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#自由律俳句

厳島

厳島

嗚呼、いつくしや厳島

二度目の逢瀬は 杪冬に 枯れた紅葉 憐憫の情

紺の海に千の真珠が落ち 斜陽が皆を照らしだす

熟れた柿の実 目尻の皺 揺蕩う乳房 牡蠣の如し

嗚呼、美しや厳島

いと艶やかな その肌に 醜い愛撫 果たしては

含羞恥辱の狂宴か 我らは正に白痴なり

我の心ここに在らず 

嗚呼、悲しきかな厳島

あの子の恋慕は何処へやら

離れる度に醒めゆくわ

寒風沁みる首元に 卑し

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最後の貴婦人

我愚者、偶然の上に生きる

囂々たる霹靂が胸中へと落ちる

浮世の渦の中に暫時私はいたはずである

無意識に下唇を噛んだ 

涙を堪える為ではなかった 束の間の断罪 

線香を六本

祖母の葬儀へ参列の為に東京を旅立つ

厳寒の地にあった祖母の肌は新雪のようだ

髪でさえ龍の髭のよう

流麗でうら寂しい

かず子さん心配なさらないで 日本の貴婦人はついさっきまで彼女の闘争の中にいたのよ 

貴方の

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愛詩

愛詩

どうか忘れてくれるな 貴方はいま ただ寂しい

大きな孤独に包まれて 木枯らし通る秋の道

どうか忘れてくれるな 貴方は人が恐ろしい

優しさにさえ懐疑して 鬼面の影を友にみる

どうか忘れてくれるな 貴方は誰より優しい

自分の悲しさ顧みず 凍える人を温める

どうか忘れてくれるな 貴方は静かに強かだ

慟哭にいつも人気はなく 雨垂れの様に綺麗に滴る

どうか忘れてくれるな 貴方は気弱で美しい

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