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映画:チャップリンの冒険の味わい 【カルピス】:0009

 カルピスといえば、子どもの頃に飲んだ懐かしい味ですね。と書き出したものの、実は私は、子ども時代にカルピスを飲んだことが全くありません。
 両親はもちろん、地元の友人のご家族も、不思議とカルピスをジュースとして出してもらえなかったのです。
 もしかしたら私達の親世代は、「飲み物といえばカルピス」みたいな時代を送ってきた為にカルピスには飽き飽きしていたのかもしれない。
 ともあれ、子ども時代に一度も飲み食いする機会がないものは大人になってからも中々飲む機会がなく、初めて飲んだのはなんともはや成人してからでした。一人で外食をしている時のドリンクバーのカルピスだったかと思います。

 しかしやはり、言葉の刷り込みとは凄まじいもので、大人になってから初めて飲んだカルピスであっても、口に含んだ瞬間、童心に返ったような無性にはしゃぎたい気持ちが沸き起こりました。
そしてそれは、チャップリンの「冒険」を初めて観た頃の記憶と不思議と繋がったのでした。

「冒険」は1917年に公開された短編映画。
チャップリン扮する脱獄囚が監獄島から逃げ出し、海を泳いでいたところに溺れている女性を助けます。女性を助けた事で屋敷に招かれるものの、そこはチャップリンを監獄に送った判事の屋敷でした。囚人だとバレないように嘘をつくも、疑われ、追いかけられて…。

ストーリーはあっさりしていて、小ネタ満載のドタバタ喜劇。鋭い風刺の要素は少なく、シンプルにコメディを楽しめます。

 「冒険」は私が初めて見たサイレント映画でした。10歳くらいに東京の大きな図書館で、サイレント映画の特別イベントがあったのをたまたま観たように記憶しています。

画面の中をちょこまかちょこまか、縦横無尽に小男が駆け巡り、立ちはだかる大男や警官を小狡い手を使ってかいくぐる。
 私は前ならえではいつも一番前で両手を腰に当てていたので、小柄な人が大男達をおちょくるのは胸がスカッとしました。
 途中から流れる音楽の中に手拍子が入るシーンでは、一緒になって手を叩いてチャップリンの次の動きにワクワクしました。

 そのイベントからしばらくして、チャップリンを本格的に好きになって「冒険」に再会しました。この映画は、自分が生きていてうまく笑えない時期が来る度に観ています。

 ただ、今改めて見返すとシンプルな喜劇と思っていた「冒険」のチャップリンも中々ブラックなんですね。
船長と嘘をついて邸宅のパーティに参加するのですが、給仕の差し出すお酒を瓶ごと飲んだり、気に食わない相手が後ろを向いた瞬間尻を蹴飛ばしたり。上流階級の人々の中で、マナーの悪さが浮き彫りになって、ヒロインのエドナも段々疑いだす。その顔色の変化にチャップリンも笑って取り繕うとするも、溝は最後まで埋まらない。
 楽しいコメディの中にも、切なさと奥深さが広がります。

 子どもの頃はただ無邪気に笑って味わっていたけれども、大人になってからも飲み方のバリエーションで新たな探究ができ、それでも猶、観るたびに初めて観た頃の気持ちにリセットできる。そんなカルピスのような味わいの映画です。

ヘッダー画像を描くにあたって、カルピスのデザインを調べたところ、とても面白い記事を参考にできました。

【水玉の配置は「夜空で輝く星は自然のものだからランダムに。だけど密度はほぼ一定に」というルールがあり…】(引用↓)
こちらにより水玉模様を描いてみましたが、密度を一定にしながら点を品よく打つのはかなりむつかしい。
描いたからこそ、デザインの良さも分かりました。

こちらのURLから読むことができます。是非ご覧ください。
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO23699010Q7A121C1000000/

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