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「サンクチュアリ 〜聖域〜」江口カン監督 全人類が見るべきドラマ!

 

借金・暴力・家庭崩壊…と人生崖っぷちで荒くれ者の若手力士、猿桜(演: #一ノ瀬ワタル)が、大相撲界でのし上がる姿を、痛快かつ骨太に描く人間ドラマ。 世界的な知名度を誇る日本の伝統文化、神事として継承されながら、未だ神秘のベールに包まれている大相撲の世界。 1500年以上の歴史の中で、横綱に登り詰めたのはたった72人。 その戦いが行われる土俵は、異常の上に成り立つまさに“サンクチュアリ”(聖域)。 猿桜は、やる気もなく稽古もサボり気味、先輩には盾突きまくり…と手が付けられないクズっぷりだったが、徐々に大相撲にのめり込んでいくことに―。小瀬を筆頭に、相撲愛に溢れながらも体格に恵まれない清水(演: #染谷将太)や、相撲番に左遷された新聞記者・国嶋(演: #忽那汐里)など、生きづらさを抱えた若者たちが土俵の世界を取り巻く人間ドラマと絡み合う。 “サンクチュアリ”(聖域)に翻弄されながら、ドン底でもがく若者たちの熱き“番狂わせ”が今、はじまる。(下記Netflix Japanサイトより抜粋)



 ここ数年鑑賞してきた中でも指折りの面白さと完成度を誇るドラマであった。

角界といえばどんなイメージを抱くだろうか。
おそらく大半の人がNHKで夕方ごろから中継される、いわゆる大相撲とそれに取り組む力士たちが頭に浮かんでくるだろう。

しかし、考えてみるとそれ以上の情報がほとんどないことに気づく。

土俵の上は女人禁制であり、力士おける聖域である。だが、それと同時に神秘のベールに包まれた角界という世界もまた、常人が足を踏み入れることができないまさに聖域なのである。

このドラマはそんな謎に包まれた角界の世界を、主人公猿桜を通して垣間見ることができる。

規制に縛られないNetflixだからこそ実現した、エポックメイキングな怪作が誕生した。

そんな異常な世界を曝け出すだけが今作の魅力ではもちろんない。

主人公小瀬の力士として成長していく様、立ちはだかる強固な壁。
左遷という苦渋を味わいながらも、猿桜という一人の力士を通して徐々に相撲の世界に惹き込まれていく新聞記者の国嶋。
母親と弟を幼い頃に亡くし、喪失感を抱えながらも破竹の勢いで連勝を重ねていく猿桜のライバル力士静内。
旧態依然としたしごきが行われている相撲部屋の稽古シーン。

この物語は誰も触れてこなかった異質な世界を土台に、それによって翻弄される人間たちの重厚なドラマでもあるのだ。

この二つの重なりが普通ならざる物語を生み出したわけだ。


今作は力士を登場人物に添えるということで、キャスティングには相当な困難があったのではないかと予想される。

主演の一ノ瀬氏は元格闘家。体づくりから撮影も含めると2年半かかっているというから驚き。

その他にも元力士が多数出演しているそうだ。
その中でも特に猿桜のライバル、静内役を演じた住洋樹氏は飛翔富士という四股名で活躍した元力士である。
これがまたすごい迫力である。身体的にもそうなのだが、過去のトラウマを抱えた、少し闇がある不気味な力士を圧倒的な凄みを持って演じている。
セリフが全編通して一切無いというのがその恐ろしさに拍車をかけている。
演技経験のないことを逆手に取ったような演出がこのような不気味なキャラクターを創造したわけだ。

その他にも、猿桜と同部屋である猿将部屋の力士たちもこれまた個性派揃いである。その中には元力士もいれば、普通に役者として活動している人もいる。

この猿将部屋での猿桜たちの人間ドラマもまたこの作品の大きな魅力の一つである。

また、キャスティングの妙だけでなく、このドラマのために組まれたセットも今作を支える重要な役目を果たしている。

特に、まさに相撲界の聖域とも言える両国国技館での取り組みのシーン。
これがまさかのセットだというから驚きである。完全に国技館で撮影しているものだと思っていた。

改めてNetflixの資金面での充実ぶりが窺い知れた。

とまあ、つらつらと述べてきたが、今作は本当に様々な奇跡が重なって出来上がった作品なのだと感じられる。

そしてまた、日本の最もポピュラーな文化の一つである相撲を題材にしたドラマが世界配信されるというのもNetflixならではだし、僥倖である。

タイトルにある通り、全日本人はもちろんのこと、全人類が純粋に楽しめる作品であることは間違いない。



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