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イベント中止、企画のストップ。こんなときPR・広報としてできること

コロナウイルスの影響で、イベントを中止したり、企画やプロジェクトをストップしたりする企業・団体が出ています。

ずっと準備をしてきたことの、やむを得ない中止……。悔しいし、やりきれないと思います。感情的な意味だけでなく、経済的にもダメージを被ってしまうかもしれません。本当に心苦しい決断をしなければならないことも。

これを外向きに発表していくPR・広報も、例のない対応に困っているかもしれません。大きな決断の場合、経営層が判断し見解を出すということもあり、PR・広報担当者だけの問題ではないですよね。

こんなとき、どう判断・対応・コミュニケーションをしていけばいいのか、自分なりに心構えやできることを書いてみたいと思います。

事態を重く受け止め、会社として最善の判断を

PR・広報には「共感タイプ」の人が多いので、けっこう辛くなってしまうこともあるかもしれません。

しかし、事態が事態なので、個人の感情は心を鬼にして捨て去り、会社としてどうすべきなのか……を一旦サイコパス化して考えるべきかもしれません。そして、その判断した事柄を、きちんと感情を取り戻した状態で発表していくことができると、PR・広報としては素晴らしいのだと思います。

最終的には経営判断になりますが、経営と広報を一緒に担っているような人がもしこれを読んでいたら、「中止だ!ストップだ!」とする前に、少しだけ考えてほしいこともあります。

【論理】経済的損失、数値的なダメージを考える
それを中止したり企画を止めたりすることで、一体いくらの損失が生まれてしまうのか。それで路頭に迷うような人はいないか。現実的に、事業を立て直していけるのか。気持ちが揺らいでいるとき、いつも助けてくれるのは「数字」です。

【感情】心を痛める関係者の気持ちも考える
このイベントが中止になったら、どれだけの人が悲しむか。この日のために何年も準備してきたあの人の気持ちはどうなってしまうのか。誰かの人生を狂わせてしまうようなことはないのか。あまりにも精神的ダメージが大きい場合、最悪の事態につながるリスクもゼロとはいえません。


こういった社会的クライシスのときに怖いのは、脅威そのものはもちろん、ゆるやかに襲ってくる経済打撃だったり、それにより追い詰められて起こる人々の精神的落ち込みです。東日本大震災のときには、「震災自殺」や「震災後鬱」などの二次被害も問題になりました。

政府が「中止・延期または規模の縮小」を要請している以上、強行突破というわけにはいかないと思います。とはいえ、場所や規模を変えてやるとか、無観客で行うとか、ライブ配信やVRを検討するとか、代替案はもしかしたらあるかもしれません。

とても難しい判断ですが、最善の選択肢は黒と白の中間、1〜99のグレーゾーンのどこかに落ちていることが多いです。世の中の論調は敏感に読み取り、事態はしっかり受け止めつつ、あらゆる人の置かれた状況や気持ちを想像することが大切です。

これを機に波に乗ろうとか考えるのは、絶対ダメ

死者が出ているような出来事です。

こんなときに「PRのチャンスなのでは!?」みたいに思ってしまうのは、世の中の流れに敏感なPR・広報ならなきにしもあらずですが、絶対ダメです。

PRパーソンに倫理観が求められる風潮は、年々高まっています。

どんな災害・事件・事故のときもそうですが、何よりも考えるべきは、被害者の気持ち。今回のことで「被害者」と呼べるのかはわかりませんが、実際に感染してしまっている人やその家族、それにより影響を受けている人たちがどう思うかを最優先すべきです。

それを第一に考えることが、結局はPR=Public Relationsとして正しい判断に導いてくれるはずです。

だけど、自分たちの事業を通して何かできないか?と考えることは、ちゃんと「PR発想」になる

波に乗ろうという発想はどうかと思うけど……。

自分たちの事業について、いろいろな角度からしっかり考えて、社会との接点を見つけ出していく発想力を試すチャンスでもあるのは事実です。

「チャンス」というとかなり語弊がありますが、「ユーザーや関係者にしっかり価値を提供できる機会」と捉えるのは、悪いことではないと思います。言葉選びの問題ですが。。

自分たちの事業を通して、社会のために何ができるのか?

