【PTA回想録(9)】先生方への労いと感謝の気持ちを伝えるために

(前回)【PTA回想録(8)】「活動方針」づくりで考えたこと より続く..

私の会長生活は,活動方針・活動目標づくりから静かにスタートしました.この年のPTA総会は,感染症対策のために書面表決と少人数参加での対面形式の総会を組み合わせ,予定よりも2か月ほど延期して開催することになりました.当時の副会長や幹事の皆さんが話し合い,校長先生に総会での講演をお願いしたところ,校長先生が学校の経営方針や教育目標などについてお話しくださいました.校長先生のこのアイディアは,素晴らしいものでした.校長先生のお話を拝聴しながら,「毎年多数の保護者が出席するPTA総会で学校の経営や教育の方針について説明してもらうのは,非常に合理的で,来年以降もぜひ継続させたい」と思い,校長先生には賛辞と感謝を口頭でお伝えしました.

当時の校長先生とは,副会長の頃を含め,この時までに何度かお話しする機会がありました.その中で心に残ったのが,「保護者の皆さんに,学校に対する関心を持ってもらうことは重要です」「先生たちは子どもたちのためにがんばってくれているので,保護者から先生方に何かしらのレスポンスがあるとうれしいです」という言葉でした.私にとって共感できるものだったことをよく覚えています.

校長先生から「保護者の学校への関心」のお話を伺ったときに,私の頭に思い浮かんだのは,初めて授業参観に足を運んだ時の出来事でした.当時の私は,「授業参観はわが子の学校での様子を見に行くための学校行事」としか考えておらず,何気なくわが子の教室に向かいました.教室に行ってみると,同学年のクラスではどこも同じ「道徳」の授業のようでした.私はとっさに,「なぜ道徳なんだろう?」と思ったのです.そこからは,わが子のことは脇に置いて,クラスでの授業の様子や先生のお話を見聞きしながら,その理由をずっと考えていました.授業の内容は,対人関係やいじめを取り上げたものだったように記憶しています.それでたどりついた結論は,「授業参観は,保護者がわが子のパフォーマンスを見るためだけに実施されているのではなく,学校や先生が子どもたちの教育について保護者に伝える重要な機会でもある」ということでした.私たち保護者はわが子と同様に学校教育を受けてきたわけですが,教育の内容や方向性は時代とともに変化していきます.考えてみれば,変遷する学校教育のことを保護者がアップデートできる機会は,授業参観などのわが子の学校との関わりくらいしかないように思えます.この気づき以降,私は学校からの様々な印刷物に丁寧に目を通すことにしました.すると,学校から各家庭に提供される情報は,単に子どもの学業のことだけでなく,健康や栄養,体力向上,生活指導,特別支援教育や合理的配慮のことから,経済的な就学支援のことまで,「子どもの成長」を総合的に「教育」の面から支援するものであることに気がつきました.

当時,コロナ禍が長期化の様相を見せる中でも,学校や先生方は,子どもと家庭のために,「教育」のアプローチを続けてくださっていました.私たちが生活の中でCOVID-19の感染拡大に非常に神経質になることも多い一方で,先生方は感染症禍でも子どもたちと直接向き合い,時に距離を近づけて,いろいろなことを教育してくださっていました.それでも学校内では,大規模な感染拡大は起こりませんでした.それはすなわち,学校において適切な感染症対策が実施されているだけでなく,小学校の教職員がご家庭をはじめとして,あらゆる場面で体調管理に努め,感染リスクの高い行動を控え,感染拡大につながらないよう細心の注意のもとで日々を過ごしてきたことを意味します.「教職員は仕事だから当然」といえばそれまでかもしれませんが,教職員にもご家族がいらっしゃることを考えれば,ご家族も含めて,本当に頭が下がる思いでした.

そんな思いが錯綜するなかで,私は,先生方の教育者としての仕事を理解しようとしている大人が確実に存在していることと,先生方の日々のご苦労と緊張に対する労いと感謝の気持ちを伝えようと,夏休み直前に筆をとることにしたのです.

