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Vol. 10: 現時点の広島の認知度



「今の広島はどんな感じなの?」

新学期が始まり、セミナーの最初に必ず行われるのが自己紹介。
今日はマネジメント論の授業で、広島出身で交換留学生だということをいつも通り伝える。

すると教授からこんなことを聞かれた。
「私は広島に行ったことはないんだけど、今の広島の復興状況はどんな感じなの?もう安全だよね?」

一般常識的に考えて被爆から78年経った今、放射線の被害もなく、完全に復興しているのは当然のように考えるだろう。
だからこそ私はこの質問に度肝を抜かれた。

悪気はなく、シンプルに気になったから聞いている質問なのだろうが、地元の認知度のあまりの低さに愕然とせざるを得なかった。

先生が丁寧な聞き方をしてきたからこそ自分も丁寧な回答を心がけたが、これがカジュアルな場でぶっきらぼうな質問の仕方をされた時だと、嫌味を込めた回答の仕方をするのが適切な対応だと思う。
少し配慮に欠けている質問だと個人的に思う。


政治vs民間

広島は2011年から「国際平和拠点ひろしま構想」という取り組みを行っている。

平和への理論構築
人材育成と研究活動の支援
メッセージの発信
の場として今後機能させていくという構想である。(抜粋)。

おそらくこの取り組みは効果を発揮しているのだろう。2019年にはローマ教皇が11月に広島を訪れた。2022年8月6日にはグテーレス国連事務総長が広島を訪れた。2023年5月にはG7サミットが広島で開催された。

特にG7広島サミット後には、入国制限の緩和と相まって、インバウンド観光客が増え、コロナ前よりも平和記念資料館に足を運ぶ人が増えたという数字も出ている。

しかし、いざ海外に出てみると広島の認知度は決して高い状態だとは言えない。原爆が投下された場所としては知られているが、現在の広島が平和を発信する場所として機能していることは、民間単位では認知度が不足しているように感じる。


被爆都市から平和都市へ

中高大にて、広島の平和活動に多く関わってきた。
「広島を平和都市としてより海外にアピールしていく必要がある」と多くの講演会で登壇者はおっしゃっていたが全くその通りだと思う。

今まで広島は平和を発信する拠点としての機能を果たしているのだと認識していたが甘かった。
留学前は日本に来る外国人と関わっていた。
わざわざ日本に来て広島に来る人は歴史に対して意識の高い人であったことを忘れていた。

研究者でさえ、広島の被爆状況をまだ心配しているのが世界の現状なのである。(もちろんすべての人が広島の今を知らないわけではない)

地元がこのようにみられていることに残念さを感じることはない。むしろ今まで自分や、自分の周りの人が取り組んできた活動の思いが届ききっていないという現状に焦りを感じている。

核軍縮に関心のある人のみならず、一般人の広島に対する意識レベルの底上げが必要条件だと感じる。

ただ、意識レベルを上げるとなった時に、どのようなプロセスが必要かは自分自身でもまだ結論は出せていない。
このような認識の違いに直面したときに丁寧に、時に皮肉を込めながらも少しずつ正していくしかないのかもしれない。

さいごに

G7広島サミット時に、スナク首相がお好み焼きづくり体験を楽しんだというニュースが報道されたにもかかわらず、広島の復興の状況がまだまだ浸透しきっていなかったことに今回はショックを受けた。

今回の収穫は主に3つ。

  1. 広島が平和発信の拠点としての役割を果たしていることは、海外の市民単位ではまだ浸透していない。

  2. 自身が相手に歴史的な失礼な質問をしないためにも世界史を出来事単位でなくミクロに学ぶ必要があること。

  3. 歴史的に配慮に欠けた質問をされた場合には、TPOに合わせて回答の仕方を調整する必要があること。

この問題は、広島県民だけでなく海外に行く、または現在海外で生活している日本人全員が考えるべき問題だと思う。

今回の認識の違いを拡大して考えてみる。
それは自分の生まれた国である日本が外国人から見ると、異なる見方をされているということである(それも決してプラスでないような)。

そのような場に直面したときに、あなたは何を思うか、相手その認識のずれをどのように伝えるか。海外にいる以上、この問題に向き合うことは必然的だと感じる。

今回は少し固い内容となりましたが、留学生活残り2か月もしっかり楽しんでいこうと思いまーす!以上っ!



<参照>
https://hiroshimaforpeace.com/#top_content
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC259520V20C23A7000000/

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