなことがとても嬉しそう。いや私が嬉しいのか。

帰宅後は、子どもたちがお昼寝をしている間に仕事を進める。
子どもたちが起きたら、子どもたちのリクエストで数日前に訪れた海とスカイデッキへ。

「カモメをそっと捕まえに行く」と走り出す2人。そっとという感じではない。
夕方は海がキラキラしていた

スカイデッキは前回はカンカンに晴れていた午前中に訪れて、今回は少し曇った夕暮れに。

朝と夕方の違いだけではなく、天気がコロコロと変わりやすい能登半島は同じ場所でも全然違う景色に感じることが多い

穴水町の滞在はまだ締めくくれそうにないし、だから人に会うのはやめられないのだと思った一枚のハガキ

いい一週間だった。

穴水町で出会った人からは、穴水町の良さがポンポンとは出てこない。
穴水町で暮らす際に気を付けたいポイントなどはたくさん教えていただいた。

「良いと思うことはひとそれぞれ。良いことだけは言えない」と言う。
そんな姿を誠実だと感じた。

出会った人が素敵な人だった、訪れたスポットが素敵だった、ご飯が美味しかった、そんなことはもはや言わずもがななのだが、穴水町の良さはもっと違うところにある気がする。そしてそれはまだ言葉にできない。

私が穴水町の本当の良さを感じ始めるのは、きっとここに1年くらい住んでからなんだろう。
うまく言葉にできないけれど、きっとこの町は10年後や30年後も大きく変わることなく、ここに穏やかにあるんだろうなと今はただ思う。

と、千葉の自宅でここまで書いた時、ポストに何かが投函された音が聞こえた。
普段は夜までそのままにしているのだけど、今日はずっと座りっぱなしだったことだし、外に出てみることにした。

投函されたのは、穴水町で見学させていただいた保育園の園長からの直筆のあたたかいハガキだった。

園長にお礼の電話をしよう。次はいつ行きます、と無計画に言ってしまいそうな自分が想像できて少し怖い。

同じ場所に再び訪れる時はいつも、
その場所が気に入ったからと言う理由以上に、そこに住む人にもう一度会いたくて行っている。

さっきのさっきまで穴水町での滞在をどう締めくくろうかと思っていたのに、今、この一枚のハガキに始まりを感じている。

だから人と会うのはやめられないのかもしれない。

一枚のハガキにそんな重みを背負わせなくても、と思うのだけど、こんなやりとりがとても嬉しいのだ。

おわり

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