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SNSの普及に伴う性被害と精神科医インフルエンサーがやるべきこと、その課題

本日は「SNSを介した性被害及び精神医学的啓蒙」というテーマでお話ししようと思います。


■性被害の相談が増えた

性被害は最近注目されることが多くなっているんじゃないかなと思います。
性被害を臨床で見ることは、僕が医者になった当初はあまりなかったんです、実は。

ありましたよもちろん、そういう被害者の人たちはたくさんいて、深刻な人が来て、この患者さんは実はねみたいな形で外来の中でもごく一部という感じだったんですよね。

でも最近は多いですね。1、2割、もうちょっとあるかな、わからないですけど。
性被害の話をすることが本当に増えました。

それはYouTubeを見ている人が来るからというのもあると思うし、やっぱりオープンに語られやすくなっているんじゃないかなという気がします。
特にジャニーズ問題ですね。

去年2023年にジャニーズ問題がテレビなどメディアで大きく取り上げられるようになって、そしてそれを僕もYouTubeで取り上げるようになって、そこから「ああ、自分たちもこれを苦しみだと言って発言していいんだ」「もう10年、20年前のことだけれども、これを相談してもいいんだ」と見ている人たちの中で意識が少しずつ変わったみたいですね。

その結果、「実は・・・」という形で語られることが増えたという感じです。
世の中の人や世の中の男性が思っている以上に性被害の問題点は多いし、そして女性は怯えているということですね。

ちょっとしたことと言ったら失礼だけれど、例えば電車の中で体を触られてしまうというものから、肩をぶつけられるとか、ぶつかりオジサンがいるとか、そういうものから、本当に実際の家族や友人から性的行為を強要されたとかレベルはさまざまですけども。

でも同じような心のトラブルというか心の傷になっているということです。
なのでわりと昔からある問題なんだけれども、よりホットになってきているのが、臨床家的にはそうなのかなという気はします。

それは啓蒙がうまくいってきているからということもあるし、SNS上でいろいろ語られることが増えているからということでしょうね。

■性被害と精神医学的問題

性被害というのはなぜ精神医学的な問題なのかということですよね。
これは犯罪でしょうと。

犯罪だから精神科医が扱う問題じゃなくて、そもそも犯罪なんじゃない?これが病気というのは何で?と思う人もいると思うんですよね。

犯罪なんですけども、その背景にあるものとしてやはり精神疾患的な問題、加害者側だと性依存の問題、知的障害や境界知能の問題、発達障害の問題、反社会性パーソナリティ障害の問題、そして彼ら加害者側がかつて被害者だったという虐待の連鎖のようなものもあったり、トラウマの連鎖のような要素もあったりする。

やはり加害者側が加害者として問題があるのではなくて、背景の精神医学的な問題があるので、更生をするという意味でもやはり精神科的な治療が必要だったり、アプローチが必要だったりします。

もちろん被害者側も、裁判で勝つことだけで解決するものではないですよね。
金銭的なやりとりが行われる、賠償金をもらえば解決というものではなくて、被害者の心の傷をケアしていかなければいけないわけです。

そういう観点から精神医学的な問題であるだろうし、そして知識があることで、病気の発症を防げたり、重症化を防げたり、周りのサポートを増やせることもあるんですよ。なので精神医学的な問題としても理解していく。

そして、その知識を加害者・被害者のみならず、周囲の人が全体として共有していくことがとても重要、ということになるかなと思います。

■性被害とは

実際、性被害とはどういうものなのかをお話しします。
SNS上で被害があるということですけれども、基本的には人間対人間で起きることなので、加害者がいます。

加害者はどんな人なのかということで、加害者を分類しました。

まず、家族や友人。だから実際の家族から性被害を受けるとか、友人とか職場の人。身近な人から性被害を受けるということもあります。

そしてそれがSNSを使った時にどうなるかというと、例えば性的な行為をしている時にそれをSNS上で拡散されるとか、SNS上で卑猥なコミュニケーションを拡散させられる。そういうのがあったりしますね。

