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0か100でしか捉えられなかった痛み、ただ観ていくことで起きた変化

精神科の病院に勤めていた時、
担当していた患者さんとのエピソードです。

「肩が痛くて上がらない」
「ひざが痛い」
「一生痛みがあるままなのか」

患者さんからの毎回の訴えとしてあったのは「痛み」についてでした。

徹底的に調べないと気がすまない様子で、

外出許可をもらい整形外科を受診したり
→レントゲンでも全く異常はない

整骨院に行ってマッサージを受けてみたり
→その時は和らぐけど痛いものは痛い

サプリメントを飲んでみたり
→なにも変わらない、痛い

いろいろ試されていました。

主治医の先生には「気の持ちよう」と言われて原因が分からないことに苛立ちを感じていました。

僕がお話する中で感じたのは本人の痛みに対する過剰な執着でした。

痛みがほんの少しでもあったら痛い。
痛みは完全になくならないとダメ。

痛みにも程度があって、いろんな種類があることを本人が気づくことが出来たらなにか変わるんじゃないか?

そう思いました。

そのため提案したのはVAS(ヴィジュアルアナログスケール)です。
VASの詳細はこちら

0から10までの段階に分けて、
(0は全く痛くない、10は最も痛い)

本人に今の痛みがどのぐらいか、数値と感じていることを書いてもらうことにしました。

「そんなことで何が変わるの?」

と怪訝な様子でしたが、親しい関係性になっていたので「試しにやってみましょう^ ^」とスタートしました。

はじめは10がずっと続いていて、
コメント欄も「痛い」「どうにかして欲しい」の連続でした。

1ヶ月ほど経つと6.7の数字が出てきました。
コメント欄も「今日は少しマシかも」という言葉が書かれていました。

「あれだけ痛くて仕方ないと言ってたのに👀」

といたずらっぽく聴いてみると、

「ほんとに不思議です。あれだけ痛いと思っていたけど痛みも毎日一緒じゃないんですね。書いてみてそれに気づいてびっくりです。」

とお話されました。

患者さんが退院するまで約半年間、
ほぼ毎日書いておられました。

続けていくと、
どういった時に痛くなるのか、あるいは痛みを感じないのか、本人なりに痛みに対して向き合っていて、この頃にはVASも1.2になることが増えてきました。

そこから派生して、
体を動かしたり、深呼吸をしたり、
その時に痛みがどう変化するのかやっていきました。

半分遊びのような感覚でやっていましたが、
「なにをしたら痛みはどうなるのか?」とお互いに確かめながら出来たのは良かったです。

そういった日が続くと、

「なんでこんなに痛みにこだわっていたのかがわからない。今はいろんなことが楽しく感じていて、すごく柔軟に向き合えています。」

と言葉を下さいました。

退院後も年に1.2回ほどお手紙を頂きますが、お元気そうでなによりだと思います。

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