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雨風太陽 × WARC|利益を生みながら社会課題の解決も目指す。インパクトIPOの背景とこれからの展望に迫る

2023年12月18日に東京証券取引所グロース市場に上場を果たした株式会社雨風太陽(以下「雨風太陽」)は、生産者と消費者をつなぐ産直アプリの運営や都市部の親子を対象とした地方留学事業などを行っています。

今回は、「都市と地方をかきまぜる」をミッションに掲げ、都市と地方の分断という社会課題に取り組む雨風太陽の代表取締役である高橋 博之氏と、取締役コーポレート部門長の相澤 まどか氏をお迎えし、創業からインパクトIPO(※)に至るまでの想いやこれからの展望と併せて、株式会社WARC(以下「WARC」)の支援についてもお話を伺いました。

ホストは、雨風太陽の上場にあたり上場準備支援をメインに伴走してきたWARCの代表取締役社長である山本 彰彦と、IPO支援チームの中山 周一郎、高橋 侑也です。

※インパクトIPOとは
①ポジティブなインパクトの創出を意図している企業が、インパクトの測定およびそのマネジメント(Impact Measurement & Management, IMM)を適切に実施していることを示しながら、IPOを実現すること。さらに、②IPOに際して、インパクトの追求とIMMを継続的に実施できるよう、当該企業を取り巻くステイクホルダーに対して、インパクトおよびIMMの状況を説明し、インパクト志向の資金提供者からの資金調達をめざすことで、企業価値の向上を図ることである。

(一般財団法人 社会変革推進財団 インパクトIPO実現・普及に向けた基礎調査より)

プロフィール

【ゲストスピーカー】

高橋 博之氏
株式会社雨風太陽 / 代表取締役

1974年、岩手県花巻市生まれ。青山学院大卒。代議士秘書等を経て、2006年岩手県議会議員に初当選。翌年の選挙では2期連続のトップ当選。震災後、復興の最前線に立つため岩手県知事選に出馬するも次点で落選、政界引退。2013年NPO法人東北開墾を立ち上げ、地方の生産者と都市の消費者をつなぐ、世界初の食べもの付き情報誌「東北食べる通信」を創刊し、編集長に就任。2015年株式会社KAKAXI(現 雨風太陽)設立、代表取締役に就任。

相澤 まどか氏
株式会社雨風太陽 / 取締役 コーポレート部門長

1979年、神奈川県生まれ。慶応義塾大学卒業後、2003年新日本監査法人(現EY新日本有限責任監査法人)入社、大手外資系小売業をメインとし他多数の企業の監査に従事。2006年公認会計士試験合格。2011年株式会社ファーストリテイリング入社。日本事業経理を経て香港市場上場プロジェクト終了後、オーストラリア事業の開始に伴い経理財務責任者として赴任。2016年ソニーグループ株式会社入社。2022年雨風太陽取締役就任。

【ホストスピーカー】

山本 彰彦
株式会社WARC / 代表取締役社長

中山 周一郎
株式会社WARC / ディレクター 兼 IPOユニット責任者

高橋 侑也
株式会社WARC / マネジャー



ミッションは「都市と地方をかきまぜる」。都市と地方の分断という社会課題の解決を目指して

山本:
高橋さん、相澤さん、本日はお時間いただきありがとうございます。改めて、上場おめでとうございます!今日は色々とお話を聞かせてください。まずは、雨風太陽の事業と強みを教えてください!

高橋さん:
ありがとうございます!

私たちは、全国の農家さんや漁師さんから新鮮な旬の食材を直接購入できるポケットマルシェ(以下、「ポケマル」)というアプリの運営をはじめ、ふるさと納税、フルーツの定期便をはじめとするサブスクサービスなど、生産者と消費者をつなぐ食材系サービスを主に展開しています。

「都市と地方をかきまぜる」というミッションがベースにあるため、ほかにも旅行系のサービスや、生産者支援、販路拡大に取り組む自治体支援などにも取り組んでいます。

当社の最大のアセットは、北海道から沖縄まで全国に7,900人いらっしゃる提携生産者の方々であり、彼らが成長の核と言えます。今後10,000人、20,000人と仲間を増やしていくことが成長の軸になります。

山本:
ありがとうございます。
続いて、「都市と地方をかきまぜる」が貴社のミッションになっていますが、どういった課題感をお持ちなのでしょうか?

