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切り替えスピード(プレゼンテーションの進化に表れる、大企業とスタートアップの差)

明けましておめでとうございます。
(ボクが生まれ育った大阪ではお正月は1月15日までなので
ギリギリですが「ました」ではなく「ます」でご挨拶します 笑)

会社組織を離れて個人で働き始めると
年末年始でひと区切りつかないことを知りました。
昨年の仕事納めは12月31日の22時。
本年の仕事始めは1月1日10時。
普通の週末の方が休んでるじゃないか(苦笑)
ですが、やりたいことしかやってないので苦ではないのです。
それが会社員時代との大きな違い。

さて、昨年は人様のプレゼンテーションやスピーチを
たくさん拝見して、様々なアドバイスをしました。
メジャーの例は、大人も子どもも知ってる東証一部の食品会社で
社長の広報スピーチ(日本語・英語)を。
成長株の例だと、昨年東証マザーズに上場したIT企業で
CEOとCFOが上場時に行う記者会見プレゼンを。
それぞれマンツーマンでコンサルティングしました。
大抵のケースではクライアント側で完成している原稿を拝読して
プレゼンテーションとしてさらに印象に残るよう加筆修正した上で
その実演を(特に言語、非言語の表現や演出)指導します。
現場では「こうしてはどうか。具体的にはこういう違いが出る」と
ボク自身がデモンストレーションを交えてご提案します。
関西弁で言えば
「そこまで注文付けるんやったら、お前自身がやってみいや〜」
を封じるためです。いやそんな理由ではなくて(苦笑)
やはり実際にどう見えるか?聞こえるか?
その違いを目の当たりにしていただいた方が、ご理解が早い。
説得力も増すし、まず倣うべき型もイメージを伴って明確化する。
ただしこれをやるには、お預かりした原稿を
ボク自身がひと通りアタマに入れて臨む必要があります。
まるで年間に何大会も暗唱大会に出場しているような感じです。
ですから(おそらく多くの方の想像以上に)準備に時間がかかります。
当日その場で初見して、あれこれ思いつきの感想を述べるだけでは
踏み込んだアドバイスができないと感じていますので。

さて今日の本題。
現場で修正の提案を差し上げると大抵ご理解はいただけますが
そのご対応が大企業と中小企業あるいはスタートアップでは
かなり違う傾向にある、ということを実感したのです。

まず大企業の場合、提案は大抵いったんお預かりになります。
「なるほど、ちょっと持ち帰って検討します。」
「分かりました。社内でも周りに訊いてみます。」
「そのようにやっても問題ないか、広報と確認します。」
そこは社長が良いと思うようにどうぞ…としか答えようがないことも
その場では保留されることが非常に多いです。
そして、その修正がなかなか本番に反映されないのです。
本番1ヶ月半前に指摘したポイントがなかなか改善されなかったり。
中には本番前日は改善されていたのが本番は先祖返りしたり。
その後の反省会で謹んでご指摘したところ
「いや、分かってはいたんですが…今までと違うやり方なので
見てる方々から『何かいつもと違うな』と思われそうな気がして。
なので修正ご提案は部分的に使わせていただきました。」
いつもと違う、と思われることは気になりますか?
「まぁ恥ずかしいというか…失敗したら不安ですし。」
ボクのような役割の人間をお招きいただく理由は、
むしろいつもと違うことをしたいからでは?と思うのですが。

一方、中小企業やスタートアップの場合
修正提案はほぼ間違いなくその場で採用/否決が決まります。
「あ!そっちの方が良い!それにしましょう」
「今のカッコいいなぁ!もう一度やって見せてもらえますか」
「そのやり方を真似てもう一回やってみますので見てください」
昨年はこんな感じで、結果的に100%採用されました。
ですからその場で話がどんどん前進していくのです。
しかも、その修正が実演に反映されるスピードも超速い。
スケジュールがタイトで、前日のリハーサルチェックで
いくつかの指摘事項が出てきてしまった案件で
「明日までに直すのはキツイだろうけど、努力目標で」
と注釈を付けてご提案した修正が本番でキッチリ直ってたり。

もちろん、大企業の要職にあられる方は往々にしてご年輩が多く
一方でスタートアップは比較的若い方が多いので
記憶力や柔軟性の違いが影響している可能性は多分にあります。
ただ、ボク自身がお相手をしていて強く感じたのは
「スピード感が全然違う」ということでした。
一般に日本の大企業は物事を決めるスピードが遅く
逆に中小企業や特にスタートアップは比較的速いと言われますが
それはビジネス上の決断に限った話ではなく
このように自分のコミュニケーションスタイルや方法なども
今からやり方を変える、と決めて実行するスピードが速いんです。
サッカーで言えば全力でドリブルしてきて勢いがついているところで
急に現れた相手ディフェンスを前に90度切り返すようなもので
なかなかできることではないと思うのです。

おそらく大企業でスタイルを確立してきた方にとって
(自身の意志で確立したか結果的にそこに行き着いたかは別として)
変わること、変えることは大変なストレスを伴うことなのでしょう。
一方、中小企業やスタートアップの方にとって変化は「習い性」。
変わってもおかしくない。むしろ変わってこそ、変えてこそ。
このマインドセットの違いが、プレゼンテーションの改善という
シーンにおいても顕著に表れているのでは?と感じました。

このように、指導がパフォーマンスにどんどん反映され
日々ダイナミックに進化していくコンサルティングは面白いです。
ですが、なかなか変わらない、あるいは変えられず
「自分はあんな風にはできないだろう」と諦めていることが
実現した瞬間の興奮や全能感、魂から湧き上がるような喜び…
それを引き出すコンサルティングは面白いを超えて、幸せです。
今年もまた、たくさんの方が「見たことがない自身の力」を
今までとは違うやり方で一緒に探していきたいと思っています。

(Above photo by Fanny Schertzer - A round Up Of Recent Football Case Law (2015) / CC BY-SA 3.0)

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