【発達障害】大人の知能検査「WAIS-Ⅲ」の見方について(自分用メモ)

知能検査について


■知能検査とは

主に物事の理解、知識、課題を解決する力といった、認知能力を測定するための心理検査の一つです。
認知発達の水準を評価し、その人の得意分野、不得意分野を分析することで、発達支援や学習指導の方向性を検討するなどの目的で利用されます。

知能検査においてはIQ(知能指数)の値を指標とすることが多くあります。IQはInteligence quotientの略で、知能のレベルを評価するための標準化された尺度です。検査は、精神年齢、IQ(知能指数)、知能偏差値などによって測定されます。IQの値の範囲は測定の手段によって異なりますが、一般的に平均値を100として比較可能な分類がされます。

https://h-navi.jp/column/article/35025608

■IQの値による分類

『発達障害事典』(2011年・明石書店刊)によると、IQの値による分類は以下のようになります。
・130以上:極めて優秀
・120-129:優秀
・110-119:平均の上
・90-109:平均
・80-89:平均の下
・70-79:境界線級/ボーダーライン
・70未満:知的障害
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4750333271

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一方で、知能についての考え方や測定の方法には、統一的なものがありません。つまり、検査ごとに、認知や知能についての考え方の違いがあり、検査の内容、IQの算出方法などが違っています。
そのため、それぞれの知能検査が、何を目的としてどのような指標で知能を測定しているのかを理解したうえで、検査結果を参考にすることが大切です。
知能検査の目的と適用|国立特別支援教育総合研究所http://forum.nise.go.jp/soudan-db/htdocs/index.php?key=muy7v5g0c-477

https://h-navi.jp/column/article/35025608

知能検査の種類について


知能検査には、言語を用いる検査「A式」と、言語ではなく数字や図形などを用いる検査「B式」があります。「A式」と「B式」どちらも取り入れた検査「AB式」もあります。

最近では、「ウェクスラー式知能検査」、「田中ビネー知能検査」、「KABC心理・教育アセスメントバッテリー」が比較的よく使われています。どの知能検査を扱うかは、専門家(医師、臨床心理士など)が判断することが多いです。
(検査例)
ウェクスラー式知能検査
田中ビネー知能検査
KABC心理・教育アセスメントバッテリー
DN-CAS 認知評価システム
レーヴン色彩マトリックス検査

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WAIS(ウェイス)について


■WAIS-IV知能検査とは

ウェクスラー式知能検査の1つです。ウェクスラー式知能検査は70年以上の歴史を持つ検査で、現在、全体的な知的能力や記憶・処理に関する能力を測るテストとして世界各国で使用されています。

https://litalico-c.jp/magazines/37

■ウェクスラー式とは

年齢に応じて種類が異なり、
幼児用のWPPSI
児童用のWISC
成人用のWAIS
の3つが使い分けられています。

https://litalico-c.jp/magazines/37

・児童版のWISC
(Wechsler Intelligence Scale for Children、通称ウィスク)
・成人用のWAIS
(Wechsler Adult Intelligence Scale、通称ウェイス)

・幼児用のWPPSI
(Wechsler Preschool and Primary Scale of Intelligence、通称ウィプシ)

https://h-navi.jp/column/article/35025608

WAISは、16歳から90歳11ヶ月までの成人を対象とする知能検査です。現在使用されているWAIS-IVは、WAIS-IIIを改訂したものであり、その検査内容の一部が引き継がれています。

なおWISC-IVの結果は、得意不得意を把握する上で有用な手段となりますが、その結果だけで発達障害の診断を確定するものではありません。

https://litalico-c.jp/magazines/37

■WAIS-III成人知能検査とは
16歳〜89歳までの成人の知能を測定する個別式知能検査です。
3つのIQ(言語性IQ、動作性IQ、全検査IQ)と
4つの群指数(言語理解、知覚統合、作動記憶、処理速度)を算出します。
■実施時間
60分 ~ 95分
■発行年
2006年(2018年WAIS-IV発行)

https://www.nichibun.co.jp/seek/kensa/wais3.html

ウェクスラー式の特徴


ウェクスラー式知能検査は、 児童期から成人期まで測定可能な尺度として、人間の知的発達面の理解やその経年的構造の変化をとらえようとしたという点が大きな特徴です。その後の研究によって、2つの区分は4つの指標得点へと洗練されました。(後述)

