【洒落怖漢譯】廢墟(原題:廢墟)
譯文
故郷深山有廢醫院之墟,知之者多。吾朋所云:「十餘年前,欲與知己三人赴其墟。就車而走羊腸道數里,有隧道不可入車。乃下車,低頭徐行,至墟。入探於房,而無所得。四人皆出,方行隧道,其一人忽叫喚發狂,走去向墟。左右甚驚,追之不及。翌日,託其事於警察,搜索良久,見友之自縊」其墟猶存。如此者非人所知,有之數輩。
書き下し文と語彙解説
故郷の深山に廢醫院の墟有り、之を知る者多し。
○深山:奧深い山。 ○廢:打ち捨てられた。 ○醫院:[現代漢語]病院。 ○墟:建物などの荒廢した跡地。 ○多:この語は「多A(A多し)」と、存現文の形をなすことが多い。しかし存現文は不特定のものを賓語とする場合に用ゐられる。ここでは「廢醫院の墟を知るもの」といふ特定の者を賓語としたので、主謂短語の形を取つた。
吾が朋の云ふ所:「十餘年前、知己三人と其の墟に赴かんと欲す。車に就きて羊腸の道數里を走れば、隧道の車を入る可からざる有り。乃ち車を下りて、低頭徐行し、墟に至る。
○云:「曰」とは違ひ、傳聞または他者の引用として用ゐられることが多い。 ○知己:自分を知るもの、すなはち知人友人。 ○就車:「就」には(車に)乘るの意味がある。 ○羊腸:道などが曲がりくねつてゐる樣子。 ○隧道:トンネル。 ○乃:(車では通行できない事を受けて)そこで。 ○低頭:頭を低くする。 ○徐行:ゆつくりと歩く。
入りて房を探れども、得る所無し。四人皆出でて、方に隧道を行かんとするに、其の一人忽ち叫喚發狂して、走去して墟に向ふ。左右甚だ驚き、之を追へども及ばず。
○房:部屋。 ○方…:ちやうど…のとき。 ○其一人:その中の一人。 ○叫喚:大聲でわめく。 ○走去:走り去る。 ○左右:右と左。ここでは友人の周圍の者たちのこと。 ○不及:追ひ付けない。
翌日、警察に其の事を託して、搜索せしむること良久しくすれば、友の自ら縊るを見る」。其の墟猶ほ存す。此くの如き者は人の知る所に非ざれども、之れ有ること數輩。
○良久:しばらく。比較的長い時間。 ○縊:紐などで首を吊る。 ○猶:ここでは副詞として「今でもなほ・依然として」の意。 ○如此:このやうな。 ○輩:囘數の量詞。~囘・~度。
【短編】「洒落にならないほど怖い話」超こわいのだけ厳選…。より
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