拝啓
思いがけずにあっけなく梅雨も終わり,今年も盛夏を迎えました.
校長先生はじめ,教職員の皆様におかれましては,平素より子どもたちの教育および本会の活動にご尽力を賜り,本会を代表して厚く御礼申し上げます.

本年度は,新学期開始直後に,市内で新型コロナウイルス感染症の感染拡大が発生しました.パンデミック発生から一年が経過し,「いつか起こること」と思っておりましたが,身近なところでの知らせに緊張感が走り,子どもたちの動揺も心配されるところでした.幸いなことに,学校内での感染拡大や保護者や児童の混乱もなく,速やかに日常の学校生活を取り戻せたことは,日頃より感染症の拡大防止に万全のご対応いただいた教職員の皆様のご尽力の賜物です.子どもたちに対し科学的知見に基づく正しい知識を授け,差別や偏見のない安全な学校生活を送るために日常ご指導・ご尽力いただいたことに対し,心より感謝申し上げます.

また,今年度は教育現場へのICT機器の導入が進み,家庭でも子どもの学びの中で情報端末を使う姿も見かけるようになりました.先生方におかれましては,授業研究から児童の情報リテラシーの指導まで,ご苦労が絶えないと推察しております.教育手段における100年に一度の技術革新の中で,先生方のご努力が水泡に帰することのないよう,子どもたちの教育に対し保護者として相応しい責任を果たしてまいります.今後ともご指導・ご鞭撻のほど,よろしくお願い申し上げます.

先日の学校評議員会では,子どもの個性を尊重する教育の実現のために,さまざまな教育活動を実践されている旨のご説明を受けました.昨年度,障がいを持つ方に対する合理的配慮に関する印刷物が配付されたのを目にして,わが子からも授業の話を聞き,私自身障がいのある妹をもつ身として,価値ある取り組みであると感じています.支援が必要な子どもたちに日々寄り添ってご指導いただいている皆様に対して感謝申し上げるとともに,啓発授業の実施が,保護者や子どもたちが社会的包摂の実現について考える機会となることを願っております.

ところで,この春より,偶然にもわが子が新採用の先生にご指導いただく機会に恵まれ,新しく迎えられた教育スタッフに対する学校・教育委員会による支援やサポートを知ることができました.組織的なサポートの中で,新任の先生が実力を発揮される様子を目にして,非常に心強く感じています.子どもたちが「働く大人が助け合って生きていく」ことや,「先生も学び成長を続ける」様子を学校の中で目にすることは,未来を担う子どもたちの力になると信じています.業務量が多く心身ともに消耗されていると推察いたしますが,子どもたちと教職員の皆様のチャレンジが実り多きものとなるよう,保護者の立場から見守り,できる限り支援して参りたいと考えております.

最後に,子どもたちの健康と成長を支える養護・栄養の先生をはじめ,司書の先生,ALT,事務系・技能系職員の皆様,地域教育コーディネーターの皆様にも,日々のご尽力に厚く御礼申し上げます.

教職員の皆様が,夏の暑さを健やかに過ごされることをお祈りしております.
                               敬具

学校教職員へのお礼のお手紙(一部改変しています)

このお礼状を会長名で出したことと,お礼状の内容は,小学校の当時の教職員の皆さんと,当時のPTA執行部の役員の皆さんくらいしか知らず,わが子の小学校の保護者の皆さんの大多数は,現在でも全く知らないと思います.当時を振り返ると,保護者が先生・学校を信頼して子どもたちの教育を「定点観測」し,その所感を先生・学校にフィードバックすることを通して,先生方や学校がその裁量の範囲内でより良い教育活動にチャレンジできるような空気や環境を作り出せたらいいな,と考えていたことを思い出します.

(次回 【PTA回想録(10)】「放課後の過ごし方」アンケートの思い出 へ続く...)


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