母の心は、君以外のことでいっぱいだ
出産予定日が30日を切っているのに、どうしてこうも自分のことばかり考えているのだろう。
君がどうやって生まれてくるのか、その仕組みは理解した。君がいつごろ生まれてくるのか、その時もなんとなくわかっている。君を産むために、どうしたらいいいのかも、きっと産むのに困らないくらいには知っているつもりだ。
本当はもっと、君について向き合ったり愛しんだりするのだろうと思っていた。
でも、自分でもびっくりするくらい、自分のことばかりな母を、いつか「お母さんらしいね」と言ってくれる日が来るんだろうか。
産休に入って思うことは、
お金を稼がなくても良いと思うことが、こんなにも自分にとって時間と余裕を生むことなんだということだ。
「今は子育てに専念してね」という会社の人の言葉も
「妊婦さんなんだから何もしなくていいのよ」という実家の母の言葉も
「仕事ができないんだから夫に家賃を渡さなくてもいいよね」とお金を稼がない自分を肯定する言葉も
今までなら「いやいや、そんなこと言ったて・・」と受け入れられなかった言葉なのに、今はずっと素直に受け取れる。
仕事をしてお金を稼ぐ必要もない、里帰り中だから家事をする必要もないし、夫のことを考える時間もない。ただただ、お腹の中にいる君を待つ一人の妊婦としての自分は、生まれたてとまでは言わないまでも、なかなかに真っ新だ。
そんな自分が君を少し差し置いて思いを巡らせていることは、学生時代によく読んでいた生き方、働き方系のWebメディアを久しぶりに読むことや、純粋に写真創作に向き合う時間。
「ああ、真っ新な自分はこういう世界が好きだったな」と働くことや稼ぐことを知らなかった自分が好きだったものを思い出すこと。
就職してから、物理的に好きなことに思いを馳せる時間は減り、興味があることを「現実味がないな」と諦めることがたくさん増えた。
どうしたらちゃんと自立して生活していけるだろう。きっと、手堅く、安定的に、自分の身近の知っている人の生き方を真似していれば間違いないだろう。
そうやってたくさん蓋をしてきた自分の興味や純粋な気持ちを閉じ込めた箱を少しずつ整理して、開けていっている。
母になる前に、もう少しその時間をたのしませてくれると嬉しいな。
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