実際メタバースは普及するのか?
前回メタバースのマーケティングモデルを考察しました。
では実際どこまで普及するのか?
スマホのように誰でもHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を使ってメタバースに入るようになるのか?
メタバースのネ申ですら懐疑的な様子です。
普及する? しない? ではない
結論から。
メタバースは普及するしないかの問題ではなく、どの表現方法(UI/UX)が使いやすいか? の問題が大きいと考えられます。
バーチャルという意味では、Twitterの世界もオンラインゲームの世界も、集まれどうぶつの森の世界も大きな違いはないと思えませんか?
すべてリアルな物理世界ではなく、通信ネットワークを通じて相手の反応に応じて自分が反応する世界です。
またTwitterは書き文字での表現を。ゲームエンターテイメントの世界、特にMMORPGなどではアイテム収集やキャラクターのカスタマイズ、スキルを使った育て方によって。あつまれ!どうぶつの森ではDIYを通じてファッション的な要素で、本来の自分ではない別の自分を脳内で描いてプレイしたり投稿したりしています。
鏡の世界とは違い、これらのアクションに対して予想と違うリアクションが ”おもしろい” と脳が感じている世界であれば、HMDに頼らなくともすでにメタバースは形成されていると考えても不思議ではありません。
この状況があるからこそ、メタバースの定義が揺らいでいる原因のひとつではないかとも思えます。
つまり冒頭に述べた ”どの表現方法(UI/UX)が使いやすいか?” の問題に落ち着くことになります。
現行サービスのメタバース的限界点
テキスト(Twitter)表現の限界点
15年間続いているTwitterの機能追加を振り返ってみると、テキスト表現の限界点が近いことが読み取れるのではないでしょうか?
最終的に音声に頼る機能追加がなされている時点で、テキスト・コミュニケーションの限界点があらわれてしまいました。
文脈を無視した、コミュニケーションとは言えない悪口の言い合いも発生するなど、メタバースとしては未熟な世界だったと考えられます。
Twitterに限らずテキスト系掲示板でも同様と考えられることから、テキスト中心では、持続的な世界の構築は難しいものと判断しています。
ゲームエンターテイメントの限界点
こちらは運営の限界点が近いと読み取っても良いのではないでしょうか?
オンラインゲームの動向整理 - 消費者庁5ページの「オンラインゲーム市場規模(国内)」からグラフを見ると、市場規模に頭打ちが見られます。
こうなると、運営側がいかにおもしろいと思わせるコンテンツを提供できるかどうかで、市場規模が維持できるか縮小に転じるかの転換期に来ていると考えても良さそうです。
このことを裏付けるため、ゲームエンターテイメント上場企業の研究開発費を見ると、失敗が許されない額まで膨れ上がっているよう見受けられます。
あつまれ!どうぶつの森を展開する任天堂を例に見てみると…
年々増加していき2008年から比較すると、およそ3倍になっています。
任天堂の場合、自社ハード(ゲーム機器)の開発も含まれています。
もう一つバンダイナムコHDの研究開発費も見てみると、急激に研究開発費が膨らんでいることがわかります。
こちらもオンラインゲームだけではなく、アミューズメント用の設置ハード開発が含まれています。
カプコンは、2022年度に莫大な研究開発費を投入しています。
ゲームエンターテイメント企業の研究開発費は増加傾向にあることは間違いありません。
研究開発費の増加と市場規模の頭打ちは相関関係があると考えられるので、各社生き残り合戦に突入していると考えても良いかもしれません。
特にハード開発が伴う3社の動向を見ると、純粋にコンテンツ開発以外の何らかのハード限界点に対して挑戦しているのではないかと思えます。
それが何なのかは予想できませんが、ハード的な問題がなければ、コンテンツ開発だけでここまで研究開発費をつぎ込むのはちょっと考えにくいです。
こうした点から考えても、運営会社の経営状態とコンテンツの企画自体でメタバース世界の維持が左右されることを考えると、ゲームエンターテイメントを中核としたメタバースは持続不可能と考えられます。
参考記事でこちらを読んでもらえると、開発現場の一端が見られるかも。
スマホゲームとメタバース
もっとい|エンタメマーケターさんの記事から関連がありそうな部分を抜粋させていただきました。
※全文を読むこともオススメします。
貴重なデータを掲載していただいてまして、「日本国内の市場規模と推移」のグラフを見てもらうと、こちらも成長の鈍化(頭打ち)が感じられます。
伸び代はまだあるようですが、微増であるともっとい|エンタメマーケターさんも書いています。
そしてもう一つ、スマホゲームも月間アクティブユーザー(MAU)推移とレビューに重要な記載があります。
重要な記述に赤線を入れさせていただきました。
「経済力で大人に勝てない若年層」と大人の「MMORPGを代表例として新しいゲームを選択する」動き。
この一部が現在VRChatやVket、Clusterを構成しているのではないかと思い始めています。
現在上記メタバースソーシャルサービスでは、Unity・Blender(共に小規模での利用なら無料)が使えれば、アバター・ワールドを自作し、アップロードできる状態です。経済力は関係ありませんので、スマホゲームを行う若年層が、ゲーミングPCを持っていれば参入ハードルは低く、MMORPGを選択する大人に関しては、コミュニケーションを求めていると考えると、ゲームではなくメタバースソーシャルサービスの世界へ入る可能性は高いと思われます。
機器から予想する普及の状態
オンラインゲーム、スマホゲームに馴染んだユーザーは、メタバースソーシャルサービスに参入しやすい構造があると仮定すると、機器のRicciさによって普及レベルが変わるのではないでしょうか?
