あじさい、がらん:0135
顔と同じくらい大きな花を鋏で落として、両腕いっぱいに抱いて縁側に戻る。紫陽花は香りで名高い花ではないが、においはある。
鼻を近づけて花に顔を埋めると、蜘蛛や小さな虫がこわごわとこちらを見返している。
香りで集まらない虫達の、梅雨をしのぐ住処だ。
借宿のような、よそよそしいおうちの匂いがする。
雨は止んで、もう夏だ。虫達は、紫陽花の下から少しずつ旅立っていく。
がらんとした紫陽花が、俺のうちで過ごしている。
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