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積読を消化するための武器「本は最初の三行が命」という教え

学生時代、作家を目指していた。
文学部に行って、創作を学んだ。
現役の作家でもあった教授が、一発目の授業で一枚の紙を配った。そこには、あらゆる小説の最初の三行が印刷されていた。
「ものを書く人間ならば、最初の三行がどれだけ大事かよく知っておけ。たった三行で、この先何が起こるのか匂わせなければならない。それがいかに難しいか、書くことを続けていれば分かるようになるだろう。導入部に力を注げないような作家の本は読むに値しない」
そう言って、教授は黒板に「最初の三行が命」と殴り書きした。


それからX年。私は図書館で働いている。
司書という職業柄、日々たくさんの本に囲まれている。
本の渦に飲まれている、と言ってもいいかもしれない。
毎週入ってくる新刊の内容を、大体は把握して置かなければレファレンス業務に支障がでる。
ジャンル、大まかなストーリー、シリーズ名、余裕があれば登場人物の名前。
図書館流通センターから送られてくる「新刊案内」を読んで済ますこともあるけれど、曲がりなりにもプロだから、しっかり本と向き合っておきたい。
なので、読む。毎日読む。

休日は本屋へ行く。そして買う。
(・・・だって好きなんだもの。手元に置いて置きたい本がいっぱいあるんだもの)
当然、キャパシティーを超える。読む時間が足りない!!!
机に積読の城が出来てゆく・・・。
その荘厳な城を眺めているのは楽しいけれど、読み崩していかないと次の本が買えない。さて、どこから読もうかなあ・・・。

そんな時、学生時代の教授の声が聞こえてくる。
小説は、最初の三行が命」。
あの時の教授は、最初の三行で巧いか下手かを見極めろ、みたいな意味で言ったんだと思う。私も当時はそういう勉強をしていた。
しかし、今、その教えがちょっと違う風に役立っている。
積読の中から一冊、適当に抜き取って最初の三行を読む。
ふーむ、はあ、なるほど。んー、いや、今は君じゃないなあ。
どれどれ、君はどうかな? ・・・むむっ、ぐっ、ああっ!!!
これこれ、これだよ、今の私に必要なのは!!!!
よし、今日から君を読むことにするぞ! よろしくな!!
最初の三行がグッと来た場合、それは自分の心が求めているものなのだと気が付いたのだ。そうして選んだ本は、私の心の中にしっかりと根差す。

教授、ありがとうございます。あなたの教えてくれた「三行が命」、積読消化のための非常に心強い武器になっています。

もしも、積読の海に溺れているならば、「三行ルール」おススメですぞ。



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最後までお付き合いいただきありがとうございます。 新しい本との出会いのきっかけになれればいいな。