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断捨離、ミニマリストについて精神科医目線で解説します

本日は、ミニマリストは幸せか、断捨離依存症について解説してみようと思います。

よくテレビやインターネットでは物を捨てた方がいいよとか、ミニマリストは幸せなんだみたいな形で、洋服も2、3種類しかなくて、家具は必要最小限でみたいなのあるじゃないですか。

「そうすると、心がラクになって幸せになりました」「食べる物も制限したら豊かになれました」「生活が豊かになりました」という記事や特集がいっぱいあると思います。

本当にそうなのかなとか物を捨てられないとか、物が多すぎて私たちはダメなんじゃないかとか思う人が多いと思います。そういうものを見てね。
でもちょっと冷静になればわかるはずですよ。

いや、そんなことはないなって。そんなことはないので、今回は精神科医目線でどれぐらい物を持つべきなのか、どれぐらい物を捨てるべきなのか、どれぐらい頭の中を整理すべきなのかをお話ししようと思います。

■何を疑うか

臨床的には、物を捨てましたとか、物はそんなにいらないですとか、食べる量は最小限でいいんですということを患者さんが言った時、あと家族がその人がそうなってしまったと言った時に、何を疑うかということですよね。

そういうことを聞いたら「ああ、良かったね」「幸せになったでしょう」とか、そういうこと言わないですね。だいたい「何かおかしいぞ」と思いますね。

よくあるのは物をいっぱい捨てて頭が楽になったというのは、発達障害の人が結構多いですね。自分にとっては要らないもの、そういうのはあるんですよ。

うちのクリニックというか、YouTubeで働いてくれているリョーハムさんという発達障害当事者の方がいるんですけども、当事者YouTuberでもあるんですけども、リョーハムさんとかね家に炊飯器がなかったりします。

普通は持ってるよねというものを持っていなかったりすると、認知負荷が減るので楽みたいですね。

あとは衝動的に物を捨てることで、ADHDの衝動性を解放することができて楽になるみたいなことはあるみたいです。

彼らの独特のこだわりやルーティンをやれるからそれで成り立つのであって、普通はちょっとやりにくかったりします。リョーハムさんとかね、1日1食だったりしますからね。

1日1食もラーメンを一杯食べて、それで1日過ごして、同じラーメン「武道家」というおいしいラーメン屋さんなんですけど、そこに毎日行く。それを1年間続けてるんですよ。

毎日昼は武道家で、1日1食の時も結構あるみたいな感じ。
そういう人たちだったらいいけれど・・・というところですね。

あとはこれに家族が巻き込まれるパターンというのもありますね。
そういうパターンで困ってしまうというのもよくあるかなと思います。

あとは認知症関係でも同じようなことが起きることがあったりします。
年を取ってからそういうことになってしまう。認知症関係で、突然物を捨てちゃうということも結構あったりします。

特に「前頭側頭型認知症」はルーティンを好むし衝動的だったりするので、FTD前頭側頭型認知症を疑うことが一応あるかなと思います。滅多にないですけどね。

基本は普通の認知症で何か衝動的にやってしまうってことが多いんですけども。
前頭側頭型認知症を疑うかなという感じですね。国家試験とか専門医試験だとFTDを疑うという感じですね。

実際の臨床だと珍しいので普通の認知症かなと思ったりしますけど。あとはうつ病とか双極性障害、躁とうつを繰り返す双極でも同じようなことが時々ありますね。病的になってしまって物があることで、苦しくなっちゃって、みたいなこともある。

摂食障害の認知パターン。
彼らも極端ですから、白黒思考で極端なのでそういうことをしてしまうとか。

あとは各種依存症でもそういうことやっちゃうとか。
落ち込んでいる時にちょっと衝動的にやってしまうとか、躁うつの躁状態でやってしまう。

あとは統合失調症の幻覚妄想状態でやってしまう。
そういうのがあるかなと思います。

いずれにせよ、「物を捨てて楽になりました」と言う時に、患者さんはその瞬間は幸せになっているとか、自分で自己コントロールできているので、解放感を感じていることがあるんですよ。

人間関係とか社会の問題とか、自分が抱えている社会的な問題というのはすぐコントロールできないんだけど、物を捨てるとか摂食障害で体重のコントロールするとか食べないとかは自分でコントロールできるので、万能感を得やすいんですね。
だけど後々問題になることが多いということですね。

とにかく臨床でこういうことがあったら患者さんをその場で否定することはないですけど、臨床家というのは病気の悪化とか、色々な病気の合併症を疑うことをするかなとは思います。

■断捨離のメリット・デメリット

断捨離にもメリット・デメリットがあると思うのでその話をします。
断捨離のメリットについては、頭の中の整理がつくということかなと思います。
物が減るので、整理されて自分が必要なことにエネルギーを注げるようになる。
とにかく整理ができるということがメリットですね。

