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バドミントン部の顧問になった悩める先生へ

ある日,TwitterのDMにてこんなご相談を受けました.

「中学の部活の顧問なんですが、初心者がたくさん入ってきて、どう指導したら上手くなるか困ってます。初心者にはどんな手順で教えた方がいいですか?」

かねてより,このようなご相談は他の方からも多くいただいておりました.
また,部活動の現場ではバドミントンが専門ではない先生方の勉強の場や正しい知識を取り入れる先がほとんどない,とも.
YouTubeで断片的に情報は取り入れられても,どのように時間をマネジメントすればいいのか,メニューをどう作ればいいのか,果たして今やっていることはあっているのか,などもご相談いただいておりました.

これらは発信に力を入れる際に必ず組み込みたいと思っていた内容だったので,これから鋭意発信していこうと思います.

↑ぜひチャンネル登録をしてお待ちください!

初心者指導の要は「打ち続ける」こと

先のDMへの私の回答はこちら↓

はじめまして! ご連絡ありがとうございます。

中学生初心者の指導ですね。
まずは「打ち合う数」を確保することからかと思います!

コートの面数など環境がわからないのでなんとも言えないですが、初心者の段階だと圧倒的に“シャトルを打った数”がものを言います。
コート外でも、ネット越しでも構わないのですが、とにかく打ち合って見る数を積み上げる。

すると、その数を競い合ったり、「やっつけたい!」という気持ちになってくる生徒が出てくると思うので。
その段階になって初めて、振り方や持ち方、“強く打つために”のようなティーチングをしてあげるといいかと!

何はともあれ素振り、走り込み、などは必要性を感じてからで遅くはないと思うので…
まず「ラリーを続ける楽しさ」を生徒さんと話し合いながら試してみてください!

個体発生は系統発生を繰り返す|ヘッケルの反復説

バドミントン オンライン授業資料より

このスライドの要点は,「個人の成長」は「競技の歴史」を辿る,ということです.
つまり,バドミントンが近代のような形になる過程と,初心者が上達していく過程が同様になることを意味しています.

バドミントン競技はまず,①1人でどれだけ打ち上げ続けられるか(リフティング)という占い遊びから始まりました【第1段階-1】.
次に,②2人で打ち続ける数を記録するようになっていきます【第1段階-2】.
そうして,ただ続けるだけではつまらない!という声が出て,コートやネットの形を試行錯誤し,③相手をコートの前後に動かすようになりました【第2段階】.

ここから,2対2や3対3,4対4のような形式も工夫され,④力で押し切る【第3段階】,⑤高度な作戦的展開【第4段階】を経て,近代のスピード化した競技バドミントンに発展します【第5段階】.

地味なトレーニングからではなく「遊び」から

バドミントン オンライン授業資料より

私のバドミントン授業でも,最初は持ち方より,素振りより,フットワークより何より,「打ち続けてみよう!」から導入します.

私もそうでしたが,バドミントンをやってきた人がハマってしまう初心者指導の沼として,「フォームが大事」「足運びが何より重要」「走り込みをとりあえず…」という方針です.

結論から言うと,それらは全て後回しでOK

なぜなら,最初に色々ごちゃごちゃ言われたとしても,受け手側からしたら情報過多になるだけなんです.

なのでまずは「遊び」から.

ラケットに当たるだけで嬉しい,続くだけで楽しい時間を大切に

というのも,バドミントンを競技の現場でやってきた年数が長い人ほど忘れがちになるのがこの部分.
自身もつい忘れてしまっていたところ,ある時ハッとさせられたんです.

それは,私が障がい者スポーツ指導員の資格勉強と実習をしていた際のこと.
「バドミントン」を一緒にやりませんか?と誘われ,スポーツセンターに勤務されている指導員の方と同行した時のお話.

ついていくと,ラケットを握るために指導員の方が手とラケットを固定するようにして,構えている車いすユーザーの方がこちらを向いていました.

『シャトルをラケットの面に向かって投げてみてください』

言われるままにシャトルを投げると,シャトルは構えたラケットの面に当たってポトリ.
もっと強く投げた方がいいのかな?と投げ方を工夫しようと思いながら見た,その表情は忘れません.

満面の笑みでこちらを向いて,もう一回!というジェスチャー.

競い合うことだけがスポーツじゃない.
スポーツの一部を切り取った,1つの「打つ」という動作がこんなにも心身に与える影響は大きいのだと感じた瞬間でした.

まさに初心者の段階は,この当たって嬉しい,から始まります.
これまでにラケット系のスポーツをやったことがない人からしたら,得物を使って何かを当てる,ということ自体が未知の体験です.

まずはそこから.
そして,「続ける」段階へ.

ある競技水準までは「続ける」ことが勝ち負けよりも楽しさを生む

バドミントン オンライン授業資料より

ある研究では,ラリー回数と楽しさ,勝敗について検討しており,「ラリーが続くほど楽しさを生む」ことが勝敗関係なく認められる,という結果が示されています.

実際,体育授業現場でこれまでスポーツに触れてこなかった学生と過ごしていると,これらがとてもよくわかります.

そのため,我々教員は授業の中でどの競技レベルの集団向けに指導をしているのか,個々人でどのように感じているのかを敏感に感じる必要があるのだと思っています.

それこそが,「綺麗なフォームを教えなくては…」「握り方ってこれであっているのだろうか…」という悩みよりもまず考えるべきことなのではないかなと感じています.

この記事が,悩める先生方の最初の一歩を少しでも後押しできたのなら幸いです.
それでは,また.

藁科侑希(わらしなゆうき)
https://twitter.com/warawarac


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