高橋さん:
消費者と生産者、都市と地方の距離が遠く、バリューチェーンが間延びしていることが課題だと考えています。それを当社のサービスによって繋げ、バリューサイクルとしていくことを目指しています。

例えば、ポケマルを利用することで生産者の価値に共感した都市住民が、「もう一回この人から買おう」「この地域に行ってみよう」と思っていただければ、地方の価値を守り育てる仲間になってくれます。ポケマルユーザーの中にはずっと同じ「推し生産者」から買ってくださる方も多くいて、売上の25%は予約販売や定期販売です。

山本:
スーパーでも生産者の顔写真が貼られていたりすると、消費者目線で安心感はありますが、直接繋がっているわけではないですよね。そこから一歩踏み込んで「推し生産者」というのはとても面白い考え方だと感じます。

課題解決のスピードをあげるために株式会社化。さらに仲間を集めるために上場へ

山本:
続いて、会社の成り立ちからIPOを目指された背景について、お話しいただけますでしょうか?

高橋さん:
当社はもともとNPO法人としてスタートし、その後に株式会社化しています。NPOは仲間を増やすために始め、理念に共感した人が会員として集まってくれましたが、スピードや資金力に限界がありました。

当時、生産者の紹介を目的に「東北食べる通信」という情報誌を発行していましたが、取り上げることができるのは1か月に1人です。頻度も月に1回なので、年間を通して発行しても12人、読者も1,500人程度。NPOの資金力ではこれが限界でした。

取り組みをさらにスケールさせ課題解決のスピードをあげるために株式会社化し、資金を集め、同じことをアプリを開発して展開したところ、この7年で登録生産者は8,000人近くまで増え、ユーザーは70万人にもなりました。

けれども、地方は集落の維持管理もままならない状態で、このままでは存続できない。スピードをもっとあげる必要があると感じていました。

株式会社となることで、理念に共感した事業会社が株主となってくれましたが、ある程度大きい会社しか出資できず、農家や漁師といった生産者は入り込めません。そこで、上場を目指すことにしました。

このミッションを果たすためには共感してくれる多くの仲間が必要であり、私は船長として仲間を増やしていきたい。上場すれば農家や漁師の皆さんも投資家として出資いただくことができるため、仲間集めの大きな手段として有効だと考えました。

山本:
上場について、生産者の反応はありましたか?

高橋さん:
上場が承認された翌日、新聞報道をみた岩手の漁師さんからすぐ「株を買いたい」と連絡がきました。それ以降も、応援したいから株主になりたいとおっしゃってくださる生産者から数多く連絡をいただきました。
これからも日本中を飛び回って、地方を存続させたいと思っている方々に呼び掛け、仲間を増やしていきたいです。

中山:
NPOとして創業した企業によるインパクトIPOは国内初ですが、貴社は「関係人口の創出」をインパクトとして捉えていらっしゃいますね。

高橋さん:
「関係人口」とは、地域と多様に関わる人々を指す言葉で、私が考案した概念です。

2050年には日本の人口は1億人まで減少すると言われています。いまから2,000万人以上が減るわけですが、その減少は主に地方で起きると考えられ、そうなると地方は存続が難しくなります。

ですが、1億人の20%にあたる2,000万人が住民票を2つ〜3つもって拠点を往来する生活をしていれば、社会の活力を維持できるし、地方も存続できると考えています。

首都圏で生まれ育って地方に関わりがない人が増えていますが、地方には自然や食べ物、子供たちの体験の場など、都会では得難い価値があると思っています。
それらを私たちが提供することで関わりを持ち、そして行ってみてほしいんです。

都市と地方、どちらかを選べといったら都市を選ぶ人が圧倒的多数でしょう。けれどそうではなく、どっちも選ぼうよ、もっと柔軟に生きようよ、ということを訴えたいです。

この考え方が浸透すれば、「1億総生活デザイナー時代」の到来です。
1つしか拠点がなければと選択の幅は狭いですが、複数拠点があれば選択の幅が広がって、自分で自由に生活をデザインできます。
いつどこでだれと、食事や労働、子育てをして、余暇を過ごすのかを選択し、生活の質をあげることができれば経済の質も変わると思っています。

余暇の過ごし方として、みなさん楽しいことであれば課金して時間を使っていますよね。
そういう「可処分時間の取り合い」という観点では、当社の競合はゲーム会社やマッチングアプリ運営会社と捉えています。

山本:
関係人口を増やすことで社会にポジティブなインパクトを与えていくということですね。
一方で、上場は貴社の経営にとってどのようなインパクトがあるとお考えでしょうか。

高橋さん:
上場によって会社は社会性と経済性の両面で圧力に晒されることになります。都市と地方の関係性を生み出してくれという社会的な期待と、ちゃんと儲かってくれという経済的な期待です。

NPO法人であれば「社会的な期待を果たせば別に儲からなくてもよい」と寄付者は考えるかもしれませんが、それではいずれ存続できなくなるかもしれない。地域を存続させると言っている我々自身が存続できなかったら本末転倒です。
一方で、経済性だけを追求すると、理念であるはずの社会的存在意義がなくなってしまう。

だからこそ両方を掲げ、追求する。そういった意味で上場によって生まれる期待にしっかり応えていきたいと思っています。

上場準備に入るも課題は山積み。一丸となって取り組んだ、WARCの伴走型支援について

高橋(侑):
相澤さんは上場準備責任者としてIPOに邁進されていらっしゃいましたが、上場までの課題や上場準備での苦労などお聞かせいただけますか?