デメリットについては、物が少ないというのは不便ですよ、そもそも。
単純に不便だっていうことですね。物がいっぱいあるとか選択肢が多いというのは豊かさの象徴なので、やはり色々なものがあるというのがいいですね。

ただ、あり過ぎると自分でコントロールできないので困る。
だから適度な量というのが大事だったりします。
どんどん物は増えていくので、ある程度は必要かなというのも大事かなと思います。

人間関係もそうですね。悪い人間関係が増えてしまうと良くないですけど、人間関係も資産なのである程度多い方がいいです。かといって悪い人間関係もありますからそういうのは減らした方がいいよということですね。

■どんな人が断捨離をしやすい?

断捨離になりやすい人はどんな人かというと、発達障害傾向のある人やうつ病、躁うつ病です。双極性障害と一緒ですね。摂食障害、統合失調症の幻覚・妄想。

一般的に言うならば「白黒思考」の人がなりやすいのかなという気がします。
極端なんですよね。白か黒かしかないみたいな感じなので、物を捨てるか増やすしかないんですよね。

程々に適量を持つことが一番大事なので、最低限であった方が望ましいですけど、禅の世界では、シンプルさの中の美意識というものがあるので、仏教の世界とかね。まあ、そういう思想もあるかもしれないですけれども、基本的には物はある程度多く、多すぎない程度に豊かな方がいいんじゃないかなと思います。

実例はどういうものがあるかというと、発達障害の人とかが突然「ああ、やっぱり捨てた方がいい」と思ってですね。家の物を結構捨てちゃって、冷蔵庫も捨てちゃって、冷蔵庫はいらないですよ、近くのコンビニがあるから。ジュースとか冷たいの飲まないし、アイス食べないからいいんですとか言って捨てちゃう。

でも半年とか1年後とかに困るとかあります。
困りはしないけれど、お腹を壊すとかあります。

発達障害の当事者の先程言ったリョーハムさんは、ご飯を食べに行った時に残すんですよ。「お腹いっぱいハム」と言って残すんですけど、残したものを持って帰っていいですかって言うんですねで。

この前カレーを食べに行った時に、チーズナンを頼んだんですよ。
カレーを僕らで食べに行って、チーズナンをプラスで頼んだんですね。

結構僕もハムちゃんも他の人たちももうおじさんおばさまなので、そんなに食べないですよね。自分の分だけでお腹いっぱいになってしまって、チーズナンがちょっと余ったんで、「持って帰るハム」といって持って帰ったんですけど。
お店の人はあまりいい顔しなかったですけど。

アルミホイルに包んで持って帰ると言って。止めたんですけど、持って帰ると言って持って帰ったんですね。そしたらですね、翌日にジャンパーのポケットの中に入ってるんですよ。

「それさ腐ってんじゃない?」「腐るからダメだよ?食べかけでしょう?しかも」と言って。「そんなの大丈夫ハム、益田ドクターは何もわかってない」「益田ドクターはお金持ちだから贅沢すぎるハム」とか言って食べてましたね。翌日の夕方ぐらいに。

「益田ドクターがそういうこと言うから食べたんですよ、本当はナンの気分じゃなかったのに」みたいな。何かそんなこと言ってましたけど。

そういうことがあったりします。

そういうことしていると、日常生活が困ったりとか体調悪くなったりとかして。

体調が悪くなって翌日の仕事に響いてとか、寝不足につながってとか、そういうちょっとの積み重ねが職場の人間関係を崩したりとか、仕事に追われるとか、自分のプライベートの時間がなくなっちゃうとかあったりします。

ほんのちょっと、30分、40分損するとか、本当にちょっとの損が積み重なると人生の失敗と言うと大げさですけれども、そういうことになるなとはいつも思っています。

実例というと、そんな感じですね。冷蔵庫がないからそうなると思うんですね。
でもまあ物がないと困ることはあると思うので、あったら楽なんですよ。

例えばガムテープだって使わないな、古くなりすぎちゃったなと思ってすぐ捨てちゃうのではなくて、あると意外2年前のガムテープでも重宝したりするとかありますよね。

だからほどほどに置いておくのは大事ですね。
極端なことはしない。

■依存度チェック

依存度チェックというのはどうやってチェックすればいいのかというと、基本的には白黒チェックと一緒です。

自分がどれぐらい柔軟な考え方ができるか、完璧主義じゃないかということをチェックしてあげるといいんじゃないかなと思いますん。

また買い直したことがあるとか、それがきっかけで日常や社会的な問題が起きているのであれば、起きることが1年に何回か起きているのであれば、捨ててしまったものがあるせいで困るのであれば、断捨離の依存症ということにもなるのかなという気はします。

かといって逆のパターンもあるんですよね。


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