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脱炭素の燃料を作る海外サステナブルスタートアップ

ビットコインやアルトコインなど、最近は暗号通貨の業界でも何かと世間を騒がせているイーロン・マスクですが、彼が生み出したTeslaを筆頭に、燃料エンジンではなく電池で動く電気自動車は、次世代の車のデファクトスタンダードを目指して世界中で日々開発されています。

電気自動車はモーターと電池のみで車体を動かすため、複雑なエンジン制御技術が要らず、一般の自動車と比べて容易かつ安価で製造することが可能で、さらに排気ガスも出さないことから、メーカ良し・消費者良し・環境良しの三方良しの商品だと言われています。

特におとなり中国では、電気自動車の開発が世界の中でもかなり先行しており、なんと50万円を切る電気自動車も販売されています。


一方で、電気自動車の動力源である電気については、現在も石油・石炭などの化石燃料を多く使用する火力発電に頼っている国が多く、化石燃料の燃焼に伴う二酸化炭素の排出がもたらす問題は年々深刻さを増しており、日本を始め、世界中で温室効果ガスの削減を目指したカーボンニュートラルの取り組みが進んでいます。


今回は、世界を見渡して私が気になった、カーボンニュートラルの視点で温室効果ガスを生み出す諸問題を解消しようと取り組んでいるスタートアップ三社をピックアップし、未来の事業のヒントを探っていきます。



1. PROMETHEUS, US

2019年にカリフォルニアで創業されたスタートアップで、二酸化炭素から燃料(ガソリン、軽油、ジェット燃料)を生み出す装置を開発しています。

基本的な仕組みとしては、大気中から収集した二酸化炭素と水を原料に、電気化学還元反応で生成したアルコールを触媒反応によってガソリン、ディーゼル(軽油)、ジェット燃料に変えることでカーボンニュートラルな燃料を提供しています。

燃料の生産コストは採掘で生み出されるコストと同程度であり、燃料を生産する過程で発生する副産物も酸素であることから、環境に優しいエネルギーと言えます。


以前、お酒に関する記事の中で二酸化炭素からアルコール(ウォッカ)を作るスタートアップAir Companyを紹介しましたが、この会社と同様に、地球温暖化の原因の一つと言われている二酸化炭素を、社会に有用な商品の原料として活用し、脱炭素社会の実現を目指している企業の一つです。


2. Sierra Energy, US

こちらも2004年にカリフォルニアで創業されたスタートアップで、廃棄物を原料にした合成ガス(一酸化炭素と水素の混合ガス)を生み出すプラントを製造しています。

ゴミの再利用に関しては、これまで日本を含めた様々な国で「サーマルリサイクル」という手法がとられてきました。

子供の頃の社会科見学等で一度は見聞きしたことがあるかもしれませんが、「サーマルリサイクル 」はゴミを燃やす際に発生する熱エネルギーを電気の生成に再利用しようというもので、単純にゴミを処分するのではなく、社会に役立てようとする取り組みです。

しかし、ゴミを燃やす際に二酸化炭素やダイオキシンといった有毒ガスや鉛などを含んだ有害物質を発生させてしまうことから、ゴミ処理の方法として環境への配慮という点では不十分だと言われてきました。


一方でSIERRA ENERGYでは、高温の反応炉を使ったガス化反応により、プラスチックなどの生活ゴミを、様々な燃料の原料になる合成ガスに変換。有毒ガスや有害物質を発生させることなく、エネルギーを再生産する技術を提供しています。

このシステムで利用されているガス化反応自体は、実は古くから知られているものですが、SIERRA ENERGYはこれを現代のプラント設計技術と組み合わせることで大量のゴミを一度に処理できる大規模かつ複製可能な反応炉の開発に成功しました。

昔からあった技術に別の分野の最新技術を組み合わせることで、これまで解けなかった課題の解決に成功している非常によい事例だといえるでしょう。



3. RENOVAREFUELS, UK

2015年にロンドンで創業されたスタートアップで、こちらも生活ゴミを原料にして、ガソリンやディーゼルなどの燃料を生み出すシステムを開発しています。

多くの都市で悩みの種となっているゴミ処理問題ですが、都市で発生するゴミの多くは埋め立てによって処分されています。

埋め立て処理をしたゴミからは、二酸化炭素の20倍以上の温室効果を持つといわれるメタンガスが大量に発生し、それが大気中に広がるため、ゴミの埋め立ては、環境への負荷の高いゴミ処理方法として問題視されています。

RENOVARE FUELSでは、微生物の分解処理により発生したメタンガス・二酸化炭素を原料に、触媒反応で石油の代替物である合成燃料(液体炭化水素)に変えることで、ゴミを原料にした環境に優しいエネルギーを提供しています。

RENOVARE FUELSが作るゴミ処理システムは、各プロセスで発生する副産物も再利用するため、持続可能な次世代のゴミ処理システムとして期待されています。

彼らはヨーロッパだけでなく、アジアやアメリカなど世界中での事業展開も視野に入れているため、日本でもRENOVARE FUELSのシステムが導入される日も近いかもしれません。



今回は、化学の力を使い、不要とされる二酸化炭素や生活ゴミから新たなエネルギーを生み出すスタートアップを紹介しました。

私もかつて大学から大学院にかけて化学を専攻していたこともあり、電気化学還元反応や熱分解というのは非常に面白く感じられた分野ですが、大気中や社会に大量に存在し、人類にとってある意味不要と思われてきたものから、我々の生活に欠かせないエネルギーを生み出すアプローチは、他の事業でも参考になるところが多いです。

必要であるか不要であるかは、 あくまでその時点の一面的な評価に過ぎず、社会背景や技術によっても大きく変化するものです。

かつては不要とされ見向きもされていなかったものに、現在の技術や価値観をもとに改めて焦点を当ててみると、これまでとは違うこれからの未来の価値が見えてくるかもしれません。


次回も引き続き、私自身の事業開発の参考にしたい意図も含め、世界のSustainability Businessについてリサーチしていきたいと思います。

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