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家族が病院に行ってくれない 精神科医目線で語ります

本日は「家族が病院に行ってくれない」というテーマでお話しします。


よく聞くんです。家族を受診させたいんですけど、なかなか行ってくれません、予約を取ったんだけれども、旦那が行ってくれません、などがあります。

どうしたらいいですか、とよく聞かれるんですけど、それにお答えします。

◾️なぜ行きたくないか

まず、なぜ本人が行きたくないか、です。

大人の場合によくあるのが、旦那の発達障害、子どもや親の統合失調症、幻覚妄想の発症、親の認知症、夫や家族のギャンブル依存、アルコール依存、いわゆる依存症などがあります

双極性障害も結構あるのかな。

躁転しているときやうつになっていて家族に行ってくれとかがあったりします。

うつ病はだいぶハードルが下がって来やすくなってると思います。

強迫性障害も来にくいかな。

本人は診断されることの怖さや、そもそも病院嫌いという人もいますから。

病院に行くのが怖いとか。

うちの父親もそうだからわかるんですけど、診断されて決まるのが怖いというのがあります。

決定するということの怖さというか。

そういうこともあります。

薬を飲む怖さ。

薬には副作用が結構あったりするので、強制的に飲まされるんじゃないかとか。

医者が信用ならんというのもあります。

それはその人の偏見の場合もあれば、確かに医者にも禄でもない人もいますので、そういう経験かもしれないし。

病院が持ってる忙しさ、病院はやはり特殊なカルチャーなので、そういうカルチャーに下から行かなければいけないじゃないですか。

やはり病院はどうしてもお医者様というところもあるので、何か嫌だな、とか。

甘えてると言われるんじゃないか、医者から言われるんじゃないか、口コミ見たら悪いものが付いてる、ネットの掲示板を見ると病院へ行くのは良くなかった等々、色々なものを見て行きたくないなと思っているのかなと思います。

病院へ行くことの不安やドクターに酷いことを言われるんじゃないかなどはよくわかります。

実際、医者は医者で言いますからね。

父性的な側面もゼロじゃないというか、あります。

例えばアルコール依存症において、でもやめるのはあなたですよ、ということになるんです。

あなたの意志の力で止めなければいけないですよ、万引き依存もあなたの力で止めなければいけないですよ、ということも言うわけです。

だから仕方ないんだけどね。

仕方ないんだけど、そういう側面もあるというか。

いつも葛藤します。

本人にとって良いことをしてあげたいんだけど、それだけだとうまくいかない。

彼らが期待してるものと病院が提供するものが必ずしも一致しないんです。

それはいつも思います。

本人の気持ちはよくわかります。

◾️どうしたらいいのか

どうしたらいいのかというと、模範的な回答というのは、保健所や行政に一回相談してみたらどうですか、と。

個別のケースなので、個別の問題が結構あるんです。

こうしたらいいという王道の答えがないので、保健所に相談するか、あと自傷他害、自分を傷付けたり自殺の切迫性があるのであれば、暴れることがあるんだったら、すぐ警察を呼んで、警察から通報してもらう、措置入院の通報をしてもらって強制入院という形もあったりします。

必ず入院が必要だろうということだったら、病院側と家族で事前に打ち合わせをしておいて受診するというやり方もあったりしますけど。

こういうのが緊急時の対応かなと思います。

じゃあどうしたらいいの、ということですけど、もうちょっとだけ深い話をすると、そもそも何故その人は精神科の症状が出ているのか、うつなのか、不安なのか、引きこもっているのか、依存症になっているのか。

この症状の原因というのは、ストレスや心身の疲労が溜まってそういう症状が出ている。

じゃあこのストレスの原因は何なのか、ということなんです、まず。

ここから探っていかなければいけないんです、問題を一個一個解決するというのが治療になるので。


精神科の治療はここだけを見て、ここに薬を入れたら全て解決というものではなくて、やはりこの問題、この人がどうしてこういうことを引き起こしたのかという、この問題にまでメスを入れてあげなければいけない。

家族の中でこの問題を一緒に考えていくというのが大事なんです。

学校の問題なのか、仕事の問題なのか、友人関係なのか、コンプレックスなのか、そもそも家族の仲が悪いのか、親子関係が問題でうつっぽくなっているのに親が「病院行け」みたいな感じだったら、それはそもそもの問題はうつが問題じゃなくて、親子関係が問題じゃないですか、だからどうやって歩み寄るのか、ということがあります。

ただ問題にアプローチしようと思っても、何かが邪魔することというのは精神科ではよくあります。

問題があって一個一個解決しようとしても、本人の心理や認知が邪魔をするということもあれば、問題が解決しようのないものということがあったりします。

だって私ね、やはり見た目も悪いからいじめられちゃうんだ。

頭が悪いから結局親が望む通りの仕事には就けないんだ。

親がいいんだよと言っても自分が納得できない。

というようなことがあったりします。

そういう認知の歪みに対してどうしていくのか、周りはズルいじゃないかという妬みの問題をどうするのか。

自分が悪いと思ってるけど、自分が悪いというのは実は妬みの加工されたものだったりします。

本当は他の人がズルい、周りは恵まれてるからズルい、という思いが、でもズルいと言うと自分があまりにも惨めだから、ズルいという言葉ではなく、自分はダメなやつなんだと先回りする、人から何か言われる前に先回りするみたいなのもあったりします。


