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多分ソフト開発は、作曲に近い

すぎやまこういちという著名な作曲家がいるじゃないですか、彼はドラゴンクエストの序曲を5分で作ったというのは有名な話。でもその5分の作曲の中で彼の人生経験なり、作曲ノウハウが詰め込まれている。すぎやまさんはそれを人生+5分と表現します。

そして、その彼の序曲が5分でできたから作曲料は5分でいいよね、100円です。という客がいたら頭がおかしいということは誰でもわかりますね。しかし、それを当たり前のように主張している世界があるんです。そう、ソフトウェアの世界ですね。

日本人はハードウェア開発と工場で成功した体験が忘れられなかったので、ソフトウェアも工場のラインと同じ考えで作ろうとしました。でもソフトウェアは物理法則に縛られないので、ハードウェアより自由に色々できてしまいます。FF3を作った伝説的なプログラマは、ファミコンではありえない速度で飛空艇を動かしているらしいです。もはや魔法です。

しかしそれをなんとかハードウェアとか工場のノウハウにしたいと思った偉い人たちは、そういう創造性をルールで奪い、機械的にコードを書かせようとしました。お金は、人月で払いました。一人当たりが使った時間かけるいくら。遅れているプロジェクトには人を投入し、より遅れては怒りに震えていました。

複製可能で創造性豊かなソフトウェアを、同じく複製可能で創造性豊かな作曲と例えればこの理屈はすぐにおかしいとわかるのです。売れるコード進行、売れるメロディ、売れるアレンジ、色々ありますが、最後は人の感性が必要です。関ジャムに出ている、理論を抑えた著名な作曲家ですら、最後は魔法っていうぐらいですからね。

そして感性である以上、ルールで抑えるには限界があり、発想が湧かない人には何も湧きません。せいぜいできるのはすぎやまこういちの書いた譜面をコピーしたりパソコンに打ち込み直すことぐらいでしょう。3分で終わりますね。サカナクションのアルバムは延期して六年かかって出ましたが、スタッフを倍にしたら三年で出るでしょうか?BUMP OF CHICKENの藤原さんの書く歌詞を、分業して三人で書いたらシングルの発表サイクルが早くなるでしょうか?

むしろ邪魔ですね。

でも、それを僕たちは大真面目にやってきたのです。邪魔をし続けて、サカナクションのアルバムが出るまでさらに余計な時間をかけさせたり、クオリティをダダ下がりにさせてきたのです。山口一郎に「今日はメロディが思いつく期限の日だ、間に合わなかった理由を考察し再発防止しろ」とマネージャーが怒鳴り、さらに山口一郎の機嫌を損ねてクオリティを下げてきたのです。

残念ながら今はオープンソースという考え方が浸透し、こんなストレスとは無縁なGoogleの天才たちが楽しみながら作ったソースコードがいくらでも転がっています。音楽で言えば、素晴らしいループ素材も歌素材もそこらじゅうに転がっていて、創造性のない人達の出来ることは減り続けています。それを誤魔化すために、YouTubeに投稿したら再生数3ぐらいで止まるクソ曲をルールと分業を駆使し作り続けているのです。

このノートに書いているようなことは、人月の神話という本で1975年から叫ばれていることです。でも、2019年まで変わらずにきました。44年変わらなかった事が今更変わるとは思えないのです。30年ルールに従ってソフトウェア開発をしていた人には、もう創造性豊かに作曲する力はないのです。ある面では、諦めるしかないんだろうなと思います。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/人月の神話

僕はソフトウェア開発を創造性豊かなものに戻したいです。別に山口一郎でも藤原基央でもすぎやまこういちでもないけれど、それでもせめて、美学を持っていい曲を作ろうとしたいのです。かけた時間ではなく、再生数で評価されたいのです。向いてない人達は惰性でソフトウェア開発をし続けるのをやめて、向いている別の仕事をして欲しいのです。でも、終身雇用の惰性モードに入った今の会社にはまだまだ無理かもしれません。

せめて、創造性のない人達が創造性のないことを言って、このルールまみれの間違った開発の中にいてなお、なけなしの創造性を発揮しようとしてる人達の時間を奪わないことを、願っています。はっきり言います、あなたたちは邪魔です。すぎやまこういち先生にフォローメールを送るのをやめてください。お金は払うので家でポテトチップスを食べていてください。

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