【MLMの世界】#6 違和感
『次の集まりは今週土曜日で
肌のコンディションチェックができるよ!』
『ありがとうございます!もちろん行きます』
私は順調にメグミ先輩との親交を深めていた
彼女は月2~3回は声をかけてくれたが
先約がない限りほとんど参加するようにしていた
「最近会合行き過ぎじゃない?」
次の土曜日
出発の準備をしていると
渋い顔の健次郎から声をかけられた
「え、そうかな?」
「だってここ3カ月、土曜日ほぼ出かけてない?
あんなにネットワークビジネスかも、って疑ってたじゃん、大丈夫?」
「んー、だって何かを売ろうとしてこないし
ビジネスの話もないしね!
本当ネイルとかだけだよ
集まっている人も皆成功してて余裕があるからかメッチャ優しくていい人ばっかり!」
「まあ…奈々なら大丈夫と思うけど…
でも大抵詐欺師は良い人だよ笑
まあ気を付けなよ、いってらっしゃい」
それだけ言い残して
健次郎は二度寝に戻っていった
…は?詐欺師?!なんて失礼な!!
健次郎の言葉にイライラしながら
マンションへ向かう
皆すごく良くしてくれてるのに!
まあいいや
今週は肌チェックで初めてのサービス♪
楽しみだな
メグミ先輩と仲良くなってから
周りの人からも「なんか小綺麗になったね」と言われる自身の女子力アップを実感して嬉しかった
「こんにちは!」
すっかり出入りし慣れたマンションの一室に入ると数名のいつものメンバーが「内山さん、お疲れ~」と声をかけてくれる
メグミ先輩は…?…あ、いたいた
「メグミ先…」
彼女は誰かと親しげに話していた
そのボブカットの若い女性には私も見覚えがある
「内山さん、お疲れ様です!」
会社でメグミ先輩の取り巻きだった林さんだ
「あ、林さん…え、来てたんですね」
「うん!よく来てますよ〜
メグミ先輩に誘ってくれるので!」
あーそうだったんだ、へーなるほどね…
よく来てるんだ、ふーん…?
「そう、林さん熱心に来てくれてるよね!
内山さんより半年くらい前からかなー
そういや二人何故か今まで被らなかったね」
え、半年も前から…?私はまだ3カ月なのに?
なんだか…
自分は会社で特別だと思っていたけど…
なんだ、違うのか…
軽くショックを受けつつ何だか気恥ずかしい感じになってきた
例えるならファン多数の学校一のモテ男相手に
自分だけが特別な女だと彼女面して調子に乗ってたら普通にその他大勢だったと実感した時のような…(-_-;)
なんとも言えない表情の私をよそに
「ちょっと準備してくるね」とメグミ先輩が離れ、私と林さんが二人になった
「林さん、結構な頻度で来てるの?」
「そうなんです!メグミ先輩が誘ってくれるし!
平日の夜とかもたまに来てますし、土日はほぼ顔出してるかなー♪皆良い人で楽しいですよね
だから頻度ていうか、もうメンバーの一人みたいな扱いですねー☆
そろそろそういう話もしてるしー」
・・・・ん・・・?
「そっか、平日も来てるのすごいですね」
私がそう返答したところで
メグミ先輩が戻ってきた
「あ、この前メグミ先輩の勧めてくれた化粧水最高でした!今日はその結果がこの肌チェックで分かるからすごく楽しみ♪」
「でしょ?絶対林さんに合うと思ったんだよ!本当お勧めしてよかった♪セットの保湿クリームとか合わせればもっと効果できると思うんだ、今日試してみる?」
「マジですか?試してみたいー!でも割引は今回ないんですよね…?」
「んー…本来はないけど、林さんももう身内みたいなものだし、特別にOK!」
そう言われた林さんは大喜びしながら肌チェックに向かっていった
・・・・
あれ
なんかさっきから
おかしな言葉を聞いているような・・・?
『何か売ろうとかしてこないし!』
今朝健次郎に言い放った言葉が頭で反芻する…
メンバー…?
割引…?
いや、まさかね・・・
メグミ先輩がお勧めしたってだけの話だよね?
いや、そうだそうだ
一瞬嫌な予感がよぎったものの
すぐさまそれを打ち消して
また皆が楽しく話す輪に入っていった
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