また、 障害によって結果に一定の傾向がみられることも特徴のひとつとして挙げられます。たとえば、知的障害の場合、各評価点にそれほど差がみられず全般的に低くフラットに近いという特徴があります。よって、ウェクスラー式知能検査の結果は、知的障害や発達障害の診断材料のひとつとして用いられることがあります。(※ただし、知能検査のみで診断が下りることはありません

https://h-navi.jp/column/article/725

ウェクスラー式知能検査では、精神年齢は算出されません。また比例IQではなく、偏差IQが算出されます。また複数のテスト(下位検査)の結果を総合した全検査IQの他に、知的機能の領域ごとの指標が算出できます。例えばWISCであれば、言語理解指標、知覚推理指標、ワーキングメモリ指標、処理速度指標が算出されます。IQも各指標も平均が100となるように作られているため、比較することができ、得意、不得意の判断に使うことができます。

https://h-navi.jp/column/article/35025608

検査をする意味・目的


そもそも、何のために知能検査を実施するのか
お子さんの知的発達水準が同年齢の子どもたちと比べてどうなのか(個人間差)ということで知能検査を実施することがあります。(例 :小学校入学を控えた就学相談のタイミングに合わせてなど)ただ、同年齢との比較のみが知能検査のできることではありません。

むしろ、お子さんの知的発達の得意不得意を知る(個人内差を知る)ために実施されることが多くあります。
特に、苦手なところ(得点の低いところ)が学校や家庭などで見られるつまずき(問題、主訴)の原因である可能性が考えられます。そうしたつまずきの原因とその対応を知ることが重要な目的となります。

そして、得意な分野がどのくらい得意で、苦手な分野がどのくらい苦手なのか。得意を活かして、苦手さをフォローするにはどうしたらよいか。得意を活かし、力がより発揮できる環境設定はどんなものか…など、学校や家庭での支援において手立ての精度を上げるために活用されます。
また、その結果、保護者がお子さんの得意不得意を理解することにつながり、お子さんの年齢が進めば、お子さん自身が自分の得意不得意を理解することにつながります。

https://h-navi.jp/column/article/725

検査内容


WAIS-IVは、
・10種類の基本下位検査
・5種類の補助下位検査(必要があれば行う検査)
で構成されています。検査を行うことで、5つの合成得点(全検査IQと4つの指標得点)を知ることができます。

https://litalico-c.jp/magazines/37

■検査詳細
14の下位検査から構成され、IQか、群指数か、その両方かなどの測定したい目的に応じて実施する下位検査を選択できます。
■検査構成
全検査IQ(FIQ)・言語性IQ(VIQ)・動作性IQ(PIQ)
の3つのIQに加え、
「言語理解(VC)」
「知覚統合(PO)」
「作動記憶(WM)」
「処理速度(PS)」
4つの群指数も測定できます。

https://www.nichibun.co.jp/seek/kensa/wais3.html

検査結果の見方


■全検査IQ(FSIQ)

全体的な認知能力を表す項目です。
補助検査を除いた10種類の基本下位検査の合計から算出されます。

https://litalico-c.jp/magazines/37

■言語性IQ

知識や言葉の理解から、耳で聴く情報を理解する等、言語にまつわる能力です。

https://shohgaisha.com/column/grown_up_detail?id=1113#:~:text=%E8%A8%80%E8%AA%9E%E6%80%A7IQ%E3%81%A8%E3%81%AF,%E3%81%A8%E9%81%8B%E5%8B%95%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E8%83%BD%E5%8A%9B%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82

言語性IQが高い人は、耳で聞いた情報を処理する能力が高かったり、言葉を使うこと(文章を書く、人前で説明するなど)が得意と言われています。

また、生育環境や学習環境などの後天的影響を受けやすい項目でもあります。受けた方はわかると思うのですが、「日常生活ではあまり聞いたことのない言葉」の意味を説明したりするテストを含みますので、当然学習機会の多かった人の方が点数が高く出やすいと思われます。

