2011年のチャットモンチー

最近ちょっと思うところあって、チャットモンチーがツーピースに転向した頃のライブやらドキュメンタリーを見返していたけど、あの頃の2人の熱量はとにかく鬼気迫るものがあって、すごい季節だったんだと改めて思う。この時期のチャットのライブ映像を何も知らない人が見たらなんでこんなことになってるのか1ミリもわからないだろうな、という謎のエネルギーに満ちている。あの頃リアルタイムで追いかけていた自分にもすべてが理解できていたわけではなかったし。でもとにかくかっこよかった。神々しいとすら思った。

経緯を知らない方にざっくり説明すると、2011年の夏にチャットモンチーは当時のドラマーである高橋久美子さんが脱退して、ファンは大変な衝撃を受けた。「チャットモンチーはあの3人でなくては成立しない」と信じて疑わなかった私も当時本当にショックを受けたしすぐに受け止めることはできなかった。チャットモンチーのライブは基本的にメンバー3人以外がステージに立つことはなくて、キーボードやオーボエを演奏することがあってもそのすべてを3人で成立させていた。私はそのステージを聖域みたいだと思っていた。3人しか入れない聖域。

高橋さんが抜けて次の体制がどうなるのか、サポートを入れて活動するのか新メンバーになるのか。おそらくそういう選択になるのだろうとタカを括っていた私を含めたファンの耳に、ある日突然飛び込んできたのが「チャットモンチーが新体制でライブにシークレット出演、しかもベーシストの福岡晃子さんがドラマーに転向してツーピースバンドになる」というニュースだった。

まじで意味がわからんな、と思った。でも同時に、これほどまでにチャットモンチーを大切にした選択はないなと思った。形が変わっても一番大事なところは変わらない。これ間違いなく正解やな、っていうのはすぐにはわからなかったけど、2人が死に物狂いで正解にしてくれた。

福岡さんはドラムに転向するにあたって相当な猛練習を積んでいて、しかも2ヶ月後にはすでに対バンツアーが決まっていた。本当はその対バンツアーはキャンセルになるかもしれなかったけど、「これいけるんちゃう?」ってなってそのままやることになったらしい。

そしてそのあと1年くらい、武者修行のようにアウェーの対バンイベントやフェスに出まくって、それと並行しながら楽曲を作り、2012年の秋にリリースされたアルバムが『変身』。まさに名は体を表す、というようなタイトル。このアルバムも、バンドを進めていく推進力とマグマのようにグツグツと煮えたぎるエネルギーがそのままパッケージされたような、歪で生々しくてでもとてつもなくポップな、他のどこにもないアルバムだった。このアルバム自体がドキュメンタリーでありライブみたいだなと思った。表題曲の「変身」の歌詞にこんな一節がある。

変身するぞ
裏切りのサプライズ踊って
変身するぞ
どうせ嫌いになんてなれないだろ?

3人体制からツーピースに移行したタイミングで、着いていけなくなったファンも実際に多くいたと思うし、迷いながら着いていったファンもたくさんいた。そのファンに向けて、「どうせ嫌いになれないだろ?」と言ってのけてしまうところが本当に好きだった。そして実際嫌いになれなかったわけで。

私はこの頃のチャットモンチーのライブ映像を観ていると未だにやる気が湧いてくる。なんというか、やってやれないことはないんじゃないかと思える。バンドを進めていくという情熱がそのままライブの熱さに繋がっていたあの頃はチャットモンチーにとってもファンにとっても特別な季節だった。

この頃のライブ映像、貼っておきます。伝説の片手ハンドマイク片手スティック。

https://youtu.be/qOuPeu2dVnc





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