モノマネにみる日本人の「個」の統一

ひと昔前まで、モノマネといえば有名人・芸能人を真似ることがほとんどであった。コロッケが美川憲一、原口あきまさが明石家さんまを真似るなど、いわゆる大御所と呼ばれる人物を誇張して表現することが流行していた。

もちろん、それらは現在も多数存在するが、一方でここ最近のSNSを見ていると、不特定の一般人を真似るお笑い芸人が急増したように思う。たとえば、おたまじゃくし・中西は【今日の一変化】と称して、「昼休憩に近所の定食屋行くサラリーマン」や「全くやる気ない田舎のコンビニ店員」などに外見を似せた写真をTwitterに投稿している。また、やさしいズ・タイやLOVE・たつろうは、日常で起こり得そうな場面を真似し、その動画をInstagramにあげている。これらは、誰とは名指しで言えないが、誰もが「どこかで見たことあるような気がする人」を表現している。

不特定の一般人のモノマネに対し共感性があるということは、それだけ似たような人が多く、アイデンティティが形成されているということだ。そして、このようなモノマネで笑いが生まれるようになったのは、ファストファッションが原因のひとつではないかと思う。

日本発祥のファストファッション・ユニクロは、2000年代頭にフリースが大売れし、2006年には新ブランドとなるGUを誕生させた。また、2008年にはH&M、翌年にFOREVER21は日本初出店するなど、海外ブランドも多く進出するようになった。このころから日本人のファッションの均一化が取り沙汰されるようになる。昨今ではこれらによる大量生産・消費やデザイン性の類似が指摘され、ファストファッションも終焉しつつあるとされている。

しかし、ファストファッションが地位を確立したこの約20年間で、日本人の個は統一され、不特定の無個性というモノマネを大衆が共感できるようになってしまった。(もちろん、モノマネはファッション=外見を寄せることがすべてではないがその比重は大きい。)

このことが顕著に表れているのが、2018年に終了したバラエティ番組『とんねるずのみなさんのおかげでした』内で放送されていた『博士と助手~細かすぎて伝わらないモノマネ選手権~』だ。24回(うち1回は番組終了後に放送された特番)の放送で、優勝者がモノマネした人物は、特定の有名人が13人、不特定の一般人が11人である。ここで特筆すべきは、回を重ねるに連れて不特定の一般人のモノマネが多くなるということだ(図1)。
つまり、細かすぎて伝わらないと思われていたものが、徐々に細かすぎるが共感できるあるあるに変化したといえる。

私たちは、今しがたファストファッションによる弊害に気がつき、改善を試み始めた。
しかし、日本人の個は疾うに均一化しており、特別な個性がないことがアイデンティティとして確立されてしまったのだろう。
私たちはがそれぞれの個を取り戻すには、失ったのと同じくらいの年月、もしくはそれ以上の時間が必要になるかもしれない。


※備忘録としての文章のため、リサーチが十分ではありません。
※2019/02/25 修正


(図1)


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