この発想をした結果、生まれているプレスリリースもありました。(※独断で勝手に選んでいます)

» AIで国内外の新型コロナウイルス情報や企業動向をリアルタイムに収集。緊急情報サービスFASTALERTで「新型肺炎」特設ページを提供開始

たとえばこちらの報道ベンチャー企業は、SNSから災害、事故、事件などのリスク情報を収集して配信するSaaSを提供しており、その中に「コロナウイルス情報の特設ページ」を設けて話題になっていました。

» 就活マッチングサービス「ハントバンク」が新型コロナウイルスの感染拡大による就活・新卒採用への影響を懸念して期間限定で人事採用担当者も利用可能に

こちらの就活マッチングサービスは、元々「大学生 × 経営者」のみが使用できるサービスですが、「人事採用担当者」も利用できるように仕様を変更しました。サービスコンセプトから覆してしまっており、スタートアップだからできる英断だと思います。

» 新型コロナウイルス対策として、生徒が自宅で受講可能となるAI先生「atama+」のWeb版を開発、導入塾・予備校への臨時提供を開始

atama plusが提供する「atama+」は、通常は塾・予備校でのみ受講可能なAI先生のサービスですが、生徒が自宅でも受講可能となるWeb版を緊急開発して提供開始したそうです。

» ファイナンス領域でアーティスト支援をおこなうPayNOAHは、新型コロナウイルスによってイベントのキャンセルをするアーティストを無償サポート。

アーティストなどへの補助金前払いサービスを提供する株式会社ペイノアは、2020年2月15日以降のイベントがキャンセルになったアーティスト/イベンター/プロモーターなどに、金銭的なサポートを行う緊急支援をはじめました。前払いしてもらえることでアーティストの負担を減らし、イベント延期などの決断を支援する目的です。なんと、構想から24時間でリリースしたらしいですよ……。

他にも、リモートワーク/テレワーク関連のサービスを提供する企業の多くは、期間限定のサービス無料解放、プロプランへの追加料金なしでの移行など、簡単にできる仕組みで、多くの人の利用を促しています。

noteを運営するピースオブケイクさんも、いちはやくリモートワークのノウハウを共有するハッシュタグを提案したり、イベントのライブ配信を強化したりしていますよね。


社会起点で頭を捻って、リソースを素早く投下して、既にアウトプットしている企業さんがいくつか見つかりました。

こういうときに、企業としての態度、世の中への向き合い方がすごく現れると思います。ただただ決定事項だけをアナウンスするのもありですが(そうするしかない事情が至るところにあることは百も承知ですが)、「これはいい」と思わず感心してしまうような発表ができると、とてもいいですよね。


心から社会課題の解決を考えると、それが知らずのうちにPR発想になっているし、よいPRってそこからしか生まれないと思います。

そうして発表したことが、結果的に多くの人に拡散したり受け入れられたりするのは、むしろ社会にとってポジティブに影響します。「コロナに便乗してバズろう」とか汚いことを考えず、ピュアな気持ちで社会への貢献のしかたを考えることが、結果的にはもっとも理想的なリレーション構築に結びついていくはず。

事実の裏にある意図を伝えるコミュニケーション

イベント中止などの話に戻りまして、、

やるにしてもやらないにしても、事実を淡々と発表するよりも、「人間味のあるリアルなアナウンス」というのが、今は求められている気がします。

きっと苦渋の決断なはずです。めっちゃ悔しかったり、やりきれなかったりだと思います。その気持ちはストレートにぶつけても大丈夫です。次があるようなイベントの場合、未来に期待が持てるような文面になるといいですよね。

具体的な方法としては、公式アカウントなどを一次発表に使い、事実ベースの決定事項とそれに伴う公式に見解(お気持ち)を表明。それを個人のアカウントがシェアする形で、もっとエモーショナルなことや本心を、乗っけていくのがおすすめです。

もちろん規模や内容、イベントの対象者などにもよりますが。

今までにないことで、うちの会社はどうすべきか……と皆が迷っている状態です。前例も正解もありませんが、悲観的になりすぎず、「伝わるコミュニケーション」が増えたらいいなと思います。

どうか皆さんの決断が、だれかにとって致命的なものにならず、どんな形であれいつかどこかで報われますように。

おわり。


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