相澤さん:
私は2022年の5月に入社したのですが、当時既に上場準備は始まっていました。人の入れ替わりのタイミングであり、管理部門も課題が山積みで、火中の栗を拾う感じでした。

山本:
我々も多くのクライアントの上場支援をしてきましたが、上場準備がスムーズに進むケースはほとんどない印象です。

高橋さん:
上場準備をしていく中で、先述した「社会性と経済性の両立」への共感を得るのに非常に苦労しました。
例えば全社員が集まる場でも、従来はエモーショナルな領域は私が、実務的なところは別の取締役が話していたのですが、2年程前からは実務や数字のところも私自身で発信するようにしました。

中山:
上場を目指す中で、それまでと変わるところは多少なりとも出てきますよね。中長期的な方向性や成長のための戦略などの浸透についてはどこの企業も苦労されている印象です。

山本:
実務面でのご苦労はありましたか?

相澤さん:
社内の体制として、経理や開示など広い範囲で少しずつ弱いところがありました。私自身のことを言うと、上場準備の経験がなかったことと、上場準備途中での入社だったため過去の経緯が分からない、というのが個人的に困ったところでした。
その点、WARCさんは上場準備スタート当初から支援してくださっていて過去のこともよく把握されているし、もちろんIPOコンサルのプロフェッショナルでもあるので本当に助かりました。

高橋さん:
WARCさんは強力な助っ人でした。相澤さんは顔をあわせるたびに「あれが大変」「これが大変」と相談してくれていましたが、WARCさんが関わってくれたところについては大変という話は出てきませんでした。相澤さんの負担軽減に力添えいただいたのだろうと思っています。

相澤さん:
ご自身もCFOとしてIPO経験がある山本さん、中山さんを始め、WARCの皆さんは事業理解が深く、IPO支援のご経験も豊富で、とても頼りになりました。
また、いつ何を相談してもすぐに対応してくれるというのは本当にありがたかったです。申請日前や開示書類の校了前など、どうしても夜遅くに連絡をしてしまうこともあったのですが、タイムリーに助けてくださいました。

高橋(侑):
終盤はかなりタイトでしたよね。監査役も交えてみんなで解決に向けて調べて協議してと奮闘した時間はいい思い出です。

高橋さん:
経営者の立場から言うと、上場準備中でも経営は立ち止まっていられないし、ずっと走り続けている中、いきなり上場のためのタスクを全部は整理できないんですよ。自分達でなんて尚更です。
その中で、WARCさんは管理部の弱いところをピンポイントで、継続的に伴走してくれました。本当に感謝感謝です。

山本:
私たちは、単にディレクションするのではなく、当事者意識を持って伴走型の支援をすることを理念としているので、そう言っていただけると本当に嬉しいです。ありがとうございます!
IRやM&Aの支援もしておりますので、上場後も是非貴社の成長のお手伝いができればと思っています。
最後に、今後の展望や意気込みなどあればお聞かせいただけますか?

インパクトIPOの先駆けとして「道なき道を進む」

高橋さん:
責任重大だと思っています。社会性と経済性を両立するというのは、今の社会では残念ながら多くの方が、理解はできるけどキレイごとだ、と思っているのではないかと。
ですが、今回の上場を機に多くの若い起業家から、勇気をもらったとのメッセージをいただきました。

株主、ステークホルダーと丁寧にコミュニケーションを取りながら、両立できることを証明したいです。そうすれば私たちの後に続く人が出てくる。最初は一本道でもそれが徐々に広がって、いつか社会の当たり前になるはずだと信じています。

これまでは過疎の問題や地域振興は国や自治体が税金という形を通じて取り組んできましたが、これからは私たちのような民間企業への出資を通じて、自分達で課題解決するという道があってもいいと思うんです。
社会課題というのは、裏を返せばみんなが求めていることであって、だからこそ公共だけではなくビジネスでも解決できるはずです。先陣を切るのは大変ですし、これからも苦労するでしょう。けれど、「道なき道を進む」のが私達の使命だと思っています。

山本:
都市と地方の分断という社会課題を解決するリーディングカンパニーである雨風太陽さんの今後に注目ですね。WARCもその一助となれるよう、引き続きご支援させていただきます!
高橋さん、相澤さん、ありがとうございました!

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