【ぶんぶくちゃいな】春節終わって幕が開く

「ニュースクリップ」でも取り上げたが、2月11日の元宵節を前に、トランプ米大統領が8日、中国の習近平国家主席に春節の祝賀の言葉を書信で伝えた。この「遅い春」に中国政府は大喜び。早速スポークスマンが、「遅すぎるのでは?」という声に「考えすぎだ」とまで述べている。

中国にとって米国がどれほど大事な存在であるかはすでに「#159 アメリカ大統領選と民主主義のコスト」などでも述べてきた。が、春節の大晦日にそのアメリカから発表されるはずだったお祝いがここまで遅れた理由は諸説あるが、最も慌てたのが駐ワシントン中国大使館の関係者だったといわれる。そりゃそうだ、中国人にとって最も重要な春節に、また政治的な色が最も薄い伝統的祭日に、米国大統領が我関せずと知らんぷりを決め込まれるとはさすがに予想していなかったはずだ。トランプの中国軽視が始まったのか…と、中国の外交関係者は戦々恐々とし、またメンツ丸つぶれとなった。

しかし、そろそろ「松の内」ももう終わるというところでやっと届いたお祝いに外交関係者たちはほっとした。それは、彼らが尽くせるだけの方法を尽くして手に入れた、努力の賜物だったことは間違いないだろう。なぜトランプ大統領がこの慣例を破ったのかも知りたいところだが、少なくとも大統領自身が元宵節前になってその理由を撤回し、このような形でその補填をすると想定していたとは思えない。

それを実現させるに至ったこの2週間に一体何があったのだろうか。そして中国支持のロビイストたちはトランプ大統領説得に、どんな交換条件を出したのか。

それがわかれば、これから本格化するトランプ政権下の中米の綱引きを予測できるはずだ。この春節のお祝いは実はその前哨戦だ、と中国政府は捉えている。

ただ、この後に更にビッグサプライズがあった。日本時間の2月10日に、習国家主席とトランプ大統領が電話で会談したとホワイトハウスが発表し、そこで「大統領は、習主席の求めに従って、『一つの中国』政策を尊重することに同意した」(「President Trump agreed, at the request of President.」、ホワイトハウスの公式発表より)と書かれていたからだ。

つい1ヵ月前には「なんらかの合意に達しないまま、中国に指図されるいわれはない」と、「一つの中国」政策を否定してみせたトランプ大統領のこの変わりようの裏には一体どんな出来事があったのか。ますます関心が集まっている。「何らかの合意に達しないまま」とまで言ったのだから、今回の手のひら返しにはきっと「何らかの合意に達した」と思うのは自然なことである。

●中国メディアは「手放しの喜び」よう

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