【UK Space Conference】英国の宇宙戦略の転換期？National space strategyと宇宙法改正の可能性
2023年11月21日から23日まで、北アイルランド・ベルファストにてUK Space Conference 2023が開催されました。UK Space Conference 2023は、英国の宇宙産業の業界団体であるUKspaceが主催するカンファレンスイベントです。ワープスペースからはCSOの森が参加し、トークセッションに登壇しました。
UK Space Conferenceの特徴としては、イギリス国内からの参加者が8割ほどとドメスティックな傾向が強く、それ故か、発表内容も安全保障や防衛に関するものが多くありました。グローバルな企業も散見されましたが、それらもThales Alenia Space社のような、英国に拠点を置く事業者です。今回の記事では、森がUK Space Conferenceにて見聞した中でも今後の英国の宇宙ビジネスに大きな影響を与えうる、英国の国家宇宙戦略の更新が2024年に行われる、というニュースについてお伝えします。
今回のUK Space Conferenceでは、2024年に英国の国家宇宙戦略であるNational space strategyが更新されると発表されました。2021年に発表されたNational space strategy(*1)は、英国政府のPolicy paperによると、最先端の研究を通じて次世代にインスピレーションを与え、宇宙科学技術における英国の競争力を維持するため、
1. 宇宙分野の成長を促進する
2. 宇宙分野において国際的に協力する
3. 英国を科学技術大国として成長させる
4. レジリエントな宇宙利用とサービスを開発する
の４つの柱を設定しています。この戦略は、これらの柱と、今後数年間の重点分野を指定する10項目の計画を通じて、宇宙における英国の民間および防衛における目標達成を目指しているようです。この更新に際して、
National space strategyの更新に合わせて、英国の宇宙法のひとつであるSpace Industry Actも追記される可能性は大きいだろう。
と森は語ります。ここで少し、宇宙法についてまとめてみます。
2018年、日本では、民間宇宙ベンチャー企業の発展に伴い、人工衛星等の打上げや管理に関する法律である、宇宙活動法が施行されました。この宇宙活動法は、「民間団体の宇宙活動は許可制とし、国による継続的監督を求める」宇宙条約（1967年調印）に対応する法律で、これにより、民間団体は国による承認があって初めて人工衛星を打上げ、運用できる、といった基本的な法整備がなされています。
これに遡ること30年、1986年。イギリスでは打上げや宇宙空間での活動にライセンス制を導入するOuter Space Act 1986が制定されました。そして、このOuter Space Actと連携する形で、2018年にはSpace Industry Act 2018(*2)、そしてSpace Industry Regulation 2021(*3)が施行されました。
特にSpace Industry Regulation 2021は当時の英国の宇宙戦略とともに発表しており、宇宙戦略をうまく反映していた内容だった
と森は述べます。
Space Industry ActはOuter Space Act と同様、多くの主要な宇宙活動へのライセンス制を義務付けていますが、専門家によると、その具体的な詳細までは規定しておらず、二次立法による後日の補強を前提とした法律です(*4)。したがって、この法律が英国内の宇宙業界、特に宇宙スタートアップ企業の宇宙へのアクセスをどのように促進し、宇宙産業の成長を促進するかについては慎重な議論が必要です。
そうした背景の中、英国政府の宇宙戦略の更新がアナウンスされました。こうした二次立法には宇宙活動への資金提供に関する英国政府の計画が反映されるため、EU離脱等の英国の政治的な現状が、どのように英国の宇宙産業に影響を与えうるのか、2024年の改正に注目です。
(*1 【GOV.UK】National space stratgy）
(*2 【参考：Space Industry Act 2018】）
(*3 【参考：Space Industry Regulation 2021】）
(*4 【参考： Northumbria University】The Space Industry Act 2018: Unlocking the UK space economy?）
（執筆：中澤淳一郎）
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