あとは知り合った上でそういうことになってしまうということがあります。
今は若い子達は、出会いの場がSNSであることは珍しくないんですね。

僕ら昭和世代は出会い系サイト、マッチングアプリというと何か危険みたいな。ブルセラ的なもの、売春の場所なんじゃないか。お店を介さないフリーでやり取りするような売春の場所なんじゃないかと思いがちですけれど、実際は今はもうちょっとクリーンになっていて、わりとカジュアルに使っている人たちも増えているということです。

ただ、じゃあトラブルがないかというと、そういうわけじゃなくていっぱいあります。

相手のこともよくわからないんだけど、SNS上で仲良くなっていった時に最終的に性行為をしないと友達やめるよと言われて、友達関係を崩したくないから、嫌われたくないからということで、性行為をしてしまうということがあったりします。

そういうのはグルーミングと言ったりしますね。
若い子たち、10代とかは悩みが多いんですよ。

親との関係とか学校とか色々な人間関係の悩みとか、アイデンティティの問題ですね。

これから自分はどうなっていくのか。そういう問題の中で誰かに相談したいんだけれども、なかなか相談しにくかったりする時に匿名の誰かにすがってしまう。

甘い言葉を喋ってくる、「君は悪くないんだよ」と言ってくれる人たちにグルーミングされる、洗脳されることで、結果的に性犯罪、性的虐待に巻き込まれることも珍しくない。

あとは、匿名のやりとりの中で誹謗中傷を受けるとか、自分がInstagramで出したものが「お前なんて」「ブスだ」とか。

もしくは夜のお店に来ないかとか、夜の街で会わないかとか、そういう誘いを受けるとかで傷つく。あとたまたま目にしているものが傷つく。グロい画像みたいなものですよね。

もしくは自分のトラウマを刺激するようなものだったり、性的な活動をしているところを無意識に見せられたりとか、生々しいものを見せられたりすることで、傷つく。そういうトラウマ的な問題もあったりするなと思います。

では完全にそれを防げばいいかというと、それもまたちょっと違って、若い子たちには、ある意味悪いつながりも必要だったりするんですよね。

悪いが故にリアリティがあるというか、きれいごとばかり言っていても、やっぱりリアリティがなくてつながった感じはしないんですよ。

悪いことを通じてつながるって部分もあるわけですね。

ちょっと学校の先生は悪口を言うことでつながるようなものから、友達をいじめること、軽犯罪をすること、ODをすること、薬物を飲むことでとか。

あとドラッグですね。お酒でつながる、薬物でつながる、違法薬物でつながる、大麻でつながる、色々なやり方がありますが、皆が皆、勉強でつながるとかスポーツでつながるとか、そういうものじゃなくて、やはり悪いつながりもどうしてもあるわけですね。

これをどこまで許容するのか、どこまでを否定するのかっていうのは結構難しいですね。

やはり人間なので、古今東西若者の悪さを止められたことはないですから。

あのアウグスティヌスでさえ若い頃は悪さをしたと言っていますから、ある程度は許容しなきゃいけない部分ももちろんあるとは思いますが、ここら辺も議論の余地があるなと思います。

■精神科医はどう介入すべきか


では実際、そういう状況で精神科医はどう介入すべきなのか、どういう風にアプローチしていくべきなのか。

そもそも精神科医というのは、リアルな場所では何をしていますかと言うと、治療をしています。つまり、診断して薬物療法をする。例えば性的なトラブルからうつっぽくなっちゃうから、うつの治療する。

そこからフラッシュバックやパニック発作、トラウマの問題になっていくなら、PTSD、トラウマの治療していくとかそういうものがあったりします。

その際には薬物療法を使ったりしつつ、他のカウンセリングだったり環境調整をしたりします。あとはベースに発達障害の問題があるとか、発達障害の問題があるから暗黙の了解が分からなくて性被害に巻き込まれちゃうとか色々あります。