でもこれはただの勉強のテストではないので、「聞いたこと・見たことがあるものを知識として蓄えておけるか」「適切に自分の知識を組み合わせて、答えを作り出そうとできるか」という部分も含め、総合的に判断されていると考えてよいと思います。

https://www.yomocracy.com/entry/2017/08/10/180000%20
https://www.yomocracy.com/entry/2017/08/10/180000%20

■動作性IQ

目に見える情報をすぐに理解・記憶する、手や体を動かすことが得意等、感覚と運動に関する能力です。具体的には、パズルや間違い探し等の視覚的な認知が得意、非言語的サインを理解できる、手作業が素早く器用な人等は、動作性IQが高いとされます。

https://shohgaisha.com/column/grown_up_detail?id=1113#:~:text=%E8%A8%80%E8%AA%9E%E6%80%A7IQ%E3%81%A8%E3%81%AF,%E3%81%A8%E9%81%8B%E5%8B%95%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E8%83%BD%E5%8A%9B%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82

動作性IQが高い人は、視覚での情報処理が得意だったり、体を動かすのが得意と言われています。空間認知力が高く、感覚派、という部分もあるのかなと思います。

https://www.yomocracy.com/entry/2017/08/10/180000%20
https://www.yomocracy.com/entry/2017/08/10/180000%20


■4つの群指数

言語理解:言葉を用いて、物事の概念を理解し、表現する力
知覚推理:視覚情報を正確に捉え、理解し、表現する力
ワーキングメモリー:聴覚情報を短時間記憶し、操作する力
処理速度:視覚情報を正確に捉え、素早く処理する力

https://h-navi.jp/column/article/725

■言語理解指標(VCI)
言語による理解力・推理力・思考力に関する指標です。この力により私たちは言語によるコミュニケーションをとったり、そこから推論することができると考えられています。
基本下位検査項目:類似、単語、知識
補助下位検査項目:理解

https://litalico-c.jp/magazines/37

■言語理解指標(VCI)が低い場合
口頭での指示や説明が理解しづらかったり、言葉での説明や会話によるコミュニケーションに困難があることを示しています。
指示を口頭で聞くだけではなく、メモでわたしてもらうようにしたり、図解やイラストで説明してもらう等の工夫ができるとよいでしょう。

https://litalico-c.jp/magazines/103

知覚推理指標(PRI)
視覚的な情報を把握し推理する力
や、視覚的情報にあわせて体を動かす力に関する指標です。新しい情報に対する解決能力や対応力にも影響すると考えられています。
基本下位検査項目:積木模様、行列推理、パズル
補助下位検査項目:バランス(16歳~69歳のみ)、絵の完成

https://litalico-c.jp/magazines/37

■知覚推理指標(PRI)が低い場合
図や地図を理解することや、物事の見通しを立てることなどに困難があることを示しています。この場合、図や地図といった視覚的な説明ではなく言葉での説明をしてもらったり、活動の目的と工程を自分でリスト化したりすることが有効です。

https://litalico-c.jp/magazines/103

ワーキングメモリー指標(WMI)
一時的に情報を記憶しながら、処理する能力に関する指標
です。ワーキングメモリは口頭での指示理解や、読み書き算数といった学習能力、集中力に大きくかかわることが指摘されています。
基本下位検査項目:数唱、算数
補助下位検査項目:語音整列(16歳~69歳のみ)

https://litalico-c.jp/magazines/37

■ワーキングメモリの指標(WMI)が低い場合
ワーキングメモリは、頭のなかに情報を一時的に保持しながら、物事を処理する能力に関する指標です。対象に注意を向け続けることが難しかったり、耳から入る聴覚情報の処理に困難があるため、会話や指示の内容を覚えたりすることへの難しさがあることを示しています。電話をしながらメモを取るなどの行為が例として挙げられます。

