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食のトレーサビリティを変える海外サステナブルスタートアップ

緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が続き、外食に行く機会が確実に減りました。家で料理するためにスーパーマーケットに行く機会が増え、日々食材を選ぶ中で、その産地などにも気にかけるようになりました。

買い物をしているうちにふと気になり調べてみると、食材だけでなく、加工食品の原材料に関しても、産地表示が義務づけられているようです。2015年からスタートしており、2022年の3月までに、全ての加工食品に原材料の産地表示を行うことが義務化されています。

世界中の食材が我々の食卓に届くようになり、毎日バリエーション豊かなおいしい食事を楽しめるようになった一方で、生産者との距離が遠くなればそれだけ、家庭に届くまでの間に様々なリスクを抱えることにもなります。こうした視点においても、食の安全に対してこれまで以上に消費者の意識が高まってきています。

今回は、世界を見渡し、私自身が気になった食のトレーサビリティを変えるスタートアップ3社をピックアップし、未来の事業へのヒントを探っていきます。

1. Cellr, Australia

2016年にオーストラリアのパースで創業したCellrは、ワインの瓶にNFCタグをラベリングし、ワイナリーから顧客へ、ワインに関する様々な情報を届けることをサポートするプラットフォームを提供しています。

ワインは通常、ワイナリーで製造された後、国内外の卸を経て小売店に運ばれ、その後ユーザーのもとへと届けられますが、ワイナリーからユーザーまでの距離が遠く、ワイナリーの思いをユーザーに直接届けにくいという課題を抱えていました。

それどころか、実際には販売工程のプロセスで様々な中間業者を経ることから、一度商品を卸してしまうと、自分たちが作ったワインがしっかりと最終消費者の手元に届いているのかすら、ワイナリーからはわからないというのが現状です。

そこで、CellrはNFCを組み込んだラベルでワインに封をし、中間業者や販売業社、最終消費者にそのNFC情報を読み取ってもらうことで、ワインが今どのサプライチェーンを通過しているのか、ユーザーの手元に届いたのか、いつ封が空けられたのかをワイナリー側で知ることができるようにしています。

それにより、消費者を含む各ステークホルダーに作り手の思いや生産方法、ワインの特徴など必要な情報を適切に届けることができるため、製造されたワインのブランド保全や、顧客とのダイレクトマーケティングのプラットフォームとしてワイナリーの役に立っています。

2. BLAKBEAR, UK

BLAKBEARは、ロンドンで創業されたスタートアップで、生鮮食品のパッケージに添付でき、内容物の鮮度を測定できるセンサー型ラベルを提供しています。

スーパーをはじめ様々なところで販売されている魚や肉などの生鮮品は、見栄えを良くする着色料などが使われることもあるため、外見だけで鮮度を判断することが困難です。

BLAKBEARは紙状のRFID型センサーチップを開発し、食品の劣化により発生するアンモニアをそのセンサーが検知することで、食品の鮮度、保管可能期間を推定し、ユーザーに情報を提供しています。

日本でも賞味期限が切れた食品の廃棄などがしばしば問題になっていますが、BLAKBEARの取り組みはパッケージ内部の鮮度を正しく測ることで、消費者に安心を与え、不要なフードロスを減らすことにつながっています。

3. Collectiv Food, UK

Collectiv Foodは2018年にロンドンで創業した会社で、ロンドンや周辺国の生産者とレストランやスーパーなどをつなぐサプライチェーンを提供しています。


日本の「食べチョク」のような生産者と消費者をマッチングするプラットフォームとは異なり、生産者と事業者をつなぐプラットフォームで、既存の流通の課題を自動化や配送システム、AIを使って効率化し、独自のサプライチェーンを構築することで、安全に素早く、しかも価格の安い食材の提供を可能にしています。

農協や、中間の卸といったはるか昔から存在し、様々な影響力を持っている既存の流通プレイヤーや業界団体に対して、テクノロジーの力で挑み、ユーザーが知らず知らず負わされているリスクやコストを解消するモデルを構築しています。

ステークホルダーだけでなく、国の規制なども多い業界をテクノロジーの力で変えていく企業として日本でも同じような企業が求められる時が来るでしょう。


今回は、食のトレーサビリティに着目し、生産者が作った食材、商品を安全に届けるサービスを提供しているスタートアップを紹介しました。

食品業界は関係者の数も多く、古くからの慣習が続きなかなか変えるのが難しい業界といわれてきましたが、不可逆なグローバル化の波や、食の安全を求める消費者のニーズを起点に、センサー技術や、自動化などのテクノロジーによって着実に変化の波がおしよせてきています。

古くからある業界を変革していくのは、簡単なことではありませんが、一つ一つの企業の努力が業界全体の機運を醸成し、少しずつでも着実に良い未来に向かっていく姿は、我々が事業を作る際にも非常に参考になるのではないでしょうか。

次回も引き続き、世界のSustainability Businessについてリサーチしていきたいと思います。

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