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【ぶんぶくちゃいな】いつまで続ける? 中国の「コロナゼロ化」

9月23日、とうとう香港政府は26日から入境者に対するホテル隔離強制措置を取り消すと発表した。

香港では今年夏以降、入境者はワクチン接種有無を含めて全員が政府が定めた入境強制隔離用リストにあるホテルで3日間、外出禁止の「缶詰」滞在が義務付けられており、その後は自宅に戻って4日間観察期間という、いわゆる「3+4」と呼ばれる措置が続けられていた。この4日間の自宅観察中は外出は可能だがレストラン内で食事したり、一部指定された場に入ることはできない。それが今回の発表で26日以降は「0+3」、つまりホテルでの強制隔離が撤廃され、自宅観察3日間のみとなった。同時に香港行き飛行機の離陸前48時間以内のPCR陰性証明も廃止され、簡易抗原テストキットを使った陰性結果を提示すればよくなった。

とはいえ、自宅をもたない外国人は到着後もホテル滞在となるわけだが、外出はできるので一般的な観光やビジネス旅行にかなり近づいた…かつて最大3週間のホテル「缶詰」を体験した筆者からすれば、やっとここまできたかとなんともいえない感情が湧く。

今年に入って以来、香港では入境の拡大を求める声がビジネス界を中心に広がっていた。だが、昨年末に航空会社の乗務員が業界内ルールを破って自宅隔離期間中に外出したことから市内のオミクロン株感染が急拡大、2月から3月にかけて香港は大混乱に陥った。その期間だけで老人を中心に死者は1万人弱に達し、人口700万人あまりのうち、既感染者の数は400万人を超えたとも言われている。

6月末になって政府はそれまで居住者と長期滞在ビザ所有者のみに限っていた入境許可を、一般ビザ所有者にも拡大。しかし、1週間の強制ホテル隔離を義務付けていたため、ビジネスや観光の拡大にはつながらなかった。8月に前述の「3+4」に切り替えられると、すでに入境制限がほぼ撤廃されたヨーロッパやタイなどに旅行する市民が一部出たものの、海外からの観光客呼び込みにはまだまだ程遠く、業界の不満はくすぶり続けていた。

香港経済への打撃は大きく、ビジネス界の我慢もすでに最高レベルに達していた。だが、入境措置の完全撤廃を政府が躊躇していた最大の理由は、中国政府が「動態清零」、つまり「コロナゼロ化」政策を採り続けていることだった。

香港ではもともと昨年から、「まずは中国国内との往来開放を考慮すべき」という声が強くあった。2019年デモをきっかけに巻き起こった政治的シャッフルを経て、中国と繋がりの強い人たちの発言力が増したこと、そしてそんな親中派が「海外よりも中国との結びつき重視」の愛国的姿勢を示し、さらにそれを自身の利益に絡めて敢えて声高に叫んでみせたという背景がある。

香港政府高官が中国政府関係者と接触するたびにその解決の期待は高まったが、いつも尻窄みに終わっていた。大感染を引き起こしたばかりの香港からウイルスが持ち込まれることを中国側が強く警戒しており、ウンと頭をタテに振らなかったようだ。

そうするうちに、次第にタイやシンガポールなどアジア諸国が海外入境者に対する規制を緩和、世界的なポストコロナが進み始めた。もともと昨年末あたりからアメリカやヨーロッパでの規制緩和で海外慣れした香港人たちが敢えて香港に戻ってくるケースは増えていたが、それでも以前のように自由自在に海外旅行を楽しむというわけにはいかなかったし、海外客にとってはなおさらだった。

変化の大きなきっかけとなったと思われるのが、この9月に入って次々と続いたニュースである。

●特殊措置提案に「ノーサンキュー」

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