その予想図が下図です。
緑色のラインに囲まれた中がユーザーの数を表しています。
グレーの点線はメタバースソーシャルサービスへ参入する壁です。
UI/UXの視点から見ると、Ricciな機器を使えば使うほどVRワールド内でのアバターの動きは洗練される反面、メタバースソーシャルサービス人口は少なくなると考えられます。
ただここにポジションするユーザーは、メタバースソーシャルサービスを土台にした、新しい市場の開拓者になる可能性を秘めていると感じています。
次にRicciな環境を用意しながら、そこまでメタバースの住人にならない層がCreatorだと考えられます。
この人たちは、自分をアバターとして表現するのではなく、アバターやワールドを作り込むことで表現します。
そのためメタバースの住人とまではいかないのですが、DeepなRicciユーザー数まではいかずとも、それなりのユーザー数を抱えると考えられます。
流入勢力はどこか?
現時点で比較的多くなると思われるユーザー層はこの2層です。
純粋にメタバースワールドを楽しむ層は、Nintendo Switchからスマホ、Steam Decなどの携帯型ゲーム機を持つ人々だと考えています。
そのため見下ろし型など、第三者視点の設定ができることは普及に対して大きなアドバンテージを生むと思われます。
またVRワールドは消費されるワールドと、聖地化するワールドに分類されていくと考えられます。
この消費型のワールドに対して、ウェブ制作やデザイン業者が入ってくるような気がしていますが、3Dモデリングのハードルが高いため、どこまで参入できるか未知数です。
現時点のVRChat開発ロードマップを見るとこの図が拡大するだけのような印象を受けるのですが、VketCloudのロードマップを見ると、スマホ勢のほか、非メタバースソーシャルサービス勢(非Nintendo Switch勢も含む)を取り込む可能性を感じさせる想定をしていると思えます。
鍵はARグラス⁉
ARメタバースという言葉も出始めていますが、ARグラスの普及がUI表現とUXの鍵を握っている感じです。
ARグラスによるライトなVR体験がよりDeepなメタバースワールドへの入口になると考えています。
そうなった場合ビジネス現場での利用が考えられるので、Creator層を巻き込んだビジネスユース層、上図右上に増加するユーザー層が形成されると睨んでいます。
このNreal AirのようなARグラスから、パナソニックのMeganeXに繋がるのではないかと考えていて、事務職全般にARグラスを併用したUI/UXサービスアプリが出てくると思われます。
追記(2022.10.18)
まさに理想のポータブル環境をHIKKYさんが提案していました。
どちらも本体は別に接続するタイプで、Nreal Airはスマホに接続するため、このグラスを使ったARアプリやエンターテイメントアプリが増加すると考えられます。
パナソニックのMeganeXは今のところ、OculusQuest2(503グラム)に比べるとかなり軽量(250グラム)に作られていて、解像度も5Kという情報が出ています。
Nreal Airに慣れたユーザーがビジネスユースに使い始める可能性が高く、実際にパナソニックもビジネスユースの利用を視野に入れているようです。
新しいUI/UXとメタバース
エンターテイメントユーザーの伸び代が鈍化し、PC・タブレット・スマホのUXもすでに頭打ちが来ていると感じます。
こうした現状を打破するひとつの突破口として、「メタバースソーシャルサービス」が存在しているとも思えます。
xRとメタバースではUI/UXに共通項が多いと考えています。
少なくとも3D空間をデザインすることが必要で、実現するためのツールも共通です。
少なくともVKet2022・夏の大阪とニューヨークでの企業製品体験は大きな転機になっていると感じます。このUXは今までのウェブサービスでは体験できません。
これらの表現もまだまだ仮説と検証を繰り返している段階であり、現時点で足りていないのは、どのようなアプローチでUXを設計し、それを実現するためのUIはどのようなものが最適か? といった基礎的な考え方。
この考え方を早めに作り出せれば、メタバース世界で増加する市場に対応できるスキルを手に入れられることでしょう。
最終的には、やるかやらないか? ですね。
参考文献
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