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Note of Warpspace ~序~


ワープスペースのnoteを始めるうえで、何を書くべきか。

この会社の創業から3年と2カ月、社外取締役としてJoinしてから3年、CEOになって9カ月。ワープスペースとしても、個人としても、様々なことにチャレンジし、経験し、時には成果を上げ、時には酷い失敗もしてきました。短くも長く、厳しくも楽しく、大きく立ちはだかる数多くの壁ともがき戦いながら、確かな希望を持って、私たちは歩んできました。
その歩みのなかから、私たちが大切にしているもの、見出したもの、信じているものをいくつかご紹介することを、このnoteの序文としたいと思います。


1. 宇宙はツールであってゴールではない

私たちも含めた宇宙スタートアップ、ひいては宇宙産業全体に言えることですが、私たちは宇宙という夢を売っているのではありません。月探査であれ、ロケットであれ、私たちが開発している通信衛星であれ、明らかに宇宙は何かを解決するため、何かを実現するためのツールでしかありません。

もちろん、私たちは宇宙に夢を持っています。おそらく、この産業で働く人はその他の誰よりも宇宙に対して強い憧れを持っているはずです。何しろ宇宙を仕事にしてしまっているのですから笑

ただ伝統的な宇宙産業は軍事的目的から切り離されるものではないですし、多くの宇宙スタートアップは何かしらの地上の課題を解決する目的を持っています。(中には軍事的価値が高いものも多くありますが)

私たちも衛星事業者に対して常時高速通信ネットワークを提供するために様々な開発をしていますが、これは明らかに今後拡大する宇宙空間利用のベースインフラを確立するという大きな目的があります。
宇宙を目指すだけの時代は、とうに過ぎ去りました。宇宙で何のために何を為すか。それが今の私たちにとってとても重要な問いなのです。


2. 常に私たちは後発である

ワープスペースは2016年に創業しました。ニュースペースのスタートアップとしては、特にグローバルにみて、かなり遅い部類です。ただ、私たちが後発であるということについて、必ずしもそれだけの意味ではありません。

私たちはまだ調達環境という意味で、日本のマーケットから出ていません。私たちに技術的優位性が今あったとしても、グローバルな巨人がその豊富な資金力で勝負をしてきたら、そんなものは軽く吹き飛んでしまうでしょう。

時間はすべての企業にとって平等ではありません。もし同じ条件のもと戦えば、資金力の多寡によって時の進みは明らかに違います。

そういう意味で私たちは常に後発であると認識し、例えば海外の巨人がイノベーションのジレンマにある間に、例えば彼らが気付く前に、圧倒的なスピードを持って先に進まなければならないのです。


3. 日本発の宇宙インフラが一番強くなりうる

これまで地球上の国際的なインフラは、ほぼすべて西欧のもとにありました。それが近年の中国の台頭によって、新しい時代のスタンダードが2分されようとしています。そして、東西冷戦ほど陣営が明確に分かれていない以上、市場の選択がいずれになったとしても、個別最適も全体最適も達成しづらい。しかも、ハンチントンの言う「地域大国」が次々と生まれている今の国際社会において、西欧ないし中国の傘に完全に依存することへのリスク感覚はあらゆるところで高まっています。

宇宙においては、つまり、西欧が敷いたインフラにすべての国が気持ちよく乗れるのか?中国のそれにはどうか?という問いが生まれます。答えは明確にNoです。
そんな状況のなかで日本の宇宙スタートアップが果たせる役割はかなり大きいはずです。つまり、良くも悪くも、少なくとも表面上は専守防衛を貫き、宇宙開発の軍事利用を極力避けてきた(そしてこれからも避けざるを得ないだろう)日本は、多軸的な世界になった国際社会にとって、相乗り可能な非常に都合の良い存在になりつつあります。

