「逃げる、固まる、それとも繋がる?」—神経系が導く3つの対処法
私たちがストレスや危機に直面したとき、体は瞬時に反応します。これは生物としての生存本能に根ざしており、脳と神経系が自動的に作動して、私たちを守ろうとします。通常、この対処には3つのパターンがあり、それぞれ異なる神経やホルモンが関与しています。
1つ目は「逃げる」か「戦う」(fight/flight)という反応です。2つ目は「固まる」(freeze)という無力感を伴う状態。そして3つ目は、他者との繋がりを求める「コミュニケーション」(social engagement)です。これらの反応はすべて、自律神経系がコントロールしています。特に背側迷走神経系(dorsal vagal complex)や交感神経、副交感神経が、どの反応が起こるかを決定します。
1. 逃げるか、戦う—交感神経系の働き
「逃げるか、戦う」は、私たちが緊急事態に置かれたときに最も知られている反応です。危険を感じると、交感神経が活性化し、体は「戦う」か「逃げる」準備をします。このとき、アドレナリンやノルアドレナリンなどのストレスホルモンが分泌され、心拍数や血圧が上昇し、筋肉にエネルギーが供給されます。身体的には、私たちは即座に動ける状態になります。この反応は、原始的な時代には、肉食動物から逃げたり、敵と戦ったりするために必要不可欠でした。
現代社会では、実際の肉体的な危険に直面することは少なくなりましたが、脳は職場のストレスや人間関係のトラブルにも同じように反応します。問題は、これが慢性化すると体への負担が増え、健康に悪影響を与えることです。交感神経が常に活性化された状態が続くと、ストレスホルモンが過剰に分泌され、疲労感や不安感が増し、免疫力も低下します。
2. 固まる—背側迷走神経の影響
「固まる」という反応は、あまり注目されることが少ないかもしれませんが、非常に重要です。極度の恐怖やショックを受けたとき、私たちは動くことができなくなることがあります。これは、背側迷走神経系が過剰に働くことによって引き起こされる反応です。動物の世界では、捕食者に捕まった際に死んだふりをして、攻撃を免れるための戦略として知られています。
人間においても、同じメカニズムが働きます。特にトラウマ的な出来事に直面したとき、体がフリーズし、無力感や解離感を感じることがあります。背側迷走神経が関与するこの反応は、心と体を守るための最終的な防御機能ですが、長引くと感情的な麻痺や、うつ状態に陥ることがあります。
3. 繋がる—社会的なつながりを通じた対処
「繋がる」反応は、他者とのコミュニケーションを通じて状況に対処する方法です。これは副交感神経系のうち、腹側迷走神経(ventral vagal complex)によって調整されます。この神経系は、他者との親密さや共感、信頼を感じさせる役割を果たし、オキシトシンと呼ばれる「愛情ホルモン」が分泌されることも関係しています。
この反応は、私たちが危機的状況にあるとき、他者と協力して問題を解決しようとする社会的な本能に基づいています。家族や友人と話すことで心が落ち着き、共感を得ることでストレスが軽減されます。また、職場やコミュニティでも、良好な人間関係を築くことは、ストレス管理において非常に有効です。心地よいコミュニケーションは、腹側迷走神経を活性化し、私たちを安心させます。
まとめ
私たちの体と心は、ストレスや危機に直面したときに自動的に反応します。逃げるか、固まるか、それとも繋がるかは、脳と神経系の働きによって決まります。大切なのは、これらの反応を理解し、自分がどのパターンに陥りやすいのかを認識することです。
その上で、意識的に社会的なつながりを求めたり、リラクゼーションを取り入れることで、自律神経系をバランスよく整え、ストレスに対処する方法を選ぶことができるのです。
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