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営業とCSの連携において意識すべきこと

こんにちは。Magic MomentでAccount Executiveをしています、渡邊(@Yusuke_W8)と申します。

TheMODEL型を代表とする分業型のセールスプロセスにおいては、各セクションの接続部分が非常に重要になってきます。本日はその中でも、営業とCSにおいて意識すべきポイントを考えてみました。

なお、さまざまな会社で状況は違う中でストラクチャーを考えていると思います。今回は下記2つを前提と置きながら考えていきたいと思っています。

1、CSより営業のほうがビジネス経験豊富なベテランが多い
2、エキスパンジョンや更新の契約自体はフィールドセールスが担当する

今回の考察の前提

CSのほうがベテランにすべきだということはよく言われますが、多くのスタートアップにおいて、売上を立てることを先決とした場合、フィールドセールスにベテランのリソースを割くことが多いことが実態でしょう。また、企業が大きくなるつれ、CS→FSやIS→CS→FSというキャリアパスを設計されている会社も多く存在しています。今回はそういったよくある前提にたって、このテーマを考えていきたいと思います。

CS→営業への連携で実現すべきは”解決すべき顧客課題へのリソース集中”

CSの皆さんはいつもたくさんの顧客を抱え、それぞれのサクセスに向き合い非常に忙しくされています。これは次のような構造によって発生していると考えています。

CSの工数は要求(CSとして、およびプロダクト)との乖離によって左右される

本来のプロダクトとCSのケイパビリティを超えた受注は、CSの工数を圧迫します

”CSはプロダクトの一部だ”と言われることもありますが、特に初期のプロダクトでは、さまざまな機能的な不足から、”顧客の要求する水準”に達しないことがよくあります。こうした顧客からの要望を人の手で埋めにいくというのが、初期のCSの役割と言えるでしょう。

加えて、CSとしての成熟度も未発達です。ですから、この図で言う青いゾーンが無理せず対応できる、もしくは対応すべき領域になるのですが、どうしてもピンクの領域まで役割を拡張しながら顧客対応することを強いられます。この拡張が追いつかないため、初期のプロダクトはチャーンが多かったり、追いつくためにCSの業務負荷が非常に高くなったりするわけです。

ピンクの領域は、カスタマーのサクセスには必要だと課題設定した領域ではあるものの、自社のリソースでは効果的に解決できるわけではない領域でもあります。したがって、生産性が下がってしまい、効果的に顧客課題へ向き合える時間が減ってしまうということになります。

なお、CSの成熟度については、Gainsight社が提唱する”カスタマーサクセスの成熟度曲線”が非常に参考になります。下記の4段階があると言われております。

受け身(Reactive)
分析&行動(Insights&Actions)
成果(Outcomes)
全社一丸(Transform)

SUCCESS LAB / カスタマーサクセスのレベルを科学的に上げる方法:「エレメンツ」

この4段階をさらに要素分解したものが、下記の”エレメンツ”になります。”受け身”フェーズでは何もしていない状態なので、それ以降のフェーズにおいての施策が一覧化されており、非常に参考になります。

CS エレメンツ

3や4のヘルススコアが表現されていなければ、6のリニューアルマネジメントや11のサクセスプランニングはかなり難易度が高くなります。目検で利用状況を確認しに行ったり、顧客へ直接ヒアリングを繰り返すことで情報を蓄積するしかなくなり、工数は膨れ、結果的にユーザーエクスペリエンスを既存することにもなりかねません。

解像度を高め、求められる要求値を前捌きするための”基準”を提供する

では、プロダクトやマチュリティが未成熟なフェーズにおいて、CSはどうしたら良いのでしょうか。

CSから営業への情報共有で、”基準”を提供し、理想的な顧客とタスクに集中する

先に述べた”顧客の要求する水準”は、営業の売り方と期待値調整によって大きく変わる部分でもあります。正しい基準をCSから営業に提供することで、①のように、本来の領分から拡張して取りに行く業務を減らすことができ、結果として価値を届けるべき顧客へ、最大の価値提供をすることにリソース集中ができるようになります。

期待いただき発注いただくことと、顧客がサクセスすることは別物です。
CS活動をしていく中で、商談時には見えていなかったさまざまな”ワークするための前提条件”が見えてきます。

例えば、予約系のメディアであれば、シフトの組み方や、店舗スタッフの1日のオペレーションがどうなっていて、管理画面を常に見れる環境なのか、予約が入ったらどういう対応が必要なのか、ということを理解しておく必要があります。固定で入れる強いスタッフがいる場合は、その方が予約オペレーションを回していただければサクセスできるでしょう。一方、固定で入れるスタッフがいない場合は、それぞれのスタッフに対してのオンボーディングが必要になり、サクセスの難易度が上がります。また、電話の近くにタブレット端末を置く場所や充電できる場所がない場合は管理漏れが発生しやすくなりますので、事前に置き場の確保を合意しておいてオンボーディングに臨む必要があったりします。

こうした、事業の成熟に伴いあがっていく解像度を、下記の2つの観点でどんどん営業にフィードバックしていくことが重要です。ノックアウトファクターであればターゲットに反映することで、本当にプロダクトを届けるべき顧客へ集中できるようになります。また、カバーできる要素であれば営業時にきちんと合意をしておく(=営業シナリオへ反映する)ことで、サクセスに必要な本質的なタスクにCSが集中できるような環境になっていきます。

