【ぶんぶくちゃいな】行き着く先は? 激震続くインターネット金融業界

12月21日追記)この記事の最初の項で触れた「アリペイアプリから財テクサービス消失」ですが、20日の時点でWeChatや京東など同様を展開していた他社アプリからも同様に財テクサービスのタグが消えているそうです。アントグループの上場中止から続くこの件、やはり市民生活を大きく変えていくことになりそうな出来事なので、今後要チェックです。

11月2日、香港上場まであと3日というところで突然上場中止を発表した、アリババ系列の金融サービス企業「マー蟻集団 Ant Group」(「マー」は「虫」に「馬」。以下、アントグループ)。

その直後には10月末に同グループの実質的経営者であるジャック・マー氏の発言が政府関係者を怒らせたという説が闊歩していたが、そんな簡単な話ではないということを「アントは巨象に踏み潰された?」でさまざまな報道から分析した。

そしてやはり、それが中国政府当局による「監管」(監督管理)という名の圧力だったことがここに来て、だんだん明らかになってきている。というのも、この12月に入って、「中国銀行保険監督管理委員会」(以下、「銀保監会」)主席、中国銀行元総裁、さらに財政部元副部長(副大臣に相当)などという、中国の金融管理トップ関係者がさまざまな場で異口同音にインターネット金融サービスに対する監督の強化とその必要性を強調するようになったからだ。

ジャック・マーの踏み込んだ、当局批判とも見られる発言は明らかに、一つの口実でしかなかった。それも、公的には誰も「口実」とは口にしない、人身御供のような口実。史上最大の資金調達が期待され、世界中が注目していたアントグループの上場にまったをかけるには、彼の発言は大変タイミングよく、また当局にとって都合のよいものだった。

しかし、なぜ当局が世界に激震を与えてすらアントグループの上場を阻止したのか、そしてそれは口実はともあれ当局の意図であることは誰の目にも明らかだし、その事自体が中国のイメージを損ねることにつながりかねないのに。この点は、ジャック・マー発言起因説が信じられているおかげであまり話題に上がらない。特に中国メディアはたとえ気づいていてもそこを深く掘り下げるにはさまざまな制約があるのはいわずもがなだ。

しかし、前述したように中国メディアを読み続けていれば、ここ2カ月の「監管」関係者の発言やそれらの分析記事からその理由もうっすらと見えてきた。わたしは中国金融のプロではないので、ここでは一般の方向けにニュースの定点観測から見えてきた点だけをまとめてご報告する。できれば、中国経済のプロに政策的な観点からもっと深く踏み込んで分析していただきたい。

●「アリペイ」アプリから消えた財テクサービス

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