発達障害そのものの治療もしていくとか色々ありますけど、そういう要素もありますね。

精神療法つまりカウンセリングですね。カウンセリングもやります。
カウンセリングというのはどういうものかというと、話を聞く。
会話をする中で人を癒していく、治療していくということなんですけども。
ざっくり言うと2つの要素があるんですよ。

一つの要素は「心理教育」と呼ばれるもの。

教育をしていく。心理学的な教育。精神医学的には人間とはこういうものであるとか、脳とはこういうものであるとか、社会とはこういうものだから、こういう風にやれば生きやすいという教育的な要素。

それから、自分が今までやってきた経験とか生い立ちとか自分の強さとか弱みとかを整理していく。知識と個別の経験をうまくリンクさせるためには、トレーニングが必要なんですよね。

最初のうちはできないんですよ。

僕らは10何年ずっと同じことを毎日やっていますから、一般問題と自分の心の問題をリンクさせやすいんですけれども、なかなか一般的な知識と自分たちが体験して来た経験をリンクさせて整理するのは苦手なので、ここを手伝うというのもします。

もう一方は、思いやりを伝えていく、共感をしていく、つながりを回復させるということです。ただ話を聞いてくれるだけでやっぱり心は癒されるんですよね。

人間は群れの動物であるが故に、人に会って同じ場所で同じものを食べるとか、同じ空間にいるとか、呼吸をしあうだけで心は癒されていくんですよ。

だから共感とつながり。
そして信頼できる大人がいるということを伝えていくこともカウンセリングの要素だったりします。

あとは環境調整として、周囲、例えば家族に疾病教育をするとか、サポート要請をしたり教育をするとか。

家族の人に今は落ち込んでいるのはうつだから仕方がないんですよ、休ませてあげてくださいねとか、甘えているわけじゃないんですよとか話をしたり、場合によっては福祉を導入していく。

障害者手帳とか障害年金を導入する。必要があったら生活保護を取る、そういうこともやったりします。これが治療なんですけれども、じゃあSNS上でやれることは何かというと、こういう教育ということなのかなと思います。

あとは周囲への教育、本人たちへの教育がSNSでやれることだし、それを知ることで実際の診察室でやらなきゃいけないことが省けますので、他のことに時間を割けたりするんですよね。

例えば、こういう病気があって、こういう治療するということ。

副作用はこういうものがあるということをSNSとかYouTube上でやることで、診察室では他のことに充てられますから、こういう教育をしておくことで、診察室は共感とつながりにエネルギーを割けるわけです。

だから事前教育はめちゃくちゃ大事で、そうすればもっと他のことに割けたりしますから。

わざわざ診察室で一対一の中でやらなくても、YouTubeとかほかのところでSNSを使ってやることができるので、それはうまくやることが大事じゃないかなと僕は思っています。

そういう風にYouTubeをやっているということですね。もちろんこのデメリットもあって、こういうことを善意ある医師が全員やっているかというと、そういうわけじゃないんですね。

デメリットもあったりフェイクニュースをする人もいるし、良いことを言いつつ、自分の利益になるようなことを言う人たちもいます。

だからどういう情報を見極めるかというのはめちゃくちゃ難しいし、大事だと思います。

■現実はシビア

あとは、じゃあこういうSNSで情報発信していけばいいのか。こういう被害があるから情報発信していけばいいのかというと、もうちょっと実際の臨床というのは難しいんですよ。

つまり、現実はもうちょっとシビアで、こうやって発信していく中で色々な問題に遭遇しました。

例えば、じゃあなぜあなたはトー横キッズとか目の前で起きている性的な問題虐待を見逃しているんですか、ということを突きつけられるんですよ。

コメントとかを通じて。

「良いこと言ってるのはわかる。だけどあなたはなぜトー横キッズの問題を見逃しているんですか。ホストの人たちに売り掛けをさせ、ある意味恋愛を使った暗示というか詐欺ですよね。そういう中で顧客を洗脳させて売春行為で稼がせてホストに貢がせるようなことをしているわけですよね。それをなぜあなたたちは見逃しているんですか?」と問われるわけですね。

