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午後5時すぎのお昼寝

「お昼寝」と呼ばれるものを、ここ数年数えるほどしかしたことがない。と、言うのは大袈裟だし、人のお昼寝事情はわからないが、通常、人が起きてる時間に寝るのなんて勿体無いと思うので、私は進んでお昼寝はしない人である。

それが、妊娠してからは外に出た日は必ずお昼寝をしてしまう。

今日はお昼前に20分くらいのお散歩に出て、家の周りをぐるりとした。
初夏の気温で、風は爽やかだけれど日差しは痛く、すっかり散った桜の葉っぱに太陽が強くあたって、緑が眩しかった。

うちに帰ってきて冷凍ごはんと冷凍食品の小さめのハンバーグを二切れ、それに納豆とキャベツの千切りサラダを食べた。小一時間後にはチョコレートを2つ、お煎餅を1つ、今川焼きを母と半分個してお茶タイム。
おやつをたらふく食べたからお腹が膨らんでいるのか、君がいるからお腹が膨らんでいるのかはわからない。

少しずつ読み進めようとしていた育児小説を開いて、本の世界に入ろうとするけれど、どうも読む気持ちがのってこない。
硬めのクッションを枕にして、身体の右を下にして寝転がってもう一度読んでみる。3ページだけ読んだところでふと気づいたら意識を失っていた。薄目を開けて目の前の文字が揺れて焦点が合わないことを微かな意識で確認すると、もうこの眠気に身を任せてしまえと大人しく本を閉じて眠ることにした。

どのくらい経っただろう。
身体が痛いということだけが無意識下にわかっている。頭の先の方にもやが見えてきて、外から子どもの遊ぶ声が聞こえてくる。相変わらず頭のもやはかかったまま、薄っすらと光を感じて、隣で寝ている母を見てまた目を閉じる。
「もう一眠りしよう」と思う意識はある。でも、身体が痛いのがそれを邪魔する。

仕方なしに体を起こしてチラと時計を見ると、時間は午後5時35分。随分と長い時間寝てしまった。
乾いた喉を、今川焼きと一緒に飲んだ冷めたノンカフェインのルイボスティーで潤して、またソファーに身を委ねて頭の中のもやを回遊する。

目は開けることができる。耳もよく聞こえる。重たくなった頭をなんとか持ち上げて、ゆっくり呼吸をして一つ大あくび。

自分の身体を起き上げる筋力も、支える意志もなく、ただそこに在るだけで脱力していたのに、私がずっと頭のもやがかかった状態でも、君は止まることなく動き続けている。明確な意志を持って存在を知らせるように、今の「私」の動きの中で一番力強く動いている。

「あー、もうどれだけ動くんだよ!」と突っ込んで、私はまだ元気すぎる君を野放しにして、午後5時すぎのお昼寝を少しだけ続ける。

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