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弥生時代に「水洗式トイレ」が! 古代ローマのトイレ事情 | プリニウスの追憶
なぜ、出てこない...。
イトヨー3Fの男子トイレの前で、ケツ筋(肛門付近)に力を入れながら、私は悶えていた。
かれこれ5分以上は待っている気がする。
あろうことか、このトイレは個室が1つしかない。「他のフロアに行けば?」と思うかもしれないが、他のフロアも全て埋まっていたのである。
いい加減、じわじわと額から汗が滲み始めてきた。
先ほどから何回かドアノブを捻って圧をかけてみたものの、中からの反応は無い。この国、いやこの“この世界”に来て約35年ほど経つが、こんなことは初めてだ。
ニッポンという国は、異常なほど清潔なトイレが街の至る所にある。
だのに...なぜ...。
絶対中でスマホいじってんだろ!!
直接ノックする勇気がなく、心の中でそう叫ぶと私は地団駄を踏んだ。もう、無理かも。大腸で生成されたあいつが、ディズニーランドの入場ゲートの前で開園を待つ愚民どものように今か今かと待ち構えている。ああ!
———その時である。
私はふと、ローマを思い出した。
首都ローマにも公共のトイレはあった。
帝政期にはおよそ100万人が暮らしていた首都ローマである(どこかの資料で読んだが、その場合1日で約4万トンもの排泄物が出るというではないか)。それら排泄物を野に放ったり、いちいち容器に入れて川まで運んでいたら、あっという間に伝染病が蔓延し、ローマは滅亡していただろう。
そのような住民の野糞対策として、ローマは公衆トイレを設置していた。 これは下水道が完備された紀元前315年(日本は弥生時代)から、ローマの数百ヶ所に設置されていたから今考えても驚異的だが、しかし驚くのはまだ早い。
それらの公衆トイレは、全て「水洗式」だったのである。
公衆トイレに入ると、穴の空いた大理石が室内(といっても個室ではなく、一度に数十人が入れるほどの広い空間だった)の壁際に設置されており、そこに座って用を足したのだ。
大理石の下には水がものすごい勢いで流れており、💩を落とした瞬間、下水道へと流れて行く仕組みになっているのである。
今思い出しても、当時にしては素晴らしい技術だったと思う。
ちなみに、その下水道はどこに向かっているかというと、テヴェレ川である。信じられないかもしれないが、そんな汚染されまくりリバーから汲んだ水を平気な顔して飲んでいる市民もいたのだ。無知とは、いやはや怖いものである。
さて、ローマの住宅にトイレがあったのだろうか。
トイレがなかったわけではないが、それは戸建て(ドムス)を持てるほどの富裕層に限り、一般市民が暮らしていたインスラという賃貸住宅にはトイレがなかった。それゆえ、排泄物やその他汚物を入れるための室内用便器(マテッラ)、尿便(スカピウム)は一般人にとって不可欠の家財道具であった。
では、それらの容器に溜まった糞尿たちはどうするかだが、インスラの階段室の下にそれらを溜める尿溜容器や汚水溜、もしくは地面に通じる穴があり、そこに捨てられていた。それらは定期的に回収され、例の如く汚染されまくりリバーへと流されたのだ。
当然、インスラの住民は窓から捨てることは禁じられていたが、“この世界”と同様、闇に紛れた違反は全く後を絶たず、酷い悪臭やその危険性からしばしば問題となった。
———お、そうこうしているうちに、水を流す音が聞こえてきた!
よし、ギリ間に合った!
すると、トイレの外から親子の会話が聞こえてきた。
「パパ、やばいもう漏れそう!」
「ここが空いてれば入れるから我慢して!!」
まさか、あいつらここに来るつもりなのか……(「 空いてれば入れる」って、当たり前だろ)。しかし、残念ながら君たちの前には私がいる。大プリニウスが大をするために立ち塞がっているのだ。なんてな。くくくく。息子が漏らした💩処理は、パパがやるんだぞ。大丈夫。下の階にはユニクロがあるから、パンツには困らない。
ガチャ。
ようやく、中からヘッドホンをした若造が出てきた。
ったく、長すぎだぞお前ぇ!
私は手洗い場に行くヘッドホン男の後頭部を睨みつけながら、舌打ちを連打した。
そして「ローマ人を舐めやがって」と吐き捨て、個室に足を踏み入れた。その時である。
「すみません!!息子が漏れそうで!!すみません!!!」
バタン! ガチャ。
“この世界”に来てから脱💩したのは2度目である。
私はその後、他の客や店員に白目を向けられながらユニクロでパンツを購入したわけだが、悔しさから思い切ってエアリズムボクサーブリーフを購入した。
そして今、その履き心地よさに感動している。
禍福は糾える縄の如し、である。
<プリニウスの追憶>、Xにて先行配信中☆
※noteに掲載後、Xでの投稿は削除いたします。
ローマ人の物語 ローマは一日にして成らず[上] 1 (新潮文庫)
— 笑得る古代ローマ (@waraerurome) June 19, 2024
言わずと知れた、古代ローマ通史の名著。
単行本で全15巻、文庫本で全43巻にも及ぶ大作である。
......よ、よよよよよ43!?
と、この第1巻を読み始めるまでに尻込みしてしまうほどの超大作だが、そんなに身構える必要はない。… pic.twitter.com/SEYZg60hm4
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