さらにワーキングメモリは、読み書きや計算などの能力にも関連しているといわれています。時間を取ってメモをする、録音をとりながら話を聞くといった工夫をすることで困難を軽減できるかもしれません。また読み書き・計算の困難に対しても「文章の概要を図解化する」「電子機器を用いて計算を行う」といった工夫ができるでしょう。

https://litalico-c.jp/magazines/103

処理速度指標(PSI)
情報を処理するスピードに関する指標
です。マイペースで切り替えが苦手である場合なども、この指標得点が低くなることがあります。
基本下位検査項目:記号探し、符号
補助下位検査項目:絵の抹消(16歳~69歳のみ)

https://litalico-c.jp/magazines/37

■処理速度指標(PSI)が低い場合
視覚情報の素早い処理や、その情報に基づいた作業を時間内に終わらせることに困難があることを示しています。

作業をする際には、作業時間の調整や、こまめに休憩を取ったり、作業を区切ったりすることで集中力をあげるなどの仕事環境をつくる工夫が考えられるでしょう。

https://litalico-c.jp/magazines/103

それぞれの指標得点間に差がある場合は、持っている「強み」を利用して「弱み」補う方法を検討することも大切です。
例えば、知覚推理指標(PRI)が高く、言語理解指標(VCI)が低いという傾向がある場合、言葉による説明では理解しにくい可能性があります。なるべく、図解やイラストがついているものを利用して説明するなどの工夫をするとよいでしょう。

検査結果は、知的機能を調べるものであり、知能の遅れや偏りを検査するものとなります。そのため、検査結果だけで発達障害と診断が確定されることはありません。そのほか生活場面での困難を予想し、本人の生きやすさ、自己実現のサポートをするためにも活用されます。

https://litalico-c.jp/magazines/37

■検査結果を読み解く際の参考とした資料

http://www.edu.pref.kagoshima.jp/research/result/kiyou/nennjibetu/h14/h14-tokusi/pdf/6syo-3.pdf

ウェクスラー式知能検査の注意点


■詳しい検査の内容について

受検者が事前に知ってしまうと正しい結果が得られません。そのため、どんな検査をするのか、内容の詳細も公開されることはありません。これらのことから、一般の方がウェクスラー式知能検査を購入することはできず、検査を自分で行うことはできません。

https://h-navi.jp/column/article/725?page=2

■検査を行える人について

心理アセスメントに関する知識と経験を持つ専門家に限られています。WISC-Ⅳ、WAIS-Ⅳとも、関連分野の博士号や臨床心理士・特別支援教育士・学校心理士・臨床発達心理士の有資格者、医療関連国家資格所有者などの専門性の高い検査者が行うこととされています。

https://h-navi.jp/column/article/725?page=2

■同じ検査を受検する場合について

最低でも1年、できれば2~3年の間隔を空けることが好ましいとされています。なぜなら、同じ問題を繰り返し受けることにより、受検者が回答を覚えてしまい、正確な結果が出なくなる恐れがあるためです。
(そもそも知能は一生を通じて安定した数値を示すため、数値の変化をみるために何度も受検する意味はないとされています)

https://h-navi.jp/column/article/725?page=2

■ウェクスラー式知では測れない事について

検査は万能ではありません。
例えば、創造性(拡散的思考。※知能は収束的思考といわれます)や感情コントロールなどについては測ることができません。
発達性読み書き障害において、ウェクスラー式知能検査を実施しますが、読み書きの苦手の程度についてはウェクスラー式知能検査では測ることができません。(発達性読み書き障害に関しては、他の検査も実施してさまざまな角度からアセスメントを行います)

知能検査で測っている内容が何であるか、お子さんのつまずきに対して、知能検査でその原因や対応が検討できるかどうかは、検査者や専門家に確認しましょう。

https://h-navi.jp/column/article/725?page=2

今後の追加予定参考記事

IQ検査とワーキングメモリー


知能検査とは? 大人の知能検査 WAIS-Ⅳ を読み解く

発達障害の検査方法

https://www.stella-edu.com/column/%E7%99%BA%E9%81%94%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%81%AE%E6%A4%9C%E6%9F%BB%E6%96%B9%E6%B3%95/

記憶のデータベース「言語性知能」は今からでも伸ばせる! 音楽・読書・ルテイン摂取が有効なワケ。

高齢期における知能の加齢変化


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