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移住前の私とお母さんの話

よく食べよく喋り、いつも元気。でも、実はとっても繊細で、とっても心配性。そんな私のお母さんと、私の、移住前のお話です。

私はお母さんが大好きです。今も昔も。
だけど、移住する前、私はお母さんの言葉に傷つき、そして私もお母さんのことを傷つけてしまいました。きっと。
その時のことを、今もたまにふと思い出す。思い出すと心がギュッとして、涙が出てくる。


お母さんはいつも私の味方でした。
私が悩んでると、心配してくれて、相談に乗ってくれて、私はお母さんにたくさん助けられてきました。

移住を決めたときもそう。
「えりがそう決めたならお母さんは応援するよ。がんばりなさい。でも、いつでも帰ってきていいんだからね。」って。
「不安だけど、一番不安なのはえりだよね。だからお母さんは応援することに決めたよ。」って。

心配性のお母さんが、反対したい気持ちをぐっと堪えてるのがわかって、背中を押してくれたことがとっても嬉しかった。感謝の気持ちでいっぱいだった。

本当は電話で移住のこと話したかったのに、電話は絶対にしてくれなくて、LINEでのやりとりだった。

多分電話で話したら、つい後ろ向きな言葉が出てきちゃうと思って、文で伝えてくれたんだろうな。お母さんなりの精一杯の優しさを感じた。


もともと、お母さんは心配性で保守的。
小さいときから私がちょっと挑戦的なことをしようとすると、「やめなさい!」って反対された。

基本的に両親には自由に育ててもらって、「勉強しろ、進学しろ、将来こーしろ」って一切言われたことはない。

だけど、新しいことを始めたり、ひとりで旅したり、夜出歩いたり、そういうことちょっと冒険的なことに対してお母さんは異常なほど反対をした。

そういえば、反対を押し切ってひとりでカンボジアに行ったときは、お母さんは家出をして、カンボジア行きを許したお父さんとしばらく口を聞かなかった。そんなことがあったな。

思い返すとそういうことがよくあって、私はお母さんが心配する気持ちもわかるし、喧嘩もしたくないから、なるべく反対されるようなことはしないようにしてたんだと思う。無意識に。

(とはいえ、頑固で我儘な私なのでこっそり勝手にやらかしてたけどね)

だから、移住を決めたときも、お母さんは絶対反対してくるんだろうなって思ってた。なのに、LINEで移住したいことを伝えたときにすんなり背中を押してくれて、正直拍子抜けした。

でも、やっぱり本当は心配で移住をとめたい気持ちもあったんだと思う。


私は両親に一旦LINEで伝えたあと、ちゃんと自分の言葉で、直接、移住することを話したかった。移住すること、これからやりたいこと、私の本当の想いを伝えたくて、知ってほしくて、わかってほしくて、ひさびさに実家に帰った。

晩ごはんを囲みながら私がひととおり話し終わったあと、お母さんは、ポロッと、
「本当は今の会社このまま続ければいいのにって思ってるけどね。」って言った。

さらに、
「大人しくて人見知りなえりが、そんな知らない土地に行って大丈夫なの?」って。

私はこの言葉を聞いて、とてもショックを受けた。

応援してくれてるんじゃないの?なんでこのタイミングで言うの?そもそも人見知りってなに?私の何を見てそう言ってるの?
そのときの私は頭の中が「???」だらけだった。

覚悟を決めたあとに反対されるのも嫌だったけど、なによりお母さんに"大人しくて人見知り"だって思われてることが悲しかった。

そして、私の中でなにかがぷつりと切れて、言ってしまった。

「お母さんがそうやって反対するから、私は今までやりたいことに挑戦できなかったんじゃん。」
「小さい頃から、お母さんの中で"大人しくて人見知りなえりこ"のイメージを押し付けられるのが辛かった。そのイメージに合わせる自分が嫌だった。本当は、私、そうじゃないよ。」って。

最悪すぎる。
私の長年のコンプレックスをお母さんのせいにしてしまった。全くもってお母さんのせいじゃないのに。
こんな言葉が出てきたことに自分でもびっくりした。
だけど、きっと心のどこかでずっと思ってたことなんだろうなとも思った。

そのあとどんな会話をしたかはあまり覚えてない。なんとなくその場が気まずかったってことは覚えてる。

特にお互いに謝ることもなく、そしてその後この話に触れることもなく、今に至る。何もなかったかのように、仲良くやってる。

でも、一度言った言葉は一生消えない。
私が今も、ふとこのことを思い出して辛くなるように、お母さんの心にもきっと残ってるはず。

今は、一度言葉にしたら引けなくなっちゃう頑固な私に、”移住をやめることの選択肢”を残すために、あえて言ってくれたんだとも思う。本当に心配してくれてたんだろうな。そう思える。
そしてそうやって反対してくれたからこそ、私は移住の意志を自分で再確認できたし、そして、より確固たるものになった。


明日は、移住後はじめての帰省。
あの日以来、はじめてお母さんに会う。
「ごめんなさい。」って言おう。そして「ありがとう。」も伝えよう。

お母さんがあって、今の私がある。
私はお母さんが好きだし、お母さんが育てた私自身のことも好きになれつつあるよ。
ありがとう。

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