よく臨床であるのは、傷つきやすい、繊細すぎるから受診できないHSP的な感じ、精神医学的には社交不安障害(SAD)、回避性パーソナリティー障害と言ったりしますけど、HSP的な問題があるときもあれば、発達障害の問題で自分の認知の歪みに気付けていないし、必要性を理解できてないこともあれば、境界性パーソナリティ障害のように対人イメージがグチャグチャしてる、自分の感情に支配されやすかったり、トラウマの問題があったりするということもあります。

こういう問題があるから受診できないので、こういう問題を家族がどういう風にケアしていって受診ができるレベルまで回復させるかということになってしまうケースもあります。

家族がせっかくそこまでケアして治していったのに、そこにいた医者が悪かったから台無しにされたということもなくはない。

かといって病院に行きさえすればいいだろうということで、患者さんに餌を与えるみたいな形でどうにか受診してくれと言って、おだててお小遣いあげてまで受診させても、やはり通院は続かないので、なかなか精神科の臨床は難しいんです。

◾️家族がバーンアウトしないように

家族がバーンアウトしないことも重要で、こういう問題を傾聴的に聞くことで、アドバイスを与えるのではなく、傾聴していく、繰り返しの中で、相手が安心感を覚えて、認知の歪みが少しずつ取れていくということなんですけど、でもそれはきついんだよね、家族も。

それはきついんです。

何故きついかというと、感情的負担がすごくあるんです。

医者もそうですけど、相手の感情に気を遣って、集中して話を聞いて、相手の感情に共感しつつ引きずられないようにして…とか。

でもそういうことを喋っていると自分のトラウマも思い出してしまうので、そこに引っ張られないようにして、そういう感情や集中を必要とするから、結構きついんです。

相手の集中力もいるし。難解なんですよね。

哲学的な問題が多いわけです。

私は劣っているのか劣ってないのか、そういうこともあるわけです。

それは、誰を怨んだらいいんだという怒りの問題があったりしたときに、運命とかそういう問題に対して我々はどういう風にこころの決着をつけるのかというのはとても難解です。

その難解さを扱わなければいけないし。

かといって限界もあるんです。

話を聞いてあげなさい、と益田は言いました。

と言っても聞けないんです、そんな時間ないから、忙しいし。

人、モノ、カネ全てが足りない中で、お金持ちだったらカウンセリング受けられたのにと子どもや家族が言うかもしれないけど、そうはなれないですから。

常に限界がある中でやらなければいけないし。

かといって責任もあるわけです、使命感というか。

助けてあげたいという思いもあるし、そこのグルグルですごくいじめ抜いてしまう、自分を。

そしてバーンアウトしちゃうということも結構あるし、自分にすごく責任感がある中、必ず裏切り行為に遭うんです。

何かでミスを犯す、誰かが裏切るんです。

家族がチームとして団結しなければいけないのに誰かが何かを犯す。

患者じゃない人が問題を起こすこともあれば、患者さんの家族が問題を起こすこともあったりして、裏切られたみたいな思いをすることもあるんですけど、それもよくありますから。

そういうことなんです。だから結構きついんです。

そういう中でどうしたらいいんだろうというと、やはり難しいんです。

治療に行けないんだけど、その前段階でできることを考える。

こういう認知の歪みを治していく、問題解決をできるところは減らして削っていく、家族がケアをするということが求められてしまうのですが、素人にそんなことを益田はさせるのか、と言われたらねアレですけど、難しいね。

何て言えばいいかわからないですけど。
と言いつつ、YouTubeというのは一つの解決策だと思っていて。

やはりイノベーションでしか解決できない問題というのは人類にはあります。

人類が抱えている問題は全て解決できるものではないんです。

解決できない問題もあるし、解決できない問題の中で新しい技術を使うことで解決できる問題もあるんです。

YouTubeを使うということは、僕がこうやって情報発信してることは、全員の患者さんを救うとは全く思わないですけど、少しは役に立つとは思っています。

こういう見通しが立てられる、インターネットによって、SNSによって、YouTubeによって情報がオープン化されて、そのおかげで色々な人が見られるということが医者の中では当たり前のことなんですけど、新しいこと何も言ってないですけど、それが皆さんのところに行くというのが新しいイノベーションだったりします。

今回は、家族が病院に行ってくれない、というテーマでお話ししました。

️◾️本日の宿題

今日の宿題は、家族が病院に行ってくれないときにどうしたらいいか、というテーマで、皆さんがやったこと、考えてることをコメント欄で書いていただけたらいいかなと思います。

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