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#香港国家安全維持法

【ぶんぶくちゃいな】国家安全条例施行、国際金融都市・香港はいったいどこへ行く?

2024年3月23日、香港の憲法と呼ばれる「香港基本法」第23条に基づき制定された、「国家安全維持条例」(以下、国安条例)が施行された。

同23条の条文にはもともとこう書かれていた(翻訳は筆者)。

今回制定された国安条例とは、この条文で触れられている行為を禁止することを目的に制定された香港独自の法令で、2020年6月に中国人民代表大会で可決された「香港国家安全維持法」(以下、国家安全法)とは別

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【ぶんぶくちゃいな】「Hong Kong is over」がもたらした激震

「Hong Kong is over.」(香港は終わった)と書かれた記事が香港で大激論を巻き起こしている。

記事を書いたのはスティーブン・ローチ氏、元モルガン・スタンレーのアジア地区主席アナリストで、現在は米エール大学の教授を務めている。2007年から12年まで香港を拠点としてアジアの経済分析を担当し、中国に対してどちらかというと楽観的、好意的な論を展開する中国経済専門家としてその名前を知られて

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【ぶんぶくちゃいな】「メッシ欠場は海外組織の陰謀」論が傷つけた香港ビジネス環境

【ぶんぶくちゃいな】「メッシ欠場は海外組織の陰謀」論が傷つけた香港ビジネス環境

すでに日本のメディアも多く取り上げて報道しているが、2月4日に香港大球場で行われたサッカー親善試合の「インテル・マイアミCF(以下、「インテル・マイアミ」)対香港選抜チーム」が大変な騒ぎに発展している。

きっかけになったのは、今サッカー界で人気絶頂のリオネル・メッシ選手とルイス・スアレス選手がベンチに座ったまま出場しなかったことだ。試合は4対1でインテル・マイアミ側の勝利で終わったが、超人気選手

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【ぶんぶくちゃいな】香港区議会選挙の「制度完備」で見えてきた新「下剋上」

香港区議会選挙が今月10日に投票を終えた。

2019年末に行われた前回選挙では、同年6月以降続いた、アンチ政府デモの勢いに乗って民主派が新人候補も含めて全議席の8割を獲得したが、今回の選挙の目的はほぼ、そうした民主派の存在を公的機関から一掃することに置き換えられていることは、「【ぶんぶくちゃいな】仕組まれた権力の罠:『一国二制度』下の香港区議会選挙」ですでに述べたとおりだ。今回はその結果、見えて

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231222 【ダイヤモンド・オンライン】寄稿:誰が“民主の女神”周庭さんを「逃がした」のか?香港市民をかき乱す前代未聞の謎の数々

231222 【ダイヤモンド・オンライン】寄稿:誰が“民主の女神”周庭さんを「逃がした」のか?香港市民をかき乱す前代未聞の謎の数々

たぶん、これは日本では記事になっていないんじゃないかなぁ…、ということで書きました。

12月3日(日本時間では4日)、香港の「民主の女神」といわれた周庭(アグネス・チョウ)さんがインスタを約2年半ぶりに更新。「現在、カナダの大学院に留学中で、12月末には香港に一時帰国して警察に出頭する予定だったが、帰らないことに決めた。もう、たぶん帰ることはないだろう」と宣言して、大きな注目を浴びました。

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【ぶんぶくちゃいな】「黄色経済圏を潰せ!」:日本メディアが伝えきれない香港の現実

【ぶんぶくちゃいな】「黄色経済圏を潰せ!」:日本メディアが伝えきれない香港の現実

日本のメディア各社が6月30日に合わせて「香港で『国家安全維持法』(以下、国家安全法)が制定されてから3年、香港の今は?」という特集を終えたばかりの7月初め、主権返還から26周年を迎えた香港特別行政区政府(以下、香港政府)は次々と新たな動きに出た。

まず、香港警察国家安全処が7月3日に記者会見を開き、香港の永久居住権を持ち、現在は海外に居住する8人に対し、正式に裁判所の認可を経て国家安全法違反容

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230701 【Asia Frontline】出演:「国安法は香港をどう変えたか」

ジャーナリスト舛友雄大さんが案内役を務めるポッドキャスト「Asia Frontline」に出演して、わたしが香港や中国をどう伝えてきたか、そして特に香港の主権返還後、そして国家安全法制定後の様子をお話ししました。

収録は今年GW明けだったので、今年3月に香港を訪れた後の2ヶ月ほど前の見聞が中心です。今の香港を理解するための参考にしていただけるとありがたいです。

アップルポッドキャストやSpot

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【ぶんぶくちゃいな】中国戦狼「内」政

【ぶんぶくちゃいな】中国戦狼「内」政

「中国人なのになんで中国語で歌わないの?」

1998年に香港のアンダーグラウンドロックバンドが北京のライブバーで演奏したときのことだった。満場の観客の中には当地の著名ロックスターたちの顔もあった。かぶりつきで真剣な目を注ぐ彼らを前にライブを終え、汗だくになっていたメンバーを興奮した面持ちの観客たちが取り囲み、満面の笑みで「良かった」「良かった」と握手を求めた後、口々に早口の北京語でそう捲し立てた

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【ぶんぶくちゃいな】「圧力」が渦巻く香港、封じられた政治風刺漫画

【ぶんぶくちゃいな】「圧力」が渦巻く香港、封じられた政治風刺漫画

いつの頃からだろう、中国で一旦公開された記事などがある日突然目の前から消え去った時、関係者が「以衆所知道的理由…」(周知の理由により…)とか「由于不能抗拒的情況…」(抗しがたい事情のため…)などという、隠微な言い訳を堂々と使うようになったのは。あるいはもっと口語的に「ニィドン的」(「ニィ」は「人」偏に「尓」、「ドン」はりっしん偏に「董」/「分かるよね」という意味)という言い方が一般的になったのは。

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230301 【ダイヤモンド・オンライン】寄稿:“検閲”強化でも「香港映画」が復活したのはなぜ? 大ヒット&話題作続々

230301 【ダイヤモンド・オンライン】寄稿:“検閲”強化でも「香港映画」が復活したのはなぜ? 大ヒット&話題作続々

「香港映画」といわれたら、みなさんはどんな映画を想像するでしょうか?
ジャッキー・チェン? ドタバタコメディ? それとも香港ノワール? ウォン・カーワイ映画?

かつては「アジアのハリウッド」と呼ばれ、なんでもござれだった香港映画界から、以前ほどの話題作が出なくなってすでに10年以上。特に2019年のデモ後に制定された「香港国家安全維持法」(以下、国家安全法)は、想像や創作の世界にも大きな不安を

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【ぶんぶくちゃいな】すり替えられる「一国二制度」、香港メディア王の運命は…?

2022年12月30日、北京で開かれていた全国人民代表大会常務委員会会議で、香港の李家超・行政長官から要請が出ていた、「香港国家安全維持法」(以下、国家安全法)の法解釈が行われた。

法解釈とは、文章で書かれた法律を、現実の施行における具体的案件においてその条文の意味をいかに判断すべきべきかを明確化する作業のこと。国家安全法は香港で施行されている法律だが、制定したのは中国の最高議決機関である全国人

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221228 【ダイヤモンド・オンライン】寄稿:香港の親中派が越えられない中国との「壁」、政府と足並みが揃わない理由

今年最後の寄稿となります。

「香港国家安全維持法」(以下、国家安全法)の施行以降、親中派が我が世の春を謳っている香港ですが、ときどき親中派も中国政府、ひいては中国共産党のことをよく分かっていないなぁ…と思わされる場面に出くわします。

というのも、香港で育った香港人の「にわか」親中派は結局、自分が中国政府に近い(たとえば出身業界と中国との関係やビジネス往来)ため、さらに中国政府に従順になっていれ

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【ぶんぶくちゃいな】「メディア王を討て!」、司法で負けて中国政府頼みする香港政府

李家超・香港特別行政区行政長官が「世界金融サミット」で世界から集まった金融業界のトップエリートたちを前に、「最悪の時期は過ぎ去った」として「ホンコン・イズ・バック」を宣言してからちょうど1カ月。

エリートたちはこぞってそのまま次のサミット会議が開かれたシンガポールに移動し、李行政長官以下香港政府高官は続いて開かれた香港ラグビーセブンズ大会の観客席でマスクをはずし、ビールを片手に外国人観客と肩を組

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221201 【現代ビジネス】寄稿:「ホンコン・イズ・バック」? 国際的な舞台に帰ってきた香港が「すっかり変わってしまった」理由

先月、日本でもあちこちで報道された、韓国で開かれたラグビーセブンズ大会での香港「国歌間違い」事件、その後の経過と、そこに現れる「いまどきの香港(政府)」についてまとめてみました。この事件をきっかけにして、「荒れ狂う親中派」と中国にべったりな香港政府の態度が、これほどまでに顕著に現れようとは…

「ホンコン・イズ・バック」っていったいどこのオハナシよ、という気もしています。詳しくはこちらでどうぞ。