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東大VRサークル UT-virtualを営んだ話(3/3)

 こんにちは。まつさこです。

 先日東大VRサークルUT-virtualの代表を引退し、立ち上げから3年目までサークルを営んで感じたことの備忘録を書き連ねています。

1話目・2話目はこちら ↓ ↓ ↓

 さて、前回までは主に1年目の話を振り返りながら、僕が考えていたことを長々と書いてしまいました。今回はUT-virtual2年目の2018年と3年目の2019年のことをいっきに書こうと思います。

~2期生の加入~

 4月の新歓期は1年の中でも特に力を入れて取り組む時期です。VRサークルであるところのUT-virtualは1年を通して「VR技術の体験創造と普及啓蒙」のために活動しているわけですが、新歓の時期に特に意識していたことは、「新入生にVRを知ってもらうこと」です。
 2018年""も""VR元年と呼ばれることになるのですが、まだまだHMDによるVR体験をしたことがある人は多くはありませんでした。大学に晴れて合格し、ドキドキワクワクしながらサークルや部活の新歓テントを周回する新入生たちもまた、その例外ではありません。
 「百聞は一見に如かず」とはまさにこのことで、VR体験がいったいどんなものなのかは、とにかくHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を被ってみればわかります。UT-virtualでは毎年、半ば無理やり新入生にHMDを被ってもらい、VRコンテンツを体験してもらいます。
 4月に入部してくれた部員に後で聞くと、新歓期に体験したVRコンテンツのインパクトはやはり強いようで、VRを知ってもらい、入部を考えるきっかけとなる効果はあるようです。

 ただこの時、UT-virtualの部員が作ったオリジナル作品を体験してもらうことはほとんど出来ませんでした。部員が作った完成された作品自体が少なく、ストアにリリースされているコンテンツの方が満足度が高いだろうという判断からでした。「体験創造」を謳いながらもあまりオリジナル作品を例示できていない点には不安を覚えましたが、結果的に約60人もの新入生が加入してくれ、新歓は成功しました。


~部員教育の礎をつくる~

 たくさん入部してくれた2期生たちの大きな特徴は、そのほとんどが1年生で学年の足並みがそろっているということです。

 ここで、僕がサークル運営においてやるべきと感じていることを、一つ前の記事からもう一度振り返ります。

 ①数年後の先輩後輩の概念が存在するUT-virtualのあるべき姿を想像し、それに向けて体制を整えること。 
 ②誰よりも手を動かし、フットワークを軽くして来年以降の後輩たちに憧れられる先輩になること。
 ③理念であるところの「体験創造と普及啓蒙」に直接的には関係のない、組織の継続や雑務に関する運用は、""団体が若い現時点では""それに耐えうる少数精鋭で行うこと。
 ④門戸を大きく広げすぎず、ものづくりをするサークルであることをもう少し強めに推しだすこと。

 ①について、2期生以降、学年の足並みがそろい、先輩後輩といった関係が分かりやすくなる見通しが立ちました。一方でまだ運営を回せる能力があるのは立ち上げメンバーである0期生と1期生の一部なので、③のように少数精鋭でやらざるを得ません。しかし③については、前の記事でも触れましたが、サークルが3年目、4年目になれば少数精鋭である必要はなくなります。しかしそれは放っておいたら勝手に成立するわけではありません。やはり2期生が1年生であるうちから徐々に運営のノウハウを会得してもらい、少しずつ運営に首を突っ込んでもらうことが必要です。
 そして④についても、ものづくりサークルであることを「推しだす」にとどまらず、中身もちゃんとものづくりが出来るサークルであるために部員全体の技術力を底上げしなければいけません。
 そしてそれら「運営力」「技術力」の両方について、上級生が下級生にノウハウを伝え、毎年代が入れ替わる学生団体の中で美しい連鎖を描くように、このサークル2年目の今、土台をつくらなければいけません。土台をつくることが出来る環境は整っています。

 そこで導入してみたのが、「メンター制度」でした。


~メンター制度~

 UT-virtualで導入してみたメンター制度は、上級生一人に対して下級生が4~5人つき、それぞれのチームで課題設定や進捗報告をする、というものでした。このメンター制度のスタイルは、もともと僕が所属していた東京大学運動会躰道部でのメンター制度を参考にしたものでした。体育会系と文化系のサークルで果たして同じように機能するのかも分からなかったので、かなり挑戦的で実験的な取り組みでした。

 結果から言うと、「良くも悪くもある」といった感じでした。

 上級生のメンターに時間や能力的な余裕があり、与えられるものが下級生の期待とも一致していたチームはうまく動いていました。
 中規模のチームで下級生の要望を聞き、全員の期待に出来るだけ平等に応えるマネジメントに不慣れだったメンターのチームは、なかなかうまくいかなかったようです。この試験的なメンター制度自体が、メンターをお願いした上級生個々人のマネジメント能力に依存する部分はあったので、仕方ない結果ではありました。
 また、メンターとして下級生の希望をききながらともに学んでいくことに自身のメリットを感じられなかった場合も、なかなかモチベーションの維持は難しかったようです。

 今サークルのメンバーを見てみると、この時ある程度うごいていたチームに所属していた下級生の多くは現在も積極的にサークル活動に関わってくれているので、しっかりとメンタリングできればやり方としては悪くないのかなと思います。
 ちなみに2019年度も4月に新入生を迎えてメンターチームを複数つくり、メンター制度として回したのですが、この年もまたチームによって稼働率や満足度はまちまちでした。

