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ラインラント地方のりんご

ドイツ人が最も消費する果物はりんごです。
 ドイツ人一人当たりの消費量は年間21.9 kg(2019/20年)で、日本人の12.28㎏に比べると2倍近くになります。
 品種も多く、ドイツ国内で現在およそ2,000種ほどあるとされていますが、一般に流通しているものは少なく、30~40品種ほどと言われます。

 りんごはドイツ全国で栽培されていますが、ヘッセン州のフランクフルトはアップルワインが有名で、独自のアップルワインの文化があります。なので私もりんごと言えばその辺りが生産量も多いのかも、と漠然と思っていました。

 ところが最も大きな栽培地はバーデン=ヴュルテンベルク州で39%、続いてニーダーザクセン州の27%だとか(2020年現在)。最も多く栽培されている品種はエルスター(Elstar)で、生食用りんご全体の23.7%を占めます(2017年現在)。続いてブレイバーン(Braeburn)で10 %、ガーラ(Gala)が8.4 %、ジョナゴールド(Jonagold)が8.1%、ジョナゴアード(Jonagored)7 %となっています。
 こちらで各品種の写真が見られます。

 今回ラインラント地方のりんごをテーマにした映像に日本語字幕を付けました。田舎の草地にまばらに果樹を植え、自然に育てる方法と、果樹を並べて植え、低木に育てて収穫をしやすくする方法、人気の品種や消えゆく品種、品種による使い分け、など、生産者から消費者までいろいろな人の声を取っているのが興味深いです。

(日本語字幕が自動的に出てこない場合は、画面右下の字幕をクリックして日本語を選んでください)

 動画のタイトルは、「Des Apfels Kern」なのですが、直訳すると「りんごの芯」となります。ただこの場合、物理的な芯のことではないのは動画を見れば分かります。ドイツの友達に聞いてみると、なんとゲーテのファウストに「Des Pudels Kern(プードルの核)」という言い回しがあり、この動画のタイトルはこれにかけているのではないか、ということです。なるほど、と納得がいきました。でも、「りんごの核心」などという言い方も堅苦しいかなと思い、副題の方を日本語タイトルにしました。でももっといい言葉がないかなと考えています・・

動画内にいくつか料理名が出てきますので紹介します。
● アップルソース付きプッテス(Puttes mit Apfelmus)
 動画でカフェで女性たちが食べているものです。下に説明します。

● アップルソース付きライベクーヘン(Reibekuchen mit Apfelmus
 ライベは、ここではすりおろすという意味で、すりおろしたジャガイモのパンケーキのことです。プッテスのと同じアップルソースを付けて食べます。

● 天と地(Himmel un Ääd
 変わった名前のようですが、標準ドイツ語の綴りはHimmel und Erdeです。ジャガイモのピューレとリンゴソースを合わせたもの。ラインラントではここの血のソーセージ(Blutwurst)、地元の方言ではFlönzを合わせます。
 ジャガイモは標準語的にはKartoffelですが、Erdapfelという言い方が一般的な地域もあります(南ドイツ、オーストリアなど)。Erdapfelとは「地のりんご」の意味。木の上(天)に実るりんごに対し、地中にできるりんごに例えた名前です。3つの食材が一緒に食べると美味しいのです。

● アプフェルクラウト(Apfelkraut)
 アプフェルはりんご、クラウトは一般的に草やザウアークラウトを意味しますが、ラインラントでは果物を煮詰めたシロップもクラウトといいます。
こちらの動画で農家での昔ながらの作り方をご覧いただけます。

● ラインラント風リンゴのケーキ(Rheinischer Apfelkuchen)
 これはイコール、リームヒェンアプフェル(Riemchenapfel)のことです。
 リームヒェンとは紐や帯、ベルトなどを意味する言葉(Riemen)の指小辞です。動画にある通り、生地を帯状に切ってりんごの上に格子状に並べて焼いたケーキです。

● ゲデクター・アプフェルクーヘン(Gedeckter Apfelkuchen
 ゲデクターとは「覆いを被せた」という意味です。上も生地で覆ってりんごのフィリングを隠したタイプです。

 さて、上に挙げた、この映像に出てくるカフェが出しているプッテス(Puttes)を作ってみました。こんな感じです。

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 ジャガイモをおろし、玉ねぎ、ベーコン、卵と混ぜ合わせて焼くというシンプルなものです。映像のカフェではジャガイモを細かくすり下ろしていたようですが、粗くおろすレシピもあったのでそちらにしてみました。玉ねぎは同じくすりおろすかみじん切りにしてベーコンと炒めます。ベーコンは切らずに型に敷いたり最後一番上に乗せたりというレシピもありました。また、レーズンを入れるレシピがあったので、私もレーズン入れてみました。
アップルソース(Apfelmus)も先日作ったので、それを合わせて食べてみました。

画像2

 ベーコンの他に、メットヴルスト(Mettwurst)というソーセージを切ったものも入るのですが、日本ではなかなか手に入らないので、似たような質感のソフトサラミを切って入れました。

 ホクホクしたジャガイモに、ベーコンやソーセージの旨味、レーズンの甘さとアップルソースの甘酸っぱさがいいアクセントになり、飽きのこない美味しさです。

 この映像を作っているラインラント地域研究所のサイトに、ボンでこのプッテスの呼び方を調査した記事がありました。
 ボンでは「プッテス」はレアなんですね。他の4つの呼び方がほぼ同じ割合で共存しています。方言はとても興味深い反面、ホントに難しいですね。

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 ラインラント地域研究所の映像に日本語字幕を付けたものが他にもあります。よかったら合わせてどうぞ。この中からもそのうち解説を書くかもしれません。

- ドイツの村のパン焼き所にて
- ドイツの農家のパン焼き
- 回転樽でのバター作り
- 家庭の屠畜1ー 豚の焼去と解体(年齢制限あり)
- 家庭の屠畜2-ソーセージ作り、塩漬け、焼き付け


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