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揃わない前提の授業を見る・感じる・考える

前回、増版に次ぐ増販であった、授業づくりネットワークNo.47「揃わない前提の授業とクラス」。この本は、対面やオンラインを通して、多くの方と読書会をして、メンバーが変われば中心となる話題も変わり、それによって気付きや学びも変わる、そんな本だった。

そして、今回もとても楽しみにしていた続編、授業づくりネットワークNo.48「揃わない前提の授業を見る・感じる・考える」。前回のテーマを受けて、揃わない前提の授業を第三者が多種多様な方法で記録している。どれも読み応えのある重厚なものが10本。
記録以外にも、どの号でもこれだけでお金を払う価値が十分にあるんじゃないかと思える贅沢な巻頭鼎談、Part1では「揃わない前提の授業をどう見るか」という研究者の視点からの原稿。

SNSを見ている感じ、前号ほどの売れている勢いは無さそう。それは学期末の忙しさとか授業記録の身近さとか、やっぱり揃えないといけない学校文化への無力感とか、色々なものが入り混じっているのかもしれない。それでも、手に取って読む人が一人でも増えたらいいなと思う。

No.47のタイトルや内容にビビッと来た人は多かった。 No.48を読み、少しの時間でも自分の教室をいつもよりちょっと外側から見る、記録する。 そこから自分なりの「揃える揃えない、揃う揃わない」を考えてみる。揃わない前提を自分の頭で考えていく一歩目なんじゃないかなと思う。

私のいつかのツイート

この本を読む前の問題意識としては、「そこかしこで子どもたちがが思い思いに動いている状況を記録するなんて、どうやったらいいの?」というところが強かった。やっぱり、より良い記録の方法を求めてしまう自分がいる。

授業づくりネットワークらしい、ストップモーションによる記録方法もあれば、なるべくたくさん子どもや教室に起こった出来事を書く、1つのグループに着目しながら自身に起こった内省を含めて書く、初めて読む群像劇をモチーフとした授業記録、記録とインタビューを重ねながら教室について考える、などなど。。

分かってはいたけれど「この記録の方法が正解」なんてものはない。きっと今号で執筆された方々も「揃わない前提の授業って、どう記録したらいいのだろう」と問いをもったんじゃないだろうか。実際にそうした葛藤が書かれているものもある。

その中で、それぞれが教室を見た上で「この記録方法なら、教室や子どもたちの姿を最もありありと著せるんじゃないだろうか。」と個別暫定解を導き出されたのだろう。私もきっと、じゃあ誰かの教室を見たときに、そこで起こっている状況をどのように表すの?と突きつけられる経験が必要であるように感じる。

担任をしているときに、後ろから教室全体が映るようにずーっとビデオカメラを置いていたことをある。一斉授業を中心としていたときに、自身の発言の癖や指導行動を見直すのには、あの頃役立った気がしている。

でもきっと、揃わない前提の授業は、そのカメラには何も映らないんだろうな。
巻頭鼎談の中で、こんな言葉があった。

インプロにおいて記録を書くことは、かなり大事なことだと思っています。ただそれは、その記録を何のために使うかに関わっていると思っています。インプロの一番面白いけど難しいところは、今、演じた役、台詞、シーンは、もう二度とないということです。同じようにやってみてと言われても、何かは変わってしまうし、そういう刹那的な世界で成り立っているというのがインプロの特徴です。ですから、それが上手くいったから、それをもう1回やってと、あとで再現するために記録を取るのだとしたら、ほぼ意味がない。何のために記録を取るかというと、その先を考えるための手掛かりにするため。これが記録の意味かなと思っています。

P11 園部さんの言葉

授業も子どもたちの日々の生活も刹那的なものである。「子どもたちの世界」や「一人一人の物語」といった、同じ場面は二度と現れないものを何のために記録するのか、その意味をまずは考えたい。
くわえて、もし教師も「その先を考えるための手掛かりにするため」に記録をするのだとしたら、どんなふうに記録していくことが自分にはできそうなのか、その記録をどのように利用することで、その先を考えるための手掛かりにするのか。

前号No.47「揃わない前提の授業とクラス」の中では、その揃わない事実や実態、それでも揃えた方がよいと筆者が考えることが書かれていた。そして今号No.48「揃わない前提の授業を見る・感じる・考える」での記録も含めて、「揃わない前提の授業やクラス」について、十分に提案されたのではないだろうか。

今度は読み手である私たち一人一人が、自分自身の「揃わない前提の授業や学級」について、内省したり誰かと話し合ったりして、真剣に向き合う番なのだろう。


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