それは宇宙スタートアップについても同様です。ワープスペースも非軍事利用に限り、出来るだけすべての国に宇宙空間通信インフラの門戸を開けていこうと考えています。


4. 瞬間最大風速より巡航速度の最大化


他のDeep Tech スタートアップ同様、宇宙スタートアップも比較的長いタイムスパンの中で事業を考えていかなければなりません。だからこそ、いつか息切れするような働き方、時間の使い方は絶対にしてはいけません。

しかも、宇宙に一度上がってしまえば、webサービスのように、デバッグなんてそんな簡単にできません。もちろん前提として宇宙スタートアップであっても、考えるより動け、ですし、スピード重視ではあります。ただ、打ち上げ後の後戻りがほぼ不可能な以上、スピードの中でも一つ一つ成功確率を上げるために丁寧な仕事が求められます。
そんななかで、月月火水木金金みたいな動き方をしていたら、いつか破綻するに決まっています。私たちは持続可能な働き方や組織を追求する必要があるのです。

※ワープスペースでは、フレックスはもちろん曜日を土日に限定しない週休2日制、リゾートワーク制度をスタートさせています。


5. ユーザーが見えない場所に大きな可能性がある

宇宙新産業は、今拡大を続けています。それは市場価値的な意味でも、地理的な意味でもです。

私たちは今、一つの軸として、アフリカにおける宇宙新産業の創出について取り組んでいますが、この10年、中国やインドで起きたことが、今後10年アフリカで起きないとどうして言えるでしょうか。

ユーザーが今は見えないが、今後確実に出てくるだろう場所に張り、むしろユーザーを作りにいくことで、私たちの可能性を最大化させます。


6. 現実的な思考はむしろ現実を見ていない。目を背けて逃げているだけ。

「現実的に考える」という前に、そもそも現実的な思考とは何なのか。現実を余すところなく正しく把握した上で物事を考えることが一人間に可能なのか?という問いを常に持つ必要があります。

あるかもしれない機会を諦めたり、リスクを過剰に恐れたり、それ以上方法を考えることが無駄に思えたりするときに、時として人は現実的に考えたがります。
実現したい未来があるのなら、そこに行き着くまでの機会や可能性や手法を諦めてはいけません。それが本当の「現実をみる」ということです。


7. 人間は頭で動かない。エモーションで動く。

ビジネス上の意思決定が常に人の頭で起こっているとは限りません。同じ提案内容であったとしても、そこに感情がどう乗っかっているかで、人の判断は変わります。エモーショナルな部分に働きかけることが出来なければ、人を動かすことはできません。

それに、みんなが現実的に、合理的に考えていたら、誰もスタートアップなんてやらないし(イントレプレナーも含む)、投資だってしないでしょう。


8. 学生の力、ハンパないって

テクノロジーや世代の更新がかなり早く回っている今、多くの事柄について、年齢は関係なくなっています。

その点だけでもそうですが、やる気のある学生はホントにすごいです。彼らがいなければ、今のワープスペースはありません。

9. Twitterの力、ハンパないって

宇宙、超小型衛星、というのがパワーワードだから、なんだとは思いますが、それにしても、例えば求人的なツイートすれば、瞬く間に応募を頂けます。

Twitterすげぇです。毎回思い知らされます。

最後は極めて個人的な感情。


10. 失われた30年を覆す

私は1988年に生まれました。それからというものの、20歳になれば「失われた20年世代」と呼ばれ、30になったらなったで「失われた30年世代」とよく分からないレッテルを貼られる。
もうたくさんです。
失ったのは誰か?

決して僕らの世代ではない。

過去の価値観からしてみれば、いろいろノスタルジーな感傷はあるかもしれないが、それは僕らの価値観ではない。

僕らは常に得続けてきた。
勝手に「可哀想な世代」にするな。
未来は私たちが創る。

次の10年後は「失われた40年」とは決して言わせない。


11. 魂が震える方へ

これまでどんなに辛くても、しんどくても、最終的には魂の震える方へ何とか帆を進めてきました。それぞれの選択に全く後悔はありません。
これからも同じように選び、生きていきます。

ワープスペース CEO 常間地 悟

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