 いずれにせよ、サークルに興味を持ち、何かを得られることを期待して入ってくれた新入生に何も与えず放っておくことは、部費を貰い時間を割いてもらっているサークルとしては無責任ですし、残念です。メンター制度はUT-virtualというサークルにはあまり合っていなかったのかもしれませんが、他の何かしらのカタチで、上級生も新入生も満足しつつ、運営力と技術力の連鎖を生み出せるやり方を模索してほしいなと思います。


~ちゃんと遊ぶ~

 2期生が加入してくれた2018年度、昨年と比較して意識したのは「もっとサークルで遊ぶ」ということでした。体験創造と普及啓蒙、と言ってゴリゴリそれだけを進めていくのははっきり言ってつまらない。大学生活の貴重な時間を費やしてサークルに参加してくれるのであれば、やはり親密度の高い友人を作りたいし、いろんな体験をしたいと思うのが自然です。
 そもそも「現実そのものではないが、効果としてそれと同等の体験・体験を与える」バーチャルリアリティの体験制作を志す人たちが、物理現実の体験の経験値に乏しいのはいささか残念です。
 2期生を迎え入れて、VR体験ができるVR ZONE SHINJUKUに遊びにいったり、ディズニーランドに行ったりと、部員同士の交流をメインとしていろいろな遊びを企画しました。毎年の夏合宿で部員の距離がグッと縮まるのも、とても良いなと思います。

 ちなみに、夏合宿で言うと個人的には今年2019年の夏合宿でのDJナイトが最高でした。夏合宿リーダーの子が企画し、自身でプロデュースしてくれたのですが、VRサークルのUT-virtualでこのような景色が見られるとは思っていませんでした...。「VRサークルってこうだろ」という周りの期待や固定概念に縛られず、これからものびのびと、色んな表現が許容される団体であって欲しいなと思います。


~3年目のUT-virtual~

 2018年の10月、初代代表から代表の立場を引継ぎ、2019年9月までの1年間、代表を務めることになりました。

 2018年度の後半は、個人作品展と後輩育成も兼ねたチーム開発の2企画にチャレンジした駒場祭、サークルの枠を超えて全国のxR技術に興味のある学生を集めて交流する「xR学生大忘年会」の主催、夏に加えて春の作品展「ば展」の主催など、積極的に新しい活動にチャレンジしていきました。

 また、2019年度4月の新歓では、昨年度の新歓の時の「UT-virtualの部員が制作したオリジナルコンテンツを例示できていない」という問題を解決するべく、サークル紹介とオリジナルVR体験を兼ねた「新歓VR」を作成しました。
 その際にサークル内デザインコンペと投票によって爆誕した、UT-virtualの公式キャラクターばーちゃりゅー、この子は今後どこかで姿を現すのでしょうか...?楽しみです。かわいい。

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 今年は3期生として、約70人もの新入生が加入してくれることとなりました。その時点では部員数が120人という巨大サークルとなります。

~部内運営の強さと対外活動の弱さ~

 1期生や2期生の絆も深まり、サークルでの活動にも慣れてきて運営にも積極的に参加してくれるようになりました。代表として後半期の2019年4月から10月は、僕は特に何もしていないように感じます。それまでに比べてだいぶタスクも分散できましたし、僕よりも優秀な下級生がたくさんいて意見を言ってくれたり、手を動かしてくれたおかげで、代表はサークル全体を見て指示出しをするだけでおよそ機能するようになっていました。

 春の展示会、五月祭、夏の展示会、駒場祭といった1年に4回ある作品展示会のサイクルも問題なく回せるようになり、運営面でも技術面でも徐々に、着実に団体として成長しているのを感じます。
 部内運営、展示会運営のノウハウは蓄積され、質も向上してきましたが、一方でお客さんにとっての満足度や、対外的な活動は依然弱いように感じます。

 展示会当日の会場演出が中途半端だったり、お客さんをほったらかして部員同士でおしゃべりをしてしまったり、外向きの意識に欠ける場面が多々あります。この点に関しては、内部運営の確立に一生懸命になるあまり僕も手が回らなかった部分なので反省しています。
 また、僕がいるうちには実現できなかったのですが、IVRCVR Creative Awardでの受賞、あるいはTokyo Game Show文化庁メディア芸術祭での出展など、学外のコンテストやイベントで認められることがあると、団体としてまた1ステップ上に行けるのかなと思ったりします。


~さいごに~

 立ち上げから運営に携わり、部員のみんなの協力はもちろんのこと、先生方や企業の方からの温かいご支援もあって、3年足らずでいいところまで行けたのではないかと思います。バーチャルリアリティという軸はありつつも、これからの部員の皆さんには自由に、過去に縛られることなくのびのびと活動してほしいなと思います。
 VRやARといった技術自体が発展途上で、これからこの世界でどういう変化をしていくのか分かりません。時代の変化に柔軟に対応しながら、ビジネスにもアカデミアにも出来ない自由な表現をしていって欲しいなと思います。そしてこれまでに引き続き、運営面でも技術面でもよりハイレベルに、そして外部から見ても魅力的で満足度の高い学生団体になれるよう、試行錯誤していってくれると本望です。

 執行代を引退した僕はというと、これから増えていくであろうUT-virtualの卒業生が集まり情報交換をし、現役生を適切にサポートできるようなOBOG会のようなものを整備しようと考えています。

 なんだかUT-virtualの後輩への私信のようになってしまいました。noteの場にはあまり適していないかもしれませんが、これから何かしら新しい学生団体をつくろうとしている方の目に留まり、「学生団体の立ち上げってこういう紆余曲折もあるんだなぁ」と参考になれば、幸いです。

 読んでいただきありがとうございました。

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