こういう問題に僕らはどう振る舞っていけばいいのか。ただ発信しているだけでいいのかということもある。

あとはゴシップですよね。
ゴシップに対して、どういう風に対応すべきなのか。

僕らはゴシップが出た時に情報が少ないからといって、国民全員が関心を持って議論をしている中、何も喋らなくていいのか。
存在感をなくして黙っていていいんですかということですね。
これも問われます。

明らかなものだけを喋って、明らかじゃないものは喋らなくていいのかというのはあります。例えば芸能人ですね。
有名な芸能人、人気者の芸能人がひどいことをしたと。
これに対して僕らは何も話さないということは許されるんですかということですよね。

被害者がどこまでどうなのかわからない時もあるし、被害者はなかなか全部言えないんですよ。

性的な問題というのはすぐに言えないし、証拠を明らかにできないんですね。トラウマの問題があるから。トラウマがあると回避をしてしまうので、すぐに喋れないんですよ、鮮明にね。

交通事故があって、ちょっとこういうことがあったんだと鮮明に言えるというものとはわけが違うので、ゆっくりしか言えないし、思い出すのも苦しいからなかなか言えないんですけれども。

そういう時に双方の意見が出ている中、加害者側のプライバシーとか名誉の問題もある中、僕らはどう振る舞うのかはすごく難しい。

かといって、あまりにも存在感がないとかき消されてしまう要素もあるので、精神科医として僕らは何を言うべきなのか、どういう立場でどれぐらいのインパクトを持ってどれぐらいのメッセージを伝えていくのかというのはあるなと思います。

このトラウマの問題というのは、傍観者でいられないと言うんですね。
それは心的外傷を最初に提案した人も言っています。

だから傍観者というのはあり得ないんですよね。トラウマの問題というのは中立はなかなか難しいんですよね。中立はありえないという言い方をしたりします。

これは臨床的にも明らかで、誰かの味方になる、そして誰かの敵になってしまうことが起きるし、起きざるを得ない部分がどうしてもあります。これはすごく難しいなと思います。

と言いつつ世の中は色々情報が増えてきて、全体としては良くなっているんだろうなと思いますので、今まで言えなかった人が言えるようになってきている。
性的問題もだんだん明らかになってきているというのがあります。

多様であるが故に理解のある人と理解のない人に、すごく分断というか、そういうのが起きつつあるのは事実です。

でも誰もいないよりはやっぱり理解ある人が増えていった方がいいわけで、そういう中でいろんな出会いも僕自身あったという感じがします。
女性たちの怒りや悲しみをすごく聞くことが増えました。

僕もYouTubeで情報発信をしていて、安倍元首相が殺害された時に宗教2世の問題を取り上げることによって、臨床現場で宗教2世の方たちのトラウマを扱うことが増えました。

そしてジャニーズの性的虐待の問題をYouTubeで扱った時に、先程も言いましたけれども、結果的に性依存の問題とか加害者側からも被害者側からも患者さんが言ってくれやすくなったみたいです。それで色々な話が増えました。

だから、今まで救えなかった人たちを救えるようになってきているのも事実なので、もちろんすぐ答えが出るものでもないし、社会の変化によって答えのあり方とか立居振る舞いの正解は変わっていくんだと思いますけれども、今こんなことが起きているよということをちょっと皆さんにお伝えしたいし、シェアしたいと思って、今回動画を撮っているということです。

今まで人類はそういうものを持っていなかったので。
僕が専門家として動画を使って皆さんに直接伝えるということは、今までの人類はできなかったんですよ。でも、今できるようになっているんですね。

じゃあどういう振る舞いをするのが正しいのかを探しつつ、それを行動に移すことをやっているということです。

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