躁うつ病(双極性障害)の薬物治療について解説します

双極性障害(躁うつ病)の薬物治療について解説してみようと思います。双極性障害人口の1〜2%、10代〜20代のうちに発症すると言われています。見つかるのは中高年になってからのことも多いです。

双極性障害は躁状態の時とうつ状態の時、再発予防の時で薬を変える必要があり薬物治療が難しいものです。また、躁が良くなったと思ったらうつ転したり、うつが良くなったと思ったら躁転したりしますし、入れ替わりが患者さんにとっても苦しく、変わるときは躁鬱混合状態といってどちらなのかわかりにくくなります。

双極性障害の人は良くなった時に悪かった時のことを忘れやすく、治療をやめてしまい再発するケースも多くあります。そのため、心理教育もすごく大事だと言われています。


<気分安定薬>

メインの3つを取り上げます。

リチウム:躁うつ病の基本はリチウムです。躁、うつ、予防のいずれにも効果があります。
バルプロ酸:躁状態によく効きます。うつへの効果は疑問がありますが、予防にも効きます。
ラモトリギン:躁は悪化させてしまう可能性がありますが、うつに効果があります。予防にも効果があります。

そのほかに、カルバマゼピンは躁には効きますが、うつには効きません。バルプロ酸に似ています。少し古い薬なのであまり使いません。

リチウムだけで良いのではと思われるかもしれませんが、リチウムだけだとパワーが弱いので、バルプロ酸やラモトリギンを追加したりします。

気分安定薬だけだとまだパワーが弱いことがあり、妊娠を考えている人にはリチウムやバルプロ酸は使いにくい面もあります。そういった場合は抗精神病薬をあわせます。


<抗精神病薬>

主な薬はこちらです。

クエチアピン:躁、うつ、予防のいずれにも効果があります。
オランザピン:躁、うつ、予防のいずれにも効果があります。
ルラシドン:最近発売された「ラツーダ」です。うつに効果があります。
リスペリドン、アリピプラゾール:リスペドンは躁と予防に効果があり、アリピプラゾールはうつに効果があります。

<代表的な副作用>

リチウム:手のふるえ(採血して血中濃度を測る)
バルプロ酸:アンモニア血しょう(採血して血中濃度を測る)
ラモトリギン:皮膚炎
クエチアピン、オランザピン:糖尿病

そのほか、抗精神病薬に共通する副作用としてパーキンソン症状などがあります。
バルプロ酸とラモトリギンを併用する場合、ラモトリギン単独で使う場合と増やし方などが違いますのでそのあたりも注意が必要です。

副作用が出た場合は薬を変えなければなりませんが、全員に出るわけはないのでその点はご安心ください。ただ、上記のような副作用が出やすいので、疑われる場合は主治医に相談してください。
リチウムの手の震えについては、躁うつが酷い場合は黙認して使うこともあります。


<よくある質問>

「うつがひどいのですが、抗うつ薬は使わないのですか?」
基本的に使用しません。抗うつ薬を使うと躁状態へのリスクが上がったり、ラピッドサイクリングといって躁とうつを急激に繰り返してしまうことがあります。ただ、うつが酷い場合は抗うつ薬を少しかませるといったこともします。

「ベンゾジアゼピン系は使わないのですか?」
躁うつ病の人は初期のうつがきつかったり寝られないこともあるので睡眠薬や抗不安薬をよく使います。リチウムや抗精神病薬は効果が出るまでに時間がかかるのですが、ベンゾ系は即効性があるので使うことも多いです。ただ、漫然投与はしないことが大事です。

「減薬はどうするのですか?」
急に止めることはしません。ラモトリギンは急に止めるとイライラが出ることもありますので、止めるときは少しずつ減らします。少しずつ減らす中で再発することもあるのでややこしいです。


躁うつ病の場合は個々の患者さんによって薬物治療のやり方は変わりやすいので、主治医の先生に相談しながら、こういう方針でこのような治療をしているのだなと理解していただければと思います。

《関連動画》
双極性障害(躁うつ病)について、症状から治療法まで全て説明します
https://youtu.be/FWvC0NXZ-zY

00:00 今日のテーマ
01:52 気分安定薬
03:30 抗精神病薬
04:25 副作用
06:26 よくある質問

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