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東大VRサークル UT-virtualを営んだ話(1/3)

 こんにちは。まつさこです。

 先日、2019年10月4日をもって、東大VRサークルUT-virtualの代表を引退し、次の代表にタスキを渡しました。1年間(あるいはそれ以上)苦楽を共にしてきた副代表筆頭とした1期生以前(2017年度入部)のメンバーも執行メンバーから総引退し、現在2年生の代である2期生に完全に運営を引き渡しました。

 僕はサークルが発足した当初から立ち上げメンバーとして関わり、最初は副代表として、最近は代表としてサークルを見てきました。発足から約2年半、運営のコアなところに携わり、「サークルを0から育てた」と言いたくなるような感じです。
 幹部交代式ともいえる部内イベント「超総会」を終えて、「あ~終わった終わった。隠居じゃ隠居。」といった気持ちですが、一つの学生団体を0から作っていくにあたって苦労した点や良かった点、反省点などを僕の脳内のみにしまっておくのはもったいないなという思いもあります。
 自分が年老いた時にも、今のフレッシュな気持ちを思い出せるよう自分のための備忘録も兼ねて、サークル発足から今に至るまでのことをつらつらと書いていこうと思います。

~爆誕~

 2017年1月ごろ、あるVR/AR系のスタートアップでインターンをしていたのですが、その会社の社長さん(当時学生)から「東大にVRサークルを作りたいから一緒にやろう」と言われました。2017年当時"も"「VR元年」と言われ、世界や日本でVRビジネスが盛り上がってきていました。また僕自身もVR技術にかなり心酔していたため、VR技術に興味を持った学生が集まり、新しい価値を創造する団体の設立にはとても惹かれました。

 東京大学の稲見昌彦先生をはじめとして多くの大学の先生方、企業の方の後押しもあって、東大VRサークル UT-virtualが誕生しました。当時は急遽こしらえた感あふれるロゴのようなものを使っていましたね。

 顧問には東京大学の稲見昌彦先生がついてくださることになりました。そして廣瀬・谷川・鳴海研究室(当時)も協力研究室としてついてくださっています。
 稲見先生の発足祝福ツイートのリプ欄を見ると、降って湧いたように暦本研究室苗村研究室も協力研究室としてついてくださることになりました。そのときは先生方のフットワークの軽さに驚き、温かい応援のまなざしに感謝すると同時に何とも言えぬプレッシャーを感じたように思います。

 結局、東京大学の権威あるVR関連の研究室4つもの協力を得て、UT-virtualはスタートを切ることとなりました。

~人集め~

 団体発足の喜びも束の間、人を集めないことにはサークルとして意味を成しません。ありがたいことに、3月上旬にサークルの発足を発表して間もなく、多くの学生から連絡を貰いました。世間的にもVRという技術が注目されてきたのもあってか、感度の高い学生はこの時点でサークルの存在を察知し、コンタクトを取ってくれたのです。

 4月から本格的に大学での新歓活動が始まるのに先駆けて、約20人もの初期メンバーを集めることが出来ました。しかもインカレサークルを謳っていたので、この時点で色んな大学から集まってくれました。これに関しては、そこまで広報を頑張ったわけではなかったのでラッキーとしか言いようがありません。2017年時点でVRに興味を持つ、情報感度の高い学生の多くがTwitterに生息していたという事実と、友人への声掛けでたくさん集まってくれたことが要因として挙げられます。
 しかしこの時点で集まってくれたメンバーのほとんどは、間もなくしてサークルを去ってしまうこととなります。それについても後程。

 4月から本格的に始まる大学の新歓イベントに向けた準備は、僕がこれまで複数の部活やサークルで新歓活動を経験してきたことが功を奏しました。
 発足したてのサークルがハマりがちなのが、新歓や文化祭出展の際の申請忘れ(申請の存在を知らないこと)です。しかも申請の締め切りが結構早く2か月前とかなので、参加しようと意気込んで調べるともう締め切りを過ぎていた、なんてことがざらにあります。皆さんも気を付けましょう。

~さて何をする?~

 ところで、サークルの理念は「VRの体験創造と普及啓蒙」です。今までもずっとこの理念でやっていますし、発足当初の新歓活動でもこの理念をもとに新入生にサークルの説明をし、勧誘しました。とはいえ、新歓がひと段落していざサークル活動本格始動!となると、「『VRの体験創造と普及啓蒙』ってなんや...?」となるわけです。当時の代表や副代表には、サークルでやりたいことのアイデアはたくさんありました。しかし運営体制もままならず、日ごろの活動内容も明確になっていない状況では、目の前にある課題にひたすらに取り組むしかありませんでした。そしてその時の目の前にある課題というのが、5月に開催される東京大学の文化祭「五月祭」です。

 「大学サークルと言えば文化祭で出展する!」という安直な発想(実際、発想自体はそれで大正解なのですが)で企画出展の登録をします。しかし新歓が落ち着いた4月下旬には、もう五月祭本番まで約2週間!え!?
 
