見て、聞いて、生まれるもの
かけた櫛のような松林、取り残されたような更地。建物は海に向かうほど工場一色となっていき、生活の香りが薄れていく。そんな風景をタクシーの窓越しに眺めていた。
タクシーの運転手さんは、生まれも育ちも「この地」の人だった。仙台を走る地下鉄東西線の終点・荒井駅でタクシーを掴まえた私が、「目的地」を伝え、タクシーに乗っている十数分の間、ここで起こったことと今も続いていることについて、いろんな方面から教えてくれた。「せっかく来てくれたんだから、ここの話をしないと。取材で? 気にしなくて