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2024年から発行される新紙幣に隠された意味とは?

お金(通貨)の発行権は経済を制御し、管理するための必需品です。だからこそ為政者が通貨発行権を持ち、金利や通貨流通量を調整して、信用を維持しつつ経済の安定的な成長を目指すわけですが、ひとたび通貨発行権を失うと、自国の経済を制御できなくなるだけでなく、外国の通貨や金融機関に依存することになり、国家の主権が弱まる可能性があります。

つまり、経済から国が崩壊することも十分あり得ます。刑法第242条にはこう規定されています。「国の貨幣を偽造した者は、死刑又は無期若しくは3年以上の懲役に処する」。どういう事かというと、貨幣を偽造したら死刑にする可能性もあるよと言っているのです。通貨発行権というのはそれぐらい重いものなのです。

だからこそマイクロ文字や深凹版印刷、ホログラムなどの技術を結集させて、偽造が困難なお札を作っているわけですが、2024年上期からは新たな紙幣が発行されます。お札の傾きによって顔の向きも変わる3Dホログラムなどが盛り込まれた新しいお札です。紙幣のデザイン変更は2004年以来と20年振りで、もちろんお札に描かれる人物(肖像画)も変更されます。

さてここからが本題ですが、今日はお札に描かれている人物の変化を追いながら、そこに隠された意味について考察していこうと思います。

まずは一万円札です。一万円札が登場したのは1958年で最初は「聖徳太子」が描かれていました。その後の1984年には馴染みが深い「福沢諭吉」に変更されます。そして来年(2024年)の変更では「渋沢栄一」になります。

次は五千円札です。五千円札が登場したのは1957年と一万円札が登場する1年前です。こちらも最初は「聖徳太子」が描かれていました。そして1984年には「新渡戸稲造」になり、2004年には「樋口一葉」に変更されます。そして来年の変更では「津田梅子」になる予定です。

五千円ときたら、次は二千円札です。発行されたのは2000年と最近のことで、これは沖縄サミットという主要国首脳会議を記念して発行されました。そしてデザインは1種類だけで、流通量もかなり少ないです。実際あまり見かけませんよね。二千円札に関しては人物が描かれておらず、また来年のデザイン変更でも対象には入っていないので、今回の考察対象からは外しておきます。

次は一番お世話になっている千円札です。発行されたのは1942年で最初は「日本武尊(ヤマトタケルノミコト)」が描かれていました。1949年には一万円札、五千円札と同じく「聖徳太子」になり、1963年には「伊藤博文」に変更されました。また、1984年のデザイン変更の際には「夏目漱石」になり、2004年には現在の「野口英世」になっています。そして来年には「北里柴三郎」になる予定です。

ここで終わりでもいいですが、一応、五百円札も見ておきましょう。500円札は1951年に発行され、人物は「岩倉具視」が描かれていました。そしてデザイン変更の際にも岩倉具視が描かれている点は変わらず、1994年には五百円札の発行が停止されました。

今回の考察では年代を区切って比較していこうと思います。具体的には「1984年以前」、「1984年〜2023年」そして「来年(2024年)以降」です。これらを順に前期、中期、後期と呼ぶことにします。

まず前期の人物を並べてみると、聖徳太子(皇族・政治家)、ヤマトタケルノミコト(皇族)、伊藤博文(政治家)、岩倉具視(公家・政治家)となります。

次に中期の人物を並べてみると、福沢諭吉(思想家・教育者)、新渡戸稲造(思想家・教育者)、樋口一葉(小説家)、夏目漱石(小説家)、野口英世(医師・微生物学者)となります。

最後に後期の人物ですが、渋沢栄一(実業家)、津田梅子(教育者)、北里柴三郎(微生物学者・教育者)となります。

これを見てわかるように前期は皇族や政治家などの為政者が占めていますが、中期になると教育人や文化人、学者が台頭してきています。なぜこのような変化が起きたのかと言うと、おそらくアジアの国々を侵略していた日本にとって、グローバル化の時代に為政者の人物画を使い続けるのは都合が悪かったのではないでしょうか。例えば1988年にはソウルオリンピックが開催されましたが、おそらく多くの日本人が韓国へ行き、お金を両替したはずです。この時に韓国の人が初代韓国統監を務めた伊藤博文(が描かれた千円札)を見たらどう思うでしょうか?韓国を支配(統治)していた組織のトップが描かれていたら良い気はしませんよね。

後期は中期の流れを引き継いでいるように見えますが、その中でも異質なのが「渋沢栄一」です。渋沢栄一は第一国立銀行をはじめ約500もの企業に関わり、日本の経済発展に多大な貢献をした稀代の実業家です。経済に大きく関わった人物という点では「高橋是清」も五十円札に描かれたことがありますが、高橋是清は日本銀行総裁や総理大臣、大蔵大臣を歴任した人物で、どちらかというと為政者という色合いが強いように思います(ちなみに日銀総裁としてお札になったのは是清だけです)。

世界を見渡しても、為政者・文化人・学者・教育者以外でお札に描かれている人物はかなり少ないです。ぱっと思いつくのはイギリスのジェームズ・ワットくらいです。なぜ日本では新一万円札に「渋沢栄一」を採用したのでしょうか。渋沢栄一は一橋大学や日本女子大学校の設立にも関わっているので教育者としての業績が認められたという見方もできますが、私は日本で新しい産業を立ち上げていきたいという姿勢の現れだと考えています。

渋沢栄一は鉄道や建設、ホテル、紡績、郵船など様々な産業・企業の立ち上げに関わりました。これからの日本でも宇宙開発や観光、高齢化社会に対応した医療・介護などの分野では世界をリードするような産業・企業を育てていくことができるはずです。そして国としても新たな産業の立ち上げに力をいれ、経済を盛り返していくという覚悟が新一万円札の「渋沢栄一」に現れているのだと私は思います。

@わんこふの日記

昨日は日銀の「貨幣博物館」へ行きました。今回の記事を書こうと思ったのはそれがきっかけです。貨幣博物館では古代(7世紀ごろ)の富本銭から現代に至るまでの日本のお金の歴史が展示してあり、日本経済への理解が深まりました。やはり貨幣発行権は大切ですね。新紙幣や偽造防止技術の紹介も面白かったです。写真撮影が禁止なのは残念でしたが、入場は無料ですので興味があればぜひ。

夜は映画「マトリックス」を観ました。マトリックスを観るのは二度目ですが、何度観ても面白いです。最近はGPTに代表される大規模自然言語モデルが台頭してきて、少なくともテキストの領域では人との区別がなくなる日は近いと感じます。そうなるとエージェント・スミスが取りかわるように、LINEの相手がChatGPTに変わっても、大したことない会話なら分からないかもしれません。いずれ大半の人は働かなくてもよくなり(正確にはやることがなくなり)、マトリックスに支配される事を自ら選択するようになるのでしょうか、、、

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