オペレーション解像度
組織解像度

CS活動によって上がっていく解像度

私の主観ですが、CSに携わるみなさんはホスピタリティが高いがゆえに、こうした前捌きによって解決できる難しさも、寄り添い、努力で何とかサクセスへ導いてくださる傾向が強いように思います。ですが、目指すべきは、1日も早く、高いレベルで顧客にサクセスしていただくこと。営業へガンガンこうした情報と要求を行い連携することで、サクセスに本当にクリティカルになるタスクにリソースを集中することができるようになると考えています。

資金効率の観点からも、理想的な顧客にレーザーフォーカスできるかが問われている

先日行われたSaaSのカンファレンスであるSaaStrでは、”Ideal Customer Profile=理想的な顧客”にレーザーフォーカスし、誰に何の価値を届けるかの解像度を上げまくる必要があるということが語られていました。マーケットを広げる欲求に負けずに理想的な顧客とのサクセスストーリーを描き切り、その顧客を熱狂させきれるかが、結果的に資金効率を高めていきます。調達環境が厳しくなっているなかで、投資家に求められる要素の一つだと言えるでしょう。ここの鍵を握るのが、CS→営業への解像度の高いフィードバックだと思っています。

なお、本イベントについてALL STAR SAAS FUNDさんのyoutubeでかなりわかりやすく解説いただいています。ぜひみなさんチェックしてみてください。


営業→CSへの連携で実現すべきは”ビジネス観点の補完”

では、逆に営業からCSへ渡すべき情報はどういったものを想定すべきでしょうか。

要求とマチュリティの差分を補完する”ビジネス観点”

営業からCSへの情報共有で、”ビジネス観点”を提供し、マチュリティを高める

本noteの冒頭で、CSより営業の方がベテランであるという前提をお伝えしました。この前提に立つと、先ほどのCSエレメンツの中の、5-7,9-11は、ビジネス観点でのシナリオを創っていく力が非常に重要になりますが、ベテラン営業のほうがその能力に長けている、ということになります。ここに営業が介入することで②のようにCS maturityが上がっていき、サクセス能力が上がっていくということになります。

例えば、ビジネスドライバーの共通理解。プロダクトを使う意味と、ビジネスゴールを紐づけることが非常に重要な中で、この観点で正しく顧客のビジネスを理解しているか、が重要です。

ラクスル株式会社 2022年7月期決算説明会資料 P16

わかりやすいで超有名なラクスルさんのIR資料ですが、こうしたドライバーの分解が行われています。それぞれのドライバーに対して施策を打っていくとビジネスが成長する、という非常にわかりやすい説明ですね。組織ごとにもっと細分化した形で、こうしたドライバーは分解できると思っていて、これくらいのシンプルかつわかりやすいドライバー分解を、営業がCSにインプットしていき、CSはそれを顧客と合意したうえで、理解した各オペレーションへ紐付けしていくことで、筋の通った(これやる意味あるんだあっけ・・・とならない)プロダクト活用されるオペレーションが実行されることになります。

他には、組織力学。オペレーションにいかに真摯に向き合っても、プロダクトの活用に至らないケースはあります。例えばトップダウンの企業であれば、事業部長や部長の号令でいきなり活用されることもあるでしょう。また、成果に貪欲な企業であれば、その会社においてロールモデルとされるようなトッププレイヤーが率先垂範することで、その動きを皆が真似て活用が進んでいくこともあります。こうした力学を巧みに使っていけるのがベテラン営業のなせる技ですので、誰をどう押せば良いのかという観点を、営業からCSにインプットしていくと、より効率的に顧客をサクセスへ導いていくことができるようになります。

そして、お気づきかもしれませんが、上記2つの要素は、CS→営業への連携のところでお伝えした下記の2つの要素と対になっています。

オペレーション解像度
組織解像度

CS活動によって上がっていく解像度

営業がCSにインプットするビジネス観点によりCSの顧客理解がしやすくなり、情報量が増えることで解像度があがった状態で営業へフィードバックができる、というサイクルが出来上がるということなのです。

解像度とはなにか

そもそも、スタートアップでよく使われる”解像度”という言葉は、一体何を指しているのでしょうか。

解像度(かいぞうど)とは、ビットマップ画像における画素の密度を示す数値である。

すなわち、画像を表現する格子の細かさを解像度と呼び、一般に1インチをいくつに分けるかによって数字で表す。

wikipedia ”解像度”

この格子の細かさがビジネス観点であり、CS活動によりこの格子に1つひとつ色を塗っていくことで顧客を理解する。これが解像度とよばれている言葉の意味だと理解しています。ことCSの関連する領域では、ビジネスドライバに紐づいたオペレーションの解像度と、組織力学の解像度が非常に重要になります。

細かいフィードバックループを回し、解像度を上げよう

ビジネス観点(=格子)はより細かく営業からCSへインプットし、CSは情報をその細かな粒度で取得する(=色を塗る)ことで、顧客を理解し解像度を上げていく。これこそが、営業とCSの連携で実現すべきことだと私は考えています。

解像度をあげる営業とCSの連携

営業とか、営業推進とか、コーチングとか、ざっくばらんに私とお話しいただける方、meetyを開設しましたのでぜひお話ししませんか?もちろんMagic Momentのこともお話しできますよ!



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