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絵本:もりへさがしにの味わい 『キャンプに行った森の空気』:0007

私の物語の原点を読書の感想として振り返る事にしました。
※感想には、読んだ内容を食べ物として表現する手法をとっています。味読という言葉の意味とは本当のところは違っているのですが、分かりやすさから味読感想というタグを付けました。味覚や食べ物の表現の大元は、文学少女シリーズの天野遠子さんから着想を得ています。


絵本:田島征三・村田清司のもりへさがしに
『キャンプに行った森の空気』


今もしょっちゅう行くわけでないのだけれど、森にキャンプに行ってた時期がありました。
キャンプというのは特別なイベントです。森は自分にとって特別な日に会える友達のような存在で、その森が与えてくれる匂いとか空気そのものが、私にとってご馳走になるのでした。

いきなり食べ物でなくてごめんなさい。
でもこのお話はそれだけ、生きていくのに必要な空気とか居場所と言ってもいいくらい、私にとって大事なものでいてくれます。

この絵本に出会ったのは10歳くらいの頃ですが、それから20年経っても一年に一度は『もりへさがしに』の題名が頭によぎり、手に取るのです。
思えば、私は絵を描いた村田清司さんと、お友達になりたかった。お手紙を差し上げればよかった。今更ですがここで味読する事が、お手紙を渡すような気持ちで書いています。

物語は、モクモク、パクンパクン、ピョンの3人がそれぞれの願いを叶えるため、深い森の中に入っていく。森の中の様々な生き物たちがカラフルなイラストで描かれており、優しいひとともうんざりするようなやつとも出会います。

化物がたくさんでてくる冒険譚というより、森の中で出会う嫌なヤツのしょーもない意地悪が、妙にユーモラスで人間くさい。
元々清司さんが葉書などに一つ一つ描いていたイラストを、より多くの人に知ってもらいたいと田島征三さんによって再構成され、一冊の絵本となりました。
清司さんと田島先生の交流があり、お互いを知っているからこそ生まれた物語です。

小さな生き物がいっぱいになって森を構成しているような、マクロとミクロが重なり合ったような世界のように感じていました。

その世界は、私がその頃見ていた世界と不思議と似ていました。それを共有できる友達は生憎身近にいませんでしたが、幸いなことに図書室の本棚の端っこにあった、もりへさがしにを見つける事ができました。
そして読み返す事で、その頃見ていた世界を思い出す事ができます。

決して村田さんの絵は真似できるものでなく、私にとって、一生かなわない方の一人です。
ですが、かなわないと思える人との出会いが、私の絵を描き続ける事のできる原動力をくれる。

これからも私は特別な時間にこの本を読み、絵から漂う豊かな森の空気をもらいに行くのでしょう。

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