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lahainanoon
定型。
いっろんなものに『定型』は存在する。
俳句の五七五や小説の起承転結なんかがいい例だ。
でも、その定型が人間にも存在するということを知っていると言う人は、実はあんまり存在していない。
はじめまして、私の名前はサラ。
色んな人の定型を見てきた、その道の専門家。
今日もまた、私は人の定型について見ていく。
私が路上の一角に立っていると、一人の男性が近づいてきた。
「……こんなところで一人かい、子猫ちゃん? 暇なら、俺の家についてきちゃいなよ!」
私は微笑んだ。
ありきたりな『定型』パターンだ。
美人な女性と見るや否や、所かまわずナンパをしかけてくる男。
私は微笑を浮かべたまま、こういった。
「微笑んでばっかりいないで、一緒についてきちゃいなよ!」
「『微笑んでばっかりいないで、一緒についてきちゃいなよ』……」
私と彼の声が重なり、
彼は驚きの悲鳴を上げた。
私は微笑を浮かべたまま、黙って彼を見る。
彼はそんな私を不気味に思ったのか、走り去ってしまった。
このように、定型を知っているととても便利だ。
理由は言わずもがな、人の行動を事前に察知できるから。
しかし、そんな私にも一つだけ悩みがあった。
それは、「自分の定型を知ってしまっている」ということだ。
他人の定型がわかるのだから当然、自分自身の定型は誰よりも把握しつくしている。
つまり、言葉の一つ一つに対して自分がどのようにリアクションするか、知ってしまっているのだ。
これほどつまらないことがあるだろうか。
いいなぁ、普通の人は、人生楽しそうで。
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