体験創造とか普及啓蒙とかいう四字熟語は頭の片隅に追いやられ、とにかく「良いスタートダッシュが切れるよう、何としてでも企画を成立させなければ!」となるわけです。

 実は2017年の五月祭はUT-virtualとしては2企画ありました。 Tokyo VR CafeVR足湯カフェ です。

 VR足湯カフェは、東大温泉サークルOKR(おける)さんとのコラボ企画で、実はUT-virtualが発足する前から僕個人がVRコンテンツの開発に携わる形で始まっていたもので、UT-virtualの発足に際してサークル同士のコラボ企画、という形にしてもらったものです。
 温泉サークルのおけるさん、かなりガチの温泉サークルで、この時のVR足湯カフェでは長野県の渋温泉という温泉の源泉を本郷キャンパスまで持ってきて、かけ流しの足湯を設置するというガチさです。その足湯が楽しめるテントに、今では懐かしいGearVRを天井から吊り下げ、お客さんには実際に足湯に使ってもらいながら、現地の温泉地の様子をVRで見てもらうという体験を作りました。実際に本物の足湯に浸かっているので、「VR足湯」とは言いながら「足湯」という行為そのものはバーチャルリアリティではないという矛盾には目をつぶってください。

 一方、TokyoVRCafeは、UT-virtual単独の教室企画です。これがまさに前述の「2週間で仕上げなければいけない」地獄の企画なのですが、4月の新歓期を経て集まった約60人ものメンバーの頑張りもあって、実に9つものVR体験を展示することが出来ました。大学の文化祭には中高生や家族連れなど広い層の方が訪れます。体験してくれた多くのお客さんが「VRははじめて」という方でした。当日いくつかトラブルはあったものの、結果的に「VRの体験創造と普及啓蒙」が果たせました。

 このはじめての文化祭を経て特に感じたことや反省点をあげると以下のようになります。

 〇気付いたこと
  ・お客さんの多くが「はじめてのVR」であったこと。UT-virtualで体験したことがその人にとっての「VRのイメージ」になるということ。
  ・VRは注目度が高い。事前の広報もままならず、当日もかなり奥まったところに教室があったのだが、多くのお客さんが来てくれた。
  ・↑注目度が高いというよりは正確には「1回限りの体験としてのニーズは多い」。また、東大のサークルということもあり技術的に期待してくるお客さんも多い。
  ・一般の方はHTC VIVEやOculusRiftといったヘッドマウントディスプレイが市販されていることを知らないため、体験した技術がすべてサークルで開発されたものだと思いがち。
 〇良かった点
  ・とにかく作り切って当日展示できたこと。細かい機材トラブルはあれど、企画として動くものに出来たのはとても大きい。
 〇反省点
  ・計画性のなさから、とにかく準備期間が短かった。
  ・準備期間の短さゆえに、部員も楽しく体験制作できないことがあった。テストやクオリティチェックが不完全のまま当日を迎える体験があった。

 また、サークルの理念である「体験創造」と「普及啓蒙」について深く考えることが出来なかったのも反省点の一つです。準備期間の短さや、そもそも部員のVR技術に関するリテラシーも全体的に低かったこともあって、「バーチャルリアリティ体験とは何か」「作ろうとしている体験のエッセンスはなにか」「一般に普及啓蒙すべき『VR』とは何か」ということが考えられませんでした。
 VRについてのよくある議論として「VR=HMD(ヘッドマウントディスプレイ)ではない」というものがあります。一般的に「VR」「バーチャルリアリティ」というと「頭にかぶって仮想世界に入れるゴーグル的なアレ」というイメージです。しかし本来バーチャルリアリティとは「物理的には原物ではないけれど、感覚的には原物と同じ体験を作り出す技術」のことです。いわゆるVRゴーグルは、あくまでこの感覚再現の一つの手段に過ぎないのですが、没入度が高く使い勝手もいいため一般に「VR」を代表するものとして認識されています。
 バーチャルリアリティとは何かについて興味のある方は下の記事を読むとより詳しく分かると思います。この記事の筆者であるyunoLv3くんも立ち上げ当初からUT-virtualに関わってくれ、サークルの育成に大きく貢献してくれました。

 初めての文化祭である今回の五月祭で展示した作品のすべてが、HMD、いわゆるVRゴーグルを使用した体験でした。それがだめというわけでは決してありません。UnityUnrealEngine4といったゲームエンジンを使って比較的容易に体験をつくれますし、お客さんにも分かりやすく没入感・人工現実感を提示できます。それに、新しくできたVRサークルを知ってもらうには、皮肉にもHMDを使った体験の方が『映え』ますし分かりやすいです。そういった意味で、結果的には多くのお客さんに満足していただき、VRを、UT-virtualを知ってもらうきっかけになりました。しかし次からはしっかりとバーチャルリアリティの意味について部員全員で考え、体験創造につなげる必要があると感じました。

 大学サークルとはいえど、単なるお遊びにしたくはありません。盛り上がってきているVR/ARビジネス界にも影響を与えられるようなビッグな団体になるべきです。
 といっても僕がこういった考えに本格的に至ったのは2年目になってからですが...。最初はとにかく内部運営・人・活動においてサークルと言えるものになろうとすることで精一杯でした。ただおそらく「存在するだけの、お遊びのサークルにはしたくない」というのは最初からあって、東京大学の大きい文化系/技術系のサークルRoboTechAnotherVision東大CASTなどに追いつけ追い越せという意識は自分の中でありました。

~サークル1年目の運営の壁~

 さて、初めての文化祭を成功させ、少しずつサークル一体感が生まれてきました。サークル発足から人集めの新歓活動、間もなくして五月祭と急ピッチでものごとがすすんでいきましたが、ひと段落したところで考えなければいけないのは日々の活動についてです。日々の活動が少ないと部員は自然と離れてしまいますし、多すぎてもいけません。
 日々の活動をするにあたって、意気揚々と運営体制を固めようとするのですが、ここにサークル1年目の落とし穴がありました...。


 長くなったので続きは次の記事で書くことにします。記憶が曖昧なところもあるので、かつての部員や現役の部員で「いやそこ違うだろ」というのがあったら遠慮なく教えてください。
 